表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/491

ルージ軍第二陣:ヴェスター上陸

 物語は一日さかのぼる。イドポワの門の戦いが始まろうとする頃、これから始まる戦に逸るアトラスは第二陣を率いてヴェスターの都レニグを目前に行軍していた。もちろん、間もなく始まるイドポワの門の戦いが、悲劇的な結果に終わったことをアトラスは知らない。

 その、アトラスの表情は険しい。第二陣というのも形ばかり、補給物資とその輸送や警備に当たる補助兵力が中心である。ヴェスターに上陸したアトラスは、その港町で第一陣の出発の話を聞いてやや安堵した。父リダル王はレニグで兵を休め、発ったのは三日前だったという。急げば、聖都シリャードに到着するまでに追いつけるだろう。

 アトラスに付き従うサレノスから見れば、王が意図するところは良く分かる。第一陣が携行している食料は二週間ばかりの分量に過ぎず、第二陣が運ぶ補給物資なしには長期間の戦いはできないのである。ただ、サレノスは別の言い方で、アトラスにそれを伝えた。

「お父上は、アトラス殿の到着を待っておいでだったのでしょう。アトラス殿を頼りにしておられるのです」

 サレノスの言葉にアトラスは即座に反論した。

「もし、我が王が私を頼りにしているというなら、なぜ私を第一陣に加えぬのだ」

「それは、蛮族タレヴォーどものことをお考え下さい。奴らが戦に逸って聖都シリャードを討って出れば直ぐに片がつきましょう。しかし、ずる賢い奴らのこと、聖都シリャードに立てこもり、援軍を呼ぶでしょう。そうすれば戦は長引きます。我らが運ぶ兵糧が、第一陣の戦を支えることになるのです。これこそ戦に勝る重要な任務」

「そんなことは臆病者に任せておけばよい。私は戦いたいのだ」

 出陣以来、アトラスはこのサレノスを警戒して本心を語ることが無く、老練なサレノスもアトラスの心を読み取れずにいた。

「隊列を見回る」

 アトラスは短くそう言って、愛馬アレスケイアの手綱を曳いて馬首を後方に向けて駆けだした。戦いたい。それが何のためかといえば、母のためである。自分が父の歓心を買い、自分を通じて、あの蛮族の女から、父の母に対する愛情を取り戻すのである。

 サレノスはため息をつくような思いでアトラスの背を振り返っていた。国の将来をあの若者に託して良いのかという疑問を打ち消したのかも知れない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ