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どうしようもない君が天使で舞い降りた


クリスマス企画もの。「摂子がミニスカサンタでお出迎え」という私的には難しいリクエストでしたがギャグにすればいいかと気づきました。掌編。











「あー、疲れた。めちゃくちゃ疲れた…」


もう何をする気力もないほどクタクタになって帰ってきた海藤久成は、クリスマスというお祭り騒ぎに心底うんざりとしていた。


なにがクリスマスだ、猫も杓子も浮かれやがってバカじゃねーの居たかどーかもわかんねぇ磔になったオッサンの誕生日のなにがメデタイのか少しもわかんねーし分かりたくもねー、っつーかどーせ祝うんならそのなんにでもとりあえず乗っかってくクソめでてーてめぇらの頭を祝った方がいーんじゃね?じゃなかったら今すぐ改宗してケーキもプレゼントもケンタッキーも関係ねー教会にでも行ってミサ受けて来いや!


と、溢れる理不尽な怒りを、クリスマスという行事に喜びはしゃぐ名もなき人々へぶつけながら、海藤は倒れるようにポーチから廊下へ倒れこんだ。

何も海藤は昔からこのように歪んだクリスマス観を持っていたワケではない。

ただ、就職してからこちらは、仕事の関係上クリスマスも何もない、更に言うとクリスマスのせいで仕事が増えるような会社に従事しているため、自然と世の中のおめでたい空気を毛嫌いするようになってしまった。

とはいえ、恋人同士のイベントとして欠かせないということは経験上よくわかっているし、実際彼女にはそれなりに尽くされてきた。

多面的に捉えれば悪くない行事であると、よく分かってはいるのだ。


ただ。


(あいつじゃなぁ……)


「今年の彼女」にはあまり期待出来そうにない。

いや、そもそも期待してはいないが、自分で仕掛けようにも仕事に忙殺されて身動きがとれなかったせいで、さらにクリスマスへの怨念が深まってしまったというわけだ。


(ま、いっか。別に誰かと居なきゃなんねー理由もねぇし。たまには気兼ねなくお一人様楽しむか)


さっそくどこかコンビニでも行って買い込もう、そう決めた時だった。


(ん……?)


引っ越したとはいえそろそろ慣れてきた新居に、ふと言いようのない違和感を覚え、海藤は顔をあげた。


「あ?」


そうして目に飛び込んできたのは……


「め、メリークリスマース……」


カチッ


というスイッチ音のあと、暗い部屋を照らし出したその下に、どこかのテレビで見たような赤いミニスカ姿の女。


「あ、あ、あの、仕事お疲れ様~。…じゃなくて、あ、あのね、コレは実は、か、会社の罰ゲームで、ノリで亜希ちゃんとかが彼氏に見せて来いっていうから、驚かせてみようかなって私もまんざらじゃなくなってきて、つい、その、あの、いやえっと、そうじゃなくて~……っ」


そう言って顔を真っ赤にして拙い言い訳を口にするのは、海藤の彼女であるところの杉田摂子である。

それも、世に言う「ミニスカサンタ」姿という、海藤的には今世紀最大にレアな光景が目の前にあって、思わず生唾を呑み込む。


そうして、疲れや怒りなどすべて吹っ飛んでしまった空っぽの頭には、こんな感想が浮かんできてしまったのだ。



(天使……)



クリスマスも悪くないなと、海藤がさっきまでの態度を即座に翻した、12月25日の深夜。

一組のカップルがイベントを最大限に楽しんだのは、言うまでもなかった。









終わり







珍しく海藤が萌え萌えしています。



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