第十二部
読んでくださっている皆様
どうもありがとうございます。
試験やらなんやらで一か月以上更新が遅れてしまい申し訳ありません。
お気に入りが五件になっていたりポイントも入っていたりと
忙しい中とてもうれしく、また焦ってもいました。
夏休みに入りプロットを固めることができたので
後はこのまま完の文字までは知るだけ!!
とはいかないと思いますが
ころからもよろしくお願いします。
ホールというものはどこまでも不完全でなくてはならない。
音が響いてこそのホールだ。
ホールの不完全さが音の響きに対して貪欲にする。
欠落を満たすためにホールは楽器から人から容赦なく音を奪い去っていく。
皆さんはもう一つ知っておられるだろうか。
それは波の恐ろしさである。
小さな波だったとしてもそれらが一所に集められると途轍もない破壊力を内包するようになる。
音というのも空気中をふるえながら波として広がっていく。
ありえないことではあるが
まったく同じ響き、大きさで歌う歌手が40人ホールにいて
ある一点に向かって音をぶつけたならば
音の波はホールを崩壊させるまでの破壊力を得ることができる。
僕は宿屋に戻り酒場の一角で体格のいい女将に手当てをしてもらっていた。
不意を食らったせいで受け身をとれずそのまま顔で体を支える羽目になった。
とは言ったところで別にすぐ手も出せたおかげでちょっとした広範囲に渡った擦り傷だけ。
水で洗いアルコール度数の高い酒を顔にぶっかけられて
血が止まるまで張っておけと大きなガーゼをバチンとつけてもらった。
女将はどうしたんだいとしつこく聞いてきたが
どこにあの男たちがいるかわからないし
この傷ができる羽目になったのは後ろに庇った少年のせいなのはわかっていたため
ただ転んだだけだと説明をしておく。
怪我もただ転んだだけ程度のものだから
「まぁ、あんたは見るからに何もない所でこけそうだものね」
なんて不本意な言われようをしたがそれはもう仕方ない。
ただ女将からもう少し情報を聞いておきたい。
「この町はあんまり子供がいないねぇ」
「あんまりじゃない。いないんだよ、この町には」
「そりゃどうして?」
「もともとこの町はあのテーマパークを作るためだけに作られたものだからさ。
何年という工事を何もない荒地じゃできないからねぇ。大工やら配管工やらが工事期間中生活できるようにという目的でこの町が成り立った。必要なものが必要な数だけ用意されたこの町にゃ競争はない。おまけに、よそ者じゃなければみんなタダ。買うほうも売るほうもあのテーマパークの関係者だからほとんど配給のようなもんだね」
「でも、もう完成したんだろう?」
「それが面白い契約でね。完成しても二年間はここで生活しろっていう一文が載っているのさ。だから、私たちはこの何もない所で二年間過ごさにゃならん。みんな出稼ぎで単身で来ているからみんなうっぷんが溜まるのさ」
「さっき子供を見かけたんだが・・・」
「んじゃさっきの傷は転んだもんじゃないね」
「えっ」
「ここの男どもはうっぷんが溜まっているって言ったろう?
ここのテーマパークの雇い主は大層頭がおかしいのか、気が回るのかわからないけれど、
ストレス解消に暴力を振るっていいおかしなガキを週に一度送り込んでくるのさ。
わたしゃあ毎回やめろって言ってるんだけどねぇ。それでもやめないんだから別に何かあるのかもねぇ」
「別の何かっていうのはなんか心当たりがあるのかい?」
「なんていうか子供が来た日はやけに飲んだくれる男だ多くてねぇ。契約書にあたしの知らない一文がほかにあったとしてもおかしくもないのさ。金がもうかるからって変な商売はやらないほうがよかった。
あんたもさ、ここに首を突っ込まないほうがいいよ。中に入っていく客はほとんどいないし、出てこない客もいる。聞いてみたらヘリの入退場もあるなんて説明だしね。
なんか物騒だよ」