遅刻魔と委員長の出会い
学校中に予鈴が鳴り響く。
それと同時に麻里はパチッと目を開いた。
そういえば寝転んでいたらあまりにも気持ちがよくて、思わず寝てしまったな・・・。
そう思いながら、麻里はゆっくりと起き上がった。
教室に行きたくない・・・、なんてことも思いながらため息を一つ。
「ありゃ?」
そんなまぬけな声が聞こえたのはそのすぐあとだった。
そっとうしろを振り向くと、一人の少女がポカンとした顔でこっちを見ている。
「確か・・・、都嶋裕子さん、だったか?」
学級委員長の麻里は、クラスの生徒の顔と名前は一応覚えていた。
「はいー、そうでござんすよー」
その少女、裕子はにっこり笑ってそう答えた。
いつも遅刻しているし、席も遠いから話したことはないが、いつも笑っているな、あの人は・・・。
麻里はそう思いながら裕子を見た。
「あなたさまはー・・・、山代さん・・・でござんしたよね?」
その裕子の言葉に麻里は目を開いた。
驚いたのだ。彼女が自分の名前を知っていることに。
自分が相手の名前を知ってても、相手が自分の名前を知っているというのは滅多になかった。
覚えられているとしたら「完璧少女」とか「学級委員長」とか、その程度。
だから驚いた。しかも知っていてくれたのは、この高校に入って初めて知ったこの少女だ。
「え、はずれてますけ?山代麻里さんでないんですかい?」
裕子が心配そうな声で聞いてきた。
返事がなかったから、名前がはずれたと思ったのだろう。
麻里は少しだけ顔に笑みを浮かべて言った。
「いや、合っている。私は、山代麻里だ」
そう言うと裕子は安心してように笑った。
「さいですかー。よかったですー」
その笑顔につられて、麻里も少し笑った。
二人は出会った。
まだ、友達というところまではいってないけれど、でも友達になるのは、そのすぐあとのことである。
「・・・というか、都嶋さんは一体どこから来たんだ?」
「いやー、五時間目遅刻しそうでござんしたんで、屋上の非常階段から・・・」
「あー・・・。あそこ、裏門から近いし、先生いないからな・・・」
「正門は先生がいるっすからねぇ・・・。遅刻しているってバレてても通るに通れないどす」
「ははは・・・(遅刻魔って呼ばれてるからな・・・都嶋さん・・・)」