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期待は自由に抱けばいい

「じゃあ、後はよろしくなっ。頑張れよエイタ!」

 言葉の終わりと同時に背中をバンと叩いて、ソウジさんは物凄い勢いで走っていってしまった。痛い、強く叩きすぎだ。

 叩かれた背中をさする。本当に痛い。

「さあて、始めましょうか」

 どわっ! リコさんがいつの間にか俺の背後に立っている。しかも、耳元で悪魔のような囁き付きで。

「り、り、リコさんっ!」

 条件反射で飛びのく。何故かわからないけど、背後に立たれるとゾクッとする。これも彼女の本性を知ってしまったからだろうか。

「なぁによー。逃げる事ないじゃない?」

「だっていきなり――」

 甘えるような言葉で近づいてくるリコさんに言い返そうとした時、不覚にも彼女を正面から見てしまった。

 昨日はソウジさんと同じ様な布の服だったけど、今日は修行で動くためか、服装が違った。

 着物の様に腕の辺りはひらひらとしているが、胸元は大胆に切れ込んでいて、その大きなものが見えそうな見えなさそうな。

 下はスカート。フレアスカートって言うのかな? スッとした普通のスカートじゃなくて、ちょっと波打ってるやつ。

 それが短くて、触ったら気持ちよさそうな質感の太股が半分くらい見えちゃっている。

 両方とも白で、本性を知っている俺ですら、彼女を神の使いとか神聖な巫女かと一瞬思ってしまう程、清らかに見えてしまう。

 長い艶のある黒髪に大きな瞳、桃色のぷるんとした唇を見ればなおさらそうかと勘違いしてしまう。

 初めてじっくりと見たと思うけど、リコさん超可愛い。小悪魔でも許しちゃうかも。いや、マジで。

 身長も、170センチの俺より10センチちょい下ぐらいかな? 上目遣いで見られれば心臓が急に暴れ出す感覚に陥る。

 あっ、という事はソウジさんは俺より10センチは高そうだから180か? イケメンで高身長とか勇者にぴったりだな。

 いやいや、どうでもいい事を考えてしまった。いや、どうでもいい事を考えていないと、リコさんに呑まれる。

「なにか言おうとしていたけど、どうしたのかな?」

 まるで子供に聞いている様な優しい声で、リコさんは俺の顎に手をやった。くっ、俺の心を読んだ上でからかうようなその仕草も、俺には払いのけられない。

 だって、だって、胸が見えそうなんだもん。

 しょうがない。しょうがないんだ。家には誰に似たのか滅茶苦茶美人で姉弟とか関係ないと思うぐらいの魅力的な姉がいて、さらにその姉が家の中では結構無防備だったから色々見えちゃって毎日もんもんとしていたんだもんよ。

 そんで、奇跡的に彼女ができても、姉の姿を見て自信をなくして翌日から連絡がとれなくなったり。意地悪な姉は彼女を連れてきた時ににきまって俺の部屋に入ってきて邪魔するんだよな。

 いつもは俺から話しかけても返事すらしないくせにっ。くそっ、思いだしたら腹が立った。

 そんなわけで、俺のもんもんとした想いの捌け口はどこにもなく、たまりにたまった状態で日々過ごしていたから、例え本性小悪魔で性格の悪い女の子の胸であっても見えそうだとつい目がいってしまう。

 後に、この事を出しに色々要求されると頭ではわかっていても俺アイズは独断で任務を遂行しようとする。

「どこ、見てるのかな?」

 そのあやす様な声。たまらない。やばい。理性が飛んで行きそう。

「エイタ様、リコさん、ご飯にしませんか?」

 俺が生唾を飲み込んだその時。後ろから可愛い声が聞こえた。もしかしてお姫様?

 くるりと振り返ると、そこにはたくさんの食べ物がのったおぼんを持ったお姫様の姿があった。

 心無しか、おぼんが震えているような気もする。

「あらー。お姫様ー? なんですかその美味しそうな食べ物はー」

 さっきまでとは別人の様な天然キャラで、リコさんは俺から離れていった。

 ふうー。助かった……けど、ちょっと残念。

「お二人は何をしていたんですか?」

 にこやかに笑うお姫様。だけど、今まで見たきた笑顔と何か違う。なんというか、引きつっているわけじゃないんだけど、それに近い様な。

「私達は修行に決まってますよー?」

「修行をするのにあんなに近づくんですの?」

 呑気な声のリコさんとは真逆で、お姫様の声は何か刺々しい。

 えっ? 俺達何かお姫様に悪い事したのか? いや、『達』じゃなくてリコさんか。

 天然ぶりをアピールして微笑むリコさんに対し、大きな瞳で睨むお姫様。

 なんか空気が重くなってきた気がする……。

「エイタ君の顎にゴミが付いていたからとってあげただけですよー?」

 リコさんはにこやかに堂々と嘘をついた。

 それを聞いたお姫様は視線を俺に移す。

「本当ですの?」

 えっ、まさかの俺に解答権?

 ちょ、ちょっと待って。どうすりゃいいんだ?

 助けを求める様にリコさんを見ると、彼女はにやにやしていた。

 あっ、あの人こうなるのわかっててあんな嘘ついたな?

 しかも、ちょっと待てよ。本当の事言ったらお姫様にいやらしいと軽蔑の目で見られる可能性大だ。

 かと言って、脅されていたっていうのもなんか違う。

 と、なると……だ。

「はい。本当ですっ」

 リコさんの嘘に乗る事が一番波が立たないわけだ。

 前回が前回だから、今回も狙ってやったのか?

 げっ、そうなると次はどんな弱みを握られてしまったんだ?

「そうですか。それなら良いですわ」

 俺の言葉を聞いてどうやら納得したお姫様。

 ふーっ。バレなくて良かった。

 そういえば、お姫様昨日の夜とちょっと話し方違うかな?

 今日の方が、お姫様って感じだ。うん。

「では、お昼にいたしましょう」

 そう言って、お姫様は中庭の端に向かって行った。

 彼女が向かう先には木のテーブルとイスがある。

 たしかに、朝から緊張していたし、腹減ったな。

 よし。ついていこう。

「チッ、なんなのよまったく」

 俺がお姫様の後に続こうと足を一歩出した時だった。

 後ろからいかにも不機嫌そうな声が聞こえた。

 慌てて振りかえると、リコさんがやっぱり不機嫌そうな顔をしていた。

 あれ? もしかして今回のって想定外なのか?

「エイタ、あんたお姫様になんか言ってないでしょうね!」

「いっ!? 言ってませんよ!」

 なんで怒りの矛先が俺なんだ。お姫様に行っても困るけど。

「今まではまったく私達に関心なかったのに……」

 えっ、そうなの? 俺なんか初めて会った時タックルされてるんだけど。

「まさかあんたに惚れた……? ないわね」

 おいっ! 即答かよっ! いや、惚れられたなんて微塵も思ってないけどさ。

 けど、さっきリコさんは私『達』って言ってたよな。

 ソウジさんに対しても関心なかったわけだから、もしかすると、もしかするかも!?

 …………うん、無いな。うん。無い。

 けど、けど。無関心だった二人とは違って、気にかけられているのは事実!

 それが好意か厚意かはわからないけど、それだけで今までの勇者達より特別扱いされているよね?

 叶うわけないけど、淡い期待ぐらい抱いたって罰は当たらないよな?

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