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約束〜父親の会社が倒産したので家事代行のバイトを始めたら、アイドルとお近づきになりました。  作者: 蓮太郎


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16/19

16.記憶の蓋。

「う、う〜ん。」

健人は、微睡みの中、時計を見る。

「げっ!」

時計は10時を示していた。

「ハァ。昨日は色々疲れたからな。

・・・一限目の授業、もう、間に合わないな。」


ピンポーン。

「誰だ?」

インターホンがなり、健人は起き上がる。

「父さん?!」

インターホンには、健人の父親が写っていた。

「健人ー!来たぞ〜!」

父は嬉しそうにする。

「お母さんもいるわよ!」

父の後ろから母も顔を出した。


ガチャ。

健人が玄関のドアを開けると、両親は嬉しそうに入ってくる。

「あら、寝起き?まぁ、いいわ〜おじゃましまーす。」


「来るなら言ってくれよ。寝坊しなかったら、俺は今ごろ大学だぞ?」


「あら、健人が寝坊なんて珍しいわね。」


「あぁ。まぁ、色々あって疲れが。」


「無理し過ぎないようにね〜。」

母と健人が話していると、父が部屋を見回す。


「まさか、健人がこの部屋に住んでるとはな〜。」

父は、健人を見て驚いている。

「この部屋?」


「ん?健人、覚えてないのか?

父さん、この隣りの部屋に住んでただろ?健人も良く遊びに来たじゃないか。」


「・・・えっ?知らないけど。」

健人は、不思議そうに父を見た。


「まぁ、あんな事があったから、仕方無いか。」


「あんな事?」


「まぁ、いい。そう言えば、しーちゃんは覚えてるか?今ではスーパーアイドルだもんな〜。」

記憶に無い様子の健人を見て、父は話題を変える。


「・・・しーちゃん?ゔっ。」

健人は、胸の辺りが苦しくなる。


昨日、東京タワーを見た時の光景がまた頭に流れ込む。

しーちゃん!東京タワー綺麗だな!

そうだね!けいくん!

・・・小さな女の子と、話しているのは、子供の頃の俺?


健人は、気分が悪くなり床に屈む。


また違う光景が頭の中に広がる。

健人と若い父は、隣りの部屋のソファーに座っている様だ。


「ギャーーー!!!」

「やめろーー!!」

隣りの部屋から叫び声が聞こえる。

尋常ではない叫び声だ。


「なんだ、なんだ!?」

健人の父が驚いた表情で隣りの部屋に走る。

「やめろー!何やってんだ!」

隣りの部屋から聞こえる、健人の父の叫び声に、健人の視界は、隣りの部屋へとゆっくりと進む。

部屋に入り、廊下を進んだ健人の視線の先には、信じられない光景が広がる。

健人は思い出した。

健人の父は、刃物を持った詩音の母親を押さえ込み、その傍らには、血まみれの詩音の父親が倒れている。


「ゔ。ゔー!」

我に返った健人は、トイレに走った。

「ゔゲー、ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ。」


トイレに走った健人を見て、父と母が驚いて追いかけてきた。

「大丈夫か?」


「忘れてた。

・・・と、言うか、記憶に蓋をしてたんだろうな。」

健人は、立ち上がると、頭を抱えた。

「もう少し早く思い出してたらな。」

健人は、ヨレヨレしながら、ソファーに座った。


「何?どうしたの?」

母は、健人の隣りに座った。


健人は、詩音との事を簡単に説明した。


「まぁ、すごい偶然・・・というか、赤い糸とか運命感じるわ!」

健人の母は、驚いている。


「まぁ、分かった所で、どう伝えるべきか。思い出すのが遅かったかもしれない。」


「大丈夫よー!ここまで運命的な事が起きてるのよ!二人は結ばれる運命なのよ!」

母は、目をときめかせながら、両手を握っている。

「健人、がんばれ!」

父も嬉しそうに笑う。


「まぁ、考えとくよ。」


父と母は、晩御飯を一緒に食べた後、帰っていった。

健人は、ベッドに横になり、ボーっとしている。


「あぁ、なんて事だ。

俺も記憶が無かったなんてな。」

健人は天井を見ながら呟く。

「こんなに拗れた状態で、俺がけいくんだったとか言えないよな。

そう言えば、詩音のやつ、けんくんは言いにくいから、けいくんね〜!とか言ってたな。せめてけんくんだったら・・・まぁ、同じだったか。」

バサッ。

健人は、枕に顔を押しつけた。

「あーーー!!!」

そして、枕に向かって叫ぶ。

「誰かに相談しよう・・・最近、勉強が疎かになってるな。

・・・こんな状態じゃぁ、無理に頑張っても身にならんな。」

小さく呟くと、健人は考えるのをやめ、眠りについた。



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