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気になっても答えは教えてもらえない

 不機嫌さがちらほらと見えるリコさんの様子を気にしながらも俺達三人は昼食を済ませた。

 昼食はサンドイッチと唐揚げと玉子焼きとプチトマト等のサラダ。

 とは言っても、俺達がいた世界のと全く同じってわけではなく、ちょっと色が違ったり形が違ったりしていたんだけどね。

 それにしても、やっぱこっちの料理はうまい!

 昼御飯食べたばかりだけど、夜御飯が楽しみだ!

 と、満たされたお腹をさすりながら芝生に腰を下ろした途端だった。

「じゃあ、修行再開しましょうかー?」

 緊張感のかけらもないまったりとした声がした。

 えっ、修行! もう?

 驚いて声の主であるリコさんを見る。

 彼女は既に準備体操を始めていた。本気だ。

「えっ……と本気ですか?」

 現在天然キャラに成り済ましているリコさんだ。これも場を和ませるためにやっているのかもしれない。

 さきほどまでのぎすぎすした雰囲気もなくなっているし。

 しかし、俺の予想はかすりもせず。

「本気だよー? エイタ君はもしかして食後だから休憩が必要だって言いたいのかなー?」

 子供に聞くように、俺の目を見ながら優しく声をかけてくるリコさん。

 ううっ。それはやめてくれ。と思ったけど、さっきと違って、見つめられる事での気恥かしさこそあるけど、リコさんから目を離せない程の強烈な魅惑は感じられない。

 あれっ? もしかして、リコさんの色香に慣れてきたのかな?

「エイタくーん?」

「えっ?」

「えっ? じゃないでしょー? お話聞いてたのかなー?」

 あっ、そうか。今リコさんは俺に話しかけてたんだよな。危ない、危ない。自分の世界に入ってしまってた。

「うーんと、休憩とまではいかないけど、動いてもお腹が痛くならない程度の時間は置きたいなあ、と」

 修行がどんな事をするのかわからないけど、腹痛くなったり気持ち悪くなったりするからな。

 っていうか、食べ過ぎて動きたくないのが本音だ。

「別に激しい運動するわけじゃないしー? 大丈夫だよー。それに、時間は無限にあるわけじゃないんだから有効に使わないとねー?」

 にっこりと笑っているリコさんだが、その笑顔には妙な迫力があった。

 もしかして、内心怒ってる?

「わっ、わかりました。お願いします」

 自分の勘を信じ、リコさんの言葉に従う俺。これ以上渋ってると、後で怖い事が起きそうな気がしたんだ。

「じゃあ、やりましょうかー?」

 俺の答えに満足したのか、得体不明の迫力の姿がなくなったいつも通りの笑顔に戻ったリコさん。

 仕方なく(間違っても態度には出さないが)重い腰を上げ、座り心地の良かった芝生に別れを告げる。

「あのっ、私はこれから公務がありますので失礼させていただきますね」

 俺達(主に俺)が散らかした空き皿を片づけていたお姫様が名残惜しそうな顔でそう言った。

 ってか、お姫様に後片付けさせてちゃ駄目でしょ俺とリコさん。

 満足感のせいで、その事まで気が回らなかったなあ。

 今更気付いても、時既に遅し。お姫様は完璧に片づけを終えてしまっている。

 ううっ、ごめんよお姫様。

「そうですかー。頑張ってくださいねー」

「エイタ様、修行頑張ってくださいね」

 リコさんの言葉には何の反応を見せず、お姫様は俺に微笑みかけた。

「あっ……はい。えっと、美味しかったです。ごちそうさまでした」

 俺の言葉にお姫様は照れくさそうな笑顔を浮かべた。可愛い。

 そして、お姫様は恭しいお辞儀をして、一瞬、リコさんに視線を移した後、空になった皿達を抱えて走っていった。

 なんでリコさんを……というか、顔に似合わずリコさんを無視するなんて。なんで仲悪いんだろうか?

「チッ。あたしに目で牽制するなんて生意気だわっ」

 うわっ、本性リコさんだっ。さっきまでののほほんとした雰囲気はどこへやら。憮然としたリコさんはお姫様に対して文句を言い始めた。

「こんなやつに何かするなんて本気で思っているのかしら? あり得ないわ」

 こんなやつ? って俺の事か? 何かする? 話がわからないぞ。

「しかし、なんでこんなやつがガキ姫に気にいられているのかしら? 謎だわ。18年生きてきて最大の謎」

 なんか物凄い取り残されているのに、激しく馬鹿にされている事だけはわかるぞ。っていうかリコさんは18歳だったのか。

 と、言う事は呼び出されたのが3年前だから、15の時、俺と同じ歳の時に呼ばれたのか。もしソウジさんも15の時呼ばれていたら、6年だから21歳か。結構歳離れているなあ。

「あんた、お姫様になにかしたの?」

「いっ? 何もしてませんよっ」

「本当に? じゃあ、なんでお姫様があんたなんかの肩をもつのよ?」

 あんたなんかっ! 滅茶苦茶低く見られている気がするんですけど、気のせいですか?

 まあ、お姫様と比べられたら俺なんか塵程度のものだろうけど、なんか他人に言われると腹立つ!

 んっ? それは置いておいて、お姫様が俺の肩をもっている?

「お姫様、僕の肩をもつような事してました?」

 俺の質問に、リコさんは綺麗な顔が台無しになる程口を大きく開けて、呆然と俺を見つめる。

 なんかおかしなこと言ったかな俺。

「はあ……あんたに聞いた私が馬鹿だったわ」

 何かを諦めたのか、大きな溜息と共に首を振るリコさん。

 なんなんだ一体!

「まっ、いいわ。修行さっさと始めますか」

 えっ? 俺に説明は無いの?

「えっと、僕にわかるように説明してもらえると助かるんですけど」

「まず、魔法の使い方だけど、私達の場合は魔力を指に集めて、その魔法をイメージしながら魔法名を書くと発動するわ」

 無視かよっ!

「いや、だから――」

「普通に書くだけだと目の前から発動するわ。魔法の他に、補助の術式、まあ魔法陣の外枠みたいなものと思ってもらえればいいわ。それを書くと、ある程度発動する場所を指定する事ができるわ」

 全然俺の話聞く気無し。えーっ、滅茶苦茶気になるのに!

「話聞いてる? 一度しか言わないわよ?」

 ……この人意地悪すぎだっ!

「せめて僕が納得するくらいまで教えてくれても……」

「却下。それで、魔力の集め方だけど。まず……そうね。体全体で風を感じるようにしてみて。しばらくやれば風とは違う何かを感じる事ができるわ」

 うわっ。なんか実践まで始めてるし。

 くそう。これ以上食い下がったら、取り返しがつかなくなる。もう既に、最初何言ってたかわからなくなってるし。

 そんなわけで、泣く泣く俺はお姫様が俺の肩をもつと思われる理由を知る事ができずに修行を始めたのだった。

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