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ランロイのリーミル2

 リーミルはスクナの板に書かれた文字をじっと見つめていたかと思うと、意を決したように布で包み直して使いの者に返して言った。

王都カイーキには、私が用を済ましたら直ぐに帰ると伝えなさい。それほど時間はかからない」

 戦勝の報に沸き返る民衆たちの声を背景にして伝えたリーミルの声も大きく、ロユラスにも彼女の言葉が届いていた。足早に立ち去るリーミルは、自分の後をさりげないふりで追うロユラスには気づかなかった。

 リーミルが足を向けたのは、この旧都に存在する王ボルススの館である。王位に就けた息子が新都カイーキを建設したものの、海外の遠征で戦死し、ボルススは再び王の地位に戻った。カイーキの華美な雰囲気を批判したことのない男だが、この旧都の雰囲気を好むらしく、今でも何かと理由を付けてこの町の館に逗留する。

 そのため、この町にはカイーキに次ぐ兵の駐屯地だった。王の館を警護する兵士たちの数は多く、館に近づくにつれて兵の姿は街道をあふれかえるほどだったはずである。しかし今は館の警護に任ずる少数を除けば、兵の姿はほとんど見かけない。

 短期間で勝利をものにするために、王ボルススは一気に二千五百という大軍を率いて出陣し、更にその後も増援の兵を求めてきた。今のフローイ国に残るのは治安維持に任ずる兵力のみということである。


「あのアトラスが……。戦死なんて。なんて、間抜けな奴。なんて、愚か者。なんて、……」

 滑稽な呟きだった。その死を信じたくないというリーミルの思いが、彼女にアトラスに対するののしりの言葉をそっと呟かせたのである。その怒りは弟にも向いた。

「グライスの嘘つき。アトラスを討つ戦は、私に譲ると約束したはず」

 スクナの板には、ネルギエの戦いの顛末と、南から攻め上がってくるグラト国との戦場へ移動する事が伝えられていた。シュレーブ国北部のルージ国とヴェスター国との戦いは王リダルと王子アトラスの死で、勝利に近い形で終わりを迎えたが、未だ南の戦の決着はついていないのである。



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