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レニグにて:混乱の数日

 夕刻、サレノスは兵の様子を見て回らねばならないという理由で、王レイトスとの折衝はアトラスに任せて王宮を退去した。第一陣が奇襲を受けて王リダルの安否が不明という情報は郊外に陣を敷いた第二陣の兵たちにも伝わっているはずである。その兵士たちの動揺を鎮めなければならないのである。アトラスに付き従っていた近習たちも、普段は避けているサレノスに付き従って王宮から姿を消した。アトラスは見捨てられたような意識に苛まれながら、夜を過ごした。

(ザイラスが居てくれたら)

 アトラスは月を見上げて、この場にいない近習のことを思った。時に兄のような態度でアトラスに接する青年で、この場にいれば上手く取り繕ってくれただろうと思うのである。


 明くる日も事態は好転せず、王の安否も、シュレーブ軍が襲ってきた理由も何も分からないまま、苛立ちと不安の中に過ぎた。ただ、イドポワ街道の入り口に陣を敷いたバラスやアゴースも戦慣れした武人で、イドポワの隘路に、状況を探る少数の兵を残してきている。そんな兵が一人、二人と戻ってきて、都に情報をもたらした。

 イドポワ街道のシュレーブ国側の出口に陣を敷いていたというシュレーブ軍は既に去っていること。戦いがある直前、フローイ軍が街道を封鎖していて旅人や商人が通れなかったこと。イドポワ街道の出口付近にはおびただしい数の兵士が埋葬されていて、その数が数百を超える気配があること。何故か一頭の馬が丁寧に埋葬されていて、その墓に供えられた装具から王リダルの愛馬オスロケイアだと考えられること。イドポワの門の外にはルージ兵の死体が埋葬もされず放置されていたこと。そういう断片的な情報を整理すれば、第一陣の前衛が全滅に近い被害を被ったという状況が浮かび上がって来るのだが、王の安否は未だに分からず、ルージ軍将兵、とりわけ息子のアトラスの不安をかき立てた。

 とりわけ、近習たちはアトラスによそよそしく、アトラスは本音を吐露する相手も、心の不安を相談する相手もない孤独感が若いアトラスの苛立ちを深めた。

 なすことなく、不安と苛立ちのみ高まる日が数日続いたあと、ヴェスターの都レニグは意外な人物の来訪を受けることになった。使者はデルタスと名乗った。


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