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フローイ国・戦乱の予兆2

 誰かの気配に気づいて振り返ったリーミルは、フローイ国全土を挙げたお祭り騒ぎの主賓の姿を見つけた。グライスは衣装こそ花婿に相応しいきらびやかな衣装を身につけていたが、浮かべる表情は笑顔ではない。漂わせる雰囲気は生真面目で、まるで鎧を身につけ腰に剣を帯びているかのようだった。

「あら、花婿が美しい花嫁の側にいないでどうするの?」

 リーミルの優しく叱るような口調に、グライスは少し黙っていたが、やがて決意を口にした。

「姉上、私はアトラスを討たねばなりません」

「グライス、優しい弟」

 そう言ってリーミルは優しく弟の肩を抱いた。グライスはシリャードでの姉とアトラスのいきさつは聞き知っている。そして弟として、帰国してからの姉の様子を眺めれば、アトラスに対する好意ともつかぬ感情をにじませていた。ただ、自分はフローイ国の武将として、たとえ姉の思い人であろうと討たねばならないというのである。

 リーミルは壮麗な婚礼の席上で、祝福を受ける弟が何故か浮かぬ顔で、心に何かのわだかまりを持っている事に気づいては居たが、その理由を窺い知ることが出来なかった。結婚したばかりの新妻を残して戦に出ることかとも考えていたが、アトラスに思いを寄せる姉に対する思いやりだとは気づかなかったのである。

「いいわ。戦場では思う存分、暴れていらっしゃい。でも、今は花嫁に優しくしてあげて」


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