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ルージ兵たち

 アガルスス自身にとって、この状況で理想的な戦いというのは、前面の敵をあしらいつつ、彼が率いる兵士を整然とイドポワの門の内側に下げて、門を通ってくる敵をと戦うことである。しかし、後方には王直卒の部隊がおり、突然に行く足を止めてしまったアガルススの隊のために混乱しているだろう。アガルススが急いで部隊を後退させれば、体制を立て直そうとする王の部隊を更に混乱させることになる。王が兵を引くまで今しばらくここで時間稼ぎをしなければならない。アガルススはそう考えていた。

 前方を広く見渡せば、目に入るシュレーブ軍に厚く囲まれ、その総数はざっと三千五百から四千といったところか。アガルススは従卒に曳かせていた馬に乗った。普段は徒立ちで兵と共に行軍するアガルススだが、その手綱さばきも様になっている。

「おおっ、我らが殿は馬に乗っても、よう似合うわい」

 主人を讃えた古参兵にアガルススは、陣に響き渡る声で答えた。

「当たり前じゃい。この儂が戦うのに、徒立ちも乗馬も関係あるものか。ただ、敵を葬るのみぞ」

 その言葉に兵士たちは頼もしい指揮官を讃えるように喚声を上げた。アガルススは兵の士気を鼓舞するためにそう言ったが、その意図は別にある。戦が始まれば彼の命令が末端まで届きにくい。馬で前線を素早く移動しながら、兵に命令を与えてゆくつもりなのである。彼は言葉を継いだ。

「馬上からなら、シュレーブの者どもが、よぉ見えるわい。おおっ、奴ら、お前たちの姿に怯えて居るぞ」

 彼は兵をかき分け、陣の前面に出ると、兵たちを振り返って、この戦の意味を持ち前の大声で語りかけた。

「シュレーブの奴ら目は、真理の女神ルミリアを裏切り、蛮族アテナイの走狗と成りはておったわ。薄汚い裏切り者どもを罵ってやれい!」

 そして、アガルススはシュレーブ軍に向き直って、味方の兵士の言葉を誘う第一声を発した。

「裏切り者どもめ。蛮族アテナイの走狗め!」

 アガルススの声が配下の兵にも伝わり、兵たちは次々に叫び始めた。

「裏切り者どもめ。蛮族アテナイの走狗め!」

 この時、兵士たちから迷いや恐れが消えた。ただ、指揮官と共に戦う意志で一つになった。


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