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約束〜父親の会社が倒産したので家事代行のバイトを始めたら、アイドルとお近づきになりました。  作者: 蓮太郎


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18/19

18.旅立ち。

「たった3日でなぜこうなる。」

健人は、詩音の部屋の玄関で立ちつくしていた。


事件の後、しばらく詩音は休みを取る事になった。

健人は、時間のある時には詩音に会いに来ていた。


「ごめん。」


「まったく。」

健人は文句を言いながらも、廊下に脱ぎ散らかされた服を広い集めながら廊下を進む。


「健人くんが来てくれるから、最近家事代行頼む必要がないのよね〜。」

詩音は、笑う。


「俺はおかんか!」


「・・・。」

詩音は、思い出した様に俯く。


「悪い。」

健人は、焦って、謝った。


「・・・大丈夫。でも、助かるな〜。彼氏がお片付け上手だと。」

詩音は顔を上げ、ニコニコしているが、まだ元気がない様に見える。


「ハァ。いいんだけどさ、しばらく休みなんだから、ちょっとは片付けできる様にがんばれよ。」

健人はため息交じりに詩音を見る。


「あはは。気持ちに頭と体が追いつかないといいますか〜。感謝しています。」


「はいはい。まったく。これはもう、無償の愛と言うやつだな。」


「・・・無償の愛か。お父さんがいなくなってからは、もらえなかったから、嬉しいな。」

詩音は、力無く笑う。


「大変だったろうな。良く頑張ったな。」

健人は、詩音の頭を撫でた。


「でも、健人くんに無償の愛と言うのは、甘えすぎているよね。」


「いいよ。これからは俺が詩音を支える。」


「うん。ありがとう。

私も、健人くんを支える。

それでね、私考えたの。

これは、私の無償の愛。」


「何だ?体で払うとか、またはしたない事を言うんじゃないだろうな〜。」

健人は目を細める。


「まぁ、それも追々?期待してもらったらいいけど。」

詩音は、髪を指でクルクルしながら、照れている。


「違うんだ?」


「今は、真面目な話、座って。」


「なんか辱められてたみたいで恥ずかしいんだけど。」

健人は、照れながらソファーの詩音の隣りにに座る。


「あはははっ!健人くん、可愛い。」


「う、うるせぇ。」


「あのね、私、アイドルやめて、お仕事が多分減ると思うの。減るだけならまだいいけど・・・アイドル引退、熱愛報道に加えて、殺人犯の娘と言うのも報道されたし。だから、ここを出ようと思う。」


詩音の母親の事件は、会見の日からしばらくは、熱烈なファンの暴走と報道されていたが、詩音の過去が探られ、過去の事件が公になってしまっていた。


「そっか。どこに引っ越すか決まってんのか?」


「うん。」


「どこらへんだ?余り遠くなると、困るんだが?」

健人は、不安そうにする。


「近いよ?ものすごい。」


「もしかして、俺と同じマンションとか?」

健人は、少し期待している。


「うん・・・同じ部屋に。」


「そうか。

えっ!!?それって?」


「同棲、しない?」


「・・・大丈夫なのか?」


「マネージャーと、事務所には事前に相談済み。会見のとき、家族になる約束したでしょ?散々報道されたんだから、もう大丈夫だよ。」


「あはは。まぁそうか。」


「でね、健人くんが家事代行してくれたら、私が家賃と、生活費、それから健人くんの学費もまかなう。

私は絶望的にできない家事をしてもらって、健人くんは学業に専念できる。

どうかしら?」


「・・・それは甘え過ぎだろ?」


「健人くんが、就職できた暁には、私は芸能界を引退するかもだし、私を養ってくれたらチャラよ?」


「・・・いや、待て!その場合、詩音は何をする?」


「・・・綺麗でいるための努力?」


「だけ?」


「子育てとか?」


「あぁ。」


「なんだよ?不満気ですな〜。スーパーアイドルを嫁にできるのですぞ?」


「あははっ。まぁ、俺に取って、詩音がスーパーアイドルだったと言うのは関係ない。

それでも、いいよ。

俺は、詩音とずっと一緒にいたいから。」


「よ、よろしい。」

詩音は少し照れながら、俯く。

健人は、詩音の顎に手をあて、顔を上げる。

「俺、がんばるから。」

健人は、詩音の顔に顔を近づけた。


「未来の旦那さん、頑張ってね。」

詩音が目を閉じると、健人は唇を重ねた。


二人は照れながら俯く。


「お仕事でもなんとか守った、ファーストキス。」


「・・・俺も、初めてした。」


「何だか、嬉しい。」


「うん。

・・・詩音はこの先、仕事でキスしたりすることもあるんだろうな。」

健人は、その時の事を考え、落ち込んだ。


「アイドルの時は、守られてたし、断れたんだけど、これからは分からないな。

でも、全力でそうならない様にする。」


「うん。」


「私、こんなだから、芸能界以外のお仕事で、できる仕事が思い付かないんだ。

ごめんね。」


「仕方ないだろ?」


「・・・そうだね。

健人くん。」


「何だ?」


「どんな仕事が来ても、健人くんが動じないくらい、私を全部あげる。

今から?」


「えっ!?

・・・今、から?」


「そう、今から。」


「じゃぁ、もらおうかな。」


「あら、珍しく素直。」


「うん。」


「いつもと違って、素直過ぎると、照れるのですが?」


バサッ。

健人は、詩音をソファーに寝かせた。

「千載一遇のチャンス。今度は後悔したくないから。」

健人は、真っ直ぐ詩音を見つめる。


「じゃあ、ベッドに行こ?」


「うん。」

「キャ、また〜。」

健人が詩音をお姫様抱っこすると、詩音は照れながら膨れている。

「嫌?」


「嫌じゃない。」


健人は、詩音をベッドに寝かせた。


そして、健人と詩音は、心も体も一つになった。


「詩音。」


「はぁい?」


「好きだ。」


「私も・・・大好き。」


ピンポーン。

ベッドで二人がいちゃついていると、インターホンが鳴る。


詩音は、立ち上がり、毛布を体にかけ、インターホンの画面を見た。

「健人くん、服着て!マネージャーが来た。」


「えっ?!うん。」



「何度も連絡したのよ?」

玄関に入ったマネージャーは、詩音に文句を言いながら、廊下を進み、リビングに入ると、ベッドに座る健人に気づいた。

「あら、ごめんなさいね。お楽しみ中でしたか?」


「もう、終わったから大丈夫。」

詩音はサラッと言う。

「お、おぃ、詩音!」

健人は恥ずかしそうにしている。


「ふふっ。それはそれは。」

マネージャーは、少し嬉しそうにソファーに座った詩音の隣りに座った。

「丁度良かった。健人くんも聞いてもらいたいのよ。」

マネージャーは、振り返り健人を見た。


「あ、はい。ここで聞いてます。」


「じゃあ、詩音ちゃんの仕事の事なんだけど、アイドル引退、熱愛、それに加えてご両親の事が公になって、仕事がパッタリ無くなったのは二人とも理解してるわね?」


「はい。」

健人と詩音は、声を合わせて答えた。


「で、これは、最後のチャンスかもしれない。」


「チャンス?」

詩音は、マネージャーを見つめる。


「えぇ、ある有名な作品を、有名な映画監督が映画化する事が決まってるそうなんだけど、詩音にオファーがきてる。」


「えっ!やりたい!」

詩音は、マネージャーに詰め寄る。


「待って。とりあえず聞いて。」


「はい。」


「まだ作品については非公開で、後々、オーディションをする予定だったみたいなんだけど、映画監督が、今の詩音がピッタリハマるって、詩音を指名してるそうなの。

映画の内容としては、ラブシーンも無い、シリアスな感じらしいんだけど、問題があってね。」


「問題?」


「えぇ。あなた達はこれから、同棲してずっと一緒にいられるって思っているでしょ?」


「はい。」

詩音は、不安そうに頷く。


「映画の撮影は、海外なの。

1年くらいは向こうにいる事になるわ。」


「えっ?」

詩音は戸惑った表情で俯いた。

「お仕事を取るか、幸せを取るか。まだ時間はあるわ。ゆっくり考えてくれたらいいわ。」

マネージャーは、複雑な表情で詩音を見つめた。


「行ってきなよ。」

黙っていた健人が口を開く。


「えっ?だって、1年も会えないんだよ?」

詩音は、不安気に健人を見た。


「詩音が頑張っている間、俺も頑張る。詩音が帰ってきたら・・・」


「帰ってきたら?」


「家族になろう!」

健人は立ち上がりながら叫んだ。


「・・・分かった。」

詩音は、決意に満ちた表情をする。

「マネージャー、私、やります!」


「以外だったわ。もっと悩むかと思ってたわ。」


「少し前なら悩むどころか、断ったかも。でも今は、大丈夫。そう思えるから。」

詩音が、健人を見つめると、健人は小さく頷いた。


それから、詩音は健人の家に引っ越し、しばしの同棲生活を満喫した後、映画の撮影へと旅立って行った。


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