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ルージにて1

 まもなく、まぶしい朝日が輝く水平線の先に、この船の人々の故郷が見えてくるはずだった。

 アトラスたちがアトランティス本土の東にあるルージ島、アトランティス諸国の中で唯一、本土を離れた島国ルージに戻ってきたのは、アトランティス本土中央に位置するシリャードを発って十日目の事である。

 古くは幾多の国々が覇権を争ったアトランティスは、聖都シリャードと呼ばれる宗教都市において、彼らが信奉する真理の女神ルミリアの下に一つにまとまり、年に一度、各国国王は聖都シリャードにおかれたアトランティス議会に集うのである。その議会が今年はアテナイ討伐を宣言したルージ国王リダルの発言で終わりを告げた。


 やがて、島が水平線に浮かび上がるように見えてきた。船上からその景色を眺める父のリダル王がアトラスの傍らにいた。もともと無口で厳格な父親だが、アトラスには戦を前にその視線に厳しさを増しているようにも思えた。

 ただ、アトラスは気づいては居ないが、アトラスを眺めるときにリダルの視線が僅かながら和らぐことがある。アトラスが父親のリダルに呼ばれてアトランティス本土の聖都シリャードに向かい、いま父親とともにルージに戻るのは一ヶ月目である。この一ヶ月で、息子は新たな経験をし成長を遂げたように感じられる。厳格な王がわずかに息子に見せた愛情だった。

「良いか、アトラス。我らは四週間後には兵を率いてルージを発つ。聖都シリャードに立てこもる異境の野蛮人タレヴォーどもを蹴散らしてくれる」

「その時には、是非とも先鋒を賜りたく」

 アトラスは父の戦で、先陣を切って勇敢に戦って見せたいと言うのである。父親は何も語らなかった。ただ、いよいよ港が近づいたということを教えるようにじっと前を見据え他だけである。


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