前哨戦・アガルススの戦い2
イドポワの門の前に陣取るルージ軍の陣営では、シュレーブ軍の事情など知るよしもない。しかし、アガルススは一斉に迫るシュレーブ軍を眺めて、兵士たちの動揺を抑えるように、持ち前の大声を張り上げて陽気に笑って見せた。
「はてさて、望みもせぬのに」
シュレーブ軍はそのもてる兵力を、ほぼ一斉に動かしたのである。敵のシュレーブ軍の本陣から見ればこれほど壮観な光景はない。本陣にいる王ジソーが喜ぶ姿が目に浮かぶようだった。味方から見れば士気を挫かれかねない光景だが、この戦慣れした男にはその後の戦況が思い浮かぶのである。
アガルススがルージ軍の前衛として率いてきた兵は、彼自身の兵三百に数名の小領主の兵を加えて五百にも足りない。しかし、イドポワの門の出口を中心に、半径半ガルゲリア(約半径80メートル)ばかりの半円形に布陣しており、陣の大きさは五百足らずで守るにはちょうど良い。兵士にアガルススの指示が行き届き、戦いを支えることもでき、多少ある空間には、僅かだが予備兵力も確保して、前衛で傷ついた兵士と入れ替えることもできるだろう。
突撃を始めたシュレーブ軍兵士の前衛が、その表情まで見える距離に迫った。
「投石、準備。放て!」
アガルススの命令で兵士たちが手にした投石器から放たれた数百個の石が前進してくるシュレーブ兵を捕らえた。倒れる兵士に後続の兵士がつんのめって倒れ、更に後続の兵士に踏みつぶされて悲鳴を上げるという有様である。
「おおっ、お前たちの放つ石は、ルミリアの真理の弓のごとく百発百中じぁ」
アガルススは神の名を挙げて兵たちを鼓舞したが、命中するのも道理で、四千人を超えるシュレーブ軍兵士の大半が味方同士の横の間隔を縮めながらイドポワの門に突撃してくるのである。シュレーブ兵には左右に石を避ける間隔はなく、立ち止まって盾を構えて石を防ごうとした者は、後ろから押し寄せる味方に押し倒され、その足の下に踏みしだかれるという有様で、左右の部隊の間では兵が入り交じって、兵は指揮をする指揮官の姿も見失って混乱していたのである。
「投石準備、今一度。放てっ」
アガルススは無慈悲な命令を繰り返した。更に数百の石礫が飛び、倒されるシュレーブ軍兵士が数知れず、シュレーブ軍兵士の悲鳴が戦場に響き渡った。前方を駆けていた兵士の恐怖や苦痛の悲鳴に、後方の兵士は足を止めた。指揮官も突然の大きな被害に戸惑っていた。
ちょっと混乱しそうな言葉の解説です。
【投石器・スリング】
兵士が携行する石を遠くにとばすためのヒモのような器具です。Wikiより
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8A%95%E7%9F%B3%E5%99%A8
アトランティス軍の大半の兵士は、剣に加えて弓や投石機を持っています。アガルススは携行に便利だという理由で兵士に投石機を装備させています。もちろん、剣と共に短弓を装備する部隊もあります。




