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約束〜父親の会社が倒産したので家事代行のバイトを始めたら、アイドルとお近づきになりました。  作者: 蓮太郎


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19/19

約束。

詩音が旅立った後、健人は試験に合格し、コミュニケーション能力は競合と比べ若干劣ると指摘を受けたが、無事官僚職に就くことが叶った。

健人は、毎日朝早くから、夜遅くまでがむしゃらに働いた。

時差の影響もあり、詩音との連絡は、メッセージのやり取りがほとんどで、顔どころか、声を聞く事も余り無いまま、11ヶ月が過ぎていた。


「終わったー!」

今日の仕事を終え、健人が小さく叫ぶ。

「おっ、芦田、今日は早いな。仕事にもようやく慣れてきたか?」

隣りの席の先輩が、健人を労う様に言う。

「そうですね〜、まぁ、ようやく少し慣れてきました。」


「そうか〜。じゃあ来月辺りからもう一段階上げていくかな〜。」


「お手柔らかにお願いします。」


「あはははっ!まぁ、がんばれ。

終わったなら帰れよ。たまには早く休め。」


「はい!ありがとうございます。

では、失礼します!」

健人は、元気良く挨拶すると、帰路についた。


「詩音に返事しないとな。」

健人は、駅から家までを歩きながら、詩音に返事を送る。


ブーブー、ブーブー。

健人がメッセージを送ると、詩音から着信が入った。


「もしもし詩音?」


お疲れ様。お仕事終わった?


「うん、今日は久しぶりに早く終わった。もうすぐ家に着くとこだ。」


そっか。


「詩音、寝なくていいのか?そっちは夜中じゃないのか?」


大丈夫。


「寝れないのか?何かあった?」


順調だよ。


「ほんとか?」


うん。


「ならいいけど。あと1ヶ月だな。」


そうだね〜。会えるのが楽しみ。

いっぱいいちゃいちゃしようね!


「お、おぅ。」

健人は、一人照れながら夜道を歩く。


なに?照れてるの〜?


「まぁな。そんなはしたない事をすらすらと口に出せるのが不思議だ。」


え〜?何を想像したのかな?


「ゔっ。で、今日はどうしたんだ?

やけに機嫌がいいな。」


べつに〜。

早く帰ってゆっくり休んでね。


「うん。」


じゃぁ、またね〜。


「うん。おやすみ。」


おやすみなさい。

プープー。


「何だったんだ?機嫌が良すぎて恐いな。・・・久しぶりに詩音の声聞いたな。今日は、いい日だ!」

健人は、ご機嫌で自宅の玄関をあけた。


「ん?」

玄関には見慣れない靴が無造作に脱ぎ捨てられている。

「誰か来てる?いや、電気付いてないしな。なんだこの靴?」

健人は、ブツブツいいながら、脱ぎ捨てられていた靴を揃えて置いた。


ガチャ。

リビングのドアを開けると、真暗なリビングのソファーに人影が見えた。

「誰だ?」

健人は身構えた。

「おかえりなさい。」

人影は、立ち上がり、健人の方を向いた。


「幽霊?」

暗闇に目がなれると、そこに立っているのは詩音だった。


・・・詩音は海外。

なら、今俺の前にいるのは、詩音の幽霊?


健人は、無言で詩音を見つめる。

「・・・どっちだ?」

そして、恐る恐る確認する。


「どっちって?」


「幽霊?それとも本物の詩音?」


「確かめてみたら?」

詩音は、微笑みながら手を広げる。


健人は、ゆっくりと近づくと、抱きしめてみた。


「・・・すり抜けないな。

詩音なのか?」


「未だに疑ってたんだけど、私の幽霊って本当だったんだ。」


「そんな嘘、つく意味が無くないか?」


「賢い健人が、賢くない私を好きにさせるための、厳密な計算の元についた嘘。とか?」


「何でもいい!」

「キャッ!」

健人は、詩音をソファーに押し倒した。

詩音は、健人の首に腕を回して見つめる。

「ちょっと強引すぎない?」


「いっぱいいちゃいちゃするんだろ?」


「あら、さっきは照れてたのに。」


「詩音。会いたかった。」


「私も。」


二人は唇を重ね、そのまま愛し合った。



「あ〜ぁ。もっとロマンチックな再会を期待してたな〜。」

ソファーにぐったりと二人は座り、体を寄せ合っている。

詩音は、不満気だ。


「ロマンチックってどんな感じだよ?」

健人は、少し悲しそうだ。


「う〜ん。ゴロゴロカバンを引きずりながら歩く私の前に、健人くんが偶然現れて、健人くん!詩音?健人く〜ん!詩音!とか言いながらお互い駆け寄ると、そこは、イルミネーションされた木の下で、久しぶりの再会にドキドキして、しばらく見つめ合って、健人くんが私を抱きしめる。とか?」


「それならそもそも、家で待ってたらダメなんじゃ?」


「・・・確かに。」


「あはははっ!」


「ちょっと!笑わないでよ〜。」


「なぁ、詩音。」


「何?」


「またまた順番も、展開もロマンチックじゃないけどさ。」

健人は立ち上がり、寝室に行くと、小さな箱を持って戻ってきた。


「詩音。」


「はい。」


「詩音が戻って来たら渡したくて、買っておいた。」

健人は、小さな箱を開けると、中身を手に取った。

詩音の左手を取ると、それを薬指に差し込む。

「えっ?これって?」


「約束。家族になって下さい。」

健人は、詩音の前にひざまずき、真っ直ぐ見つめる。


「・・・はい、喜んで。」

詩音は、頭の中でこれまでの人生を思い返すと、涙が溢れ出す。

「お、おぃ、何で泣くんだよ!?」

健人は焦っている。


「・・・私も幸せになっていいんだって思ったら、涙が。」


「当たり前だろ?なろう!幸せに。」


「うん。でも、裸でプロポーズって。」


「あ〜。早く伝えたくて我慢できなかった。」


「ありがとう。」

詩音は、ひざまずく健人の隣りに膝をつくと、健人に抱きついた。

「幸せです。」

「俺も、幸せだ。」

健人も、詩音を抱きしめ返した。


それから月日は流れ。

ゴ〜ン、ゴ〜ン、ゴ〜ン。

二人は、健人の家族と、少人数の友人を呼び、結婚式をあげた。

「では、誓のキスを。」


健人は、詩音のベールを上げると、優しく口付けをする。

「これで家族だね。」

「あぁ。」

二人は嬉しそうに微笑み合った。



       「完」


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