前哨戦・アガルススの戦い3
シュレーブ軍の陣営では王ジソーが目の前の歯がゆい戦況に地団駄を踏んでいた。王の傍らに侍っていた大臣ルソノオが見かねて王に提案をした。
「我が王よ、ここは一度兵を下げてはいかが?」
「兵を引くだと?」
「あの通り。味方の兵は敵を恐れ、行く足を止めてしまいました。ここは一端兵を引き、隊列を整えて攻撃に転じるのが肝要かと」
「しかし、突撃を命じたものを」
「戦場の様相は生き物と同じ。変化する戦況の中で、兵を引き、被害を減らすのも指揮官として有能な資質でありましょう」
ルソノオはそう言ったものの、攻撃を中止させて兵を引くというという消極策に、王が乗り気ではないのを看取って、新たな提案を加えた。
「弓隊を繰り出してはいかがでしょう」
「弓隊だと?」
「左様です。将軍どもの混乱した兵は下げ。代わりに王の弓隊を繰り出すのです。我が王ご自慢のルムアヌ弓隊ならば、ルージどもの投石など蹴散らしてしまえましょう」
「その後、もう一度将軍どもの兵を突撃させればよいのだな」
その王の考えを讃えるようにルソノオは頷いた。
「ご明察です」
ルムアヌ弓隊。シュレーブ軍は伝説的な弓の名手の名を取って、そう呼んでいた。兵数は三百ほどだが、強弓を装備し、その射程は投石機と変わらない。そして、相手を狙って倒すことが難しい投石機と違って、敵を狙って射撃することが容易で、弓専門の兵士として訓練も積んでいる。ルージの奴らめが堅く守った陣に矢を打ち込めば、こちらの被害は少なく、大きな被害を与えることができるだろう。
「よし。将軍どもの兵を下げさせよ。我がルムアヌ弓隊を前面に押し出せいっ」
王の命令が下った。




