15.熱愛報道再び。
「と、言う訳なのよ。余計な事をして本当にごめんなさい。」
「茜〜。」
詩音は、機嫌を直したのか、茜に抱きつく。
「ちょっと、まだ腰が本調子じゃないのよ〜。」
ヨレヨレしながら、茜は訴える。
「ご、ごめん。」
「私じゃなくて、健人くんに抱きつけば良かったのに。」
「む〜。健人くんにしがみついたのは許してないからね〜。」
詩音は膨れている。
「ごめんって。あれはどうしようもないかったのよ。まぁ、詩音が好きになっただけあって、素敵な人ね。」
詩音は黙って茜を睨む。
「ダメだよ?」
「あはははっ!大丈夫、大丈夫。
私、龍人の事が好きだから。知ってるでしょ〜?あいつ、チャラい様に見えるけど、今回の作戦考えた時、合コンなんか行った事ないって、すごい緊張してた。
今日は頑張ってたし、褒めてあげないとね〜。」
茜は、嬉しそうに龍人の事を話す。
「茜は、龍人くんと付き合わないの?」
「う〜ん。私も一応アイドルだしね。
アイドル卒業したら、考える。」
「誰かに取られるかもよ?」
「恐いこと言わないの。」
心配している事を見抜かれた様で、茜は焦った様子だ。
「私ね、今日茜がもしかしてと思うと、健人くんが取られるって思うと、どうしようもなくなって、あんな態度とっちゃた。私の事思ってくれた茜にも悪い事した。ごめん。」
「いいのよ〜。でも、健人くんの事は、考えないとね。」
「うん。私はどうしたらいいのか、まだ分からない。」
「そうね〜。近々、2人で話してみたら?」
「・・・そうだね。でも、健人くん、家事代行も来てくれないから、話すきっかけがないんだ。」
「無理やり作った結果がこれだしね〜。」
茜は頭を抱えた。
「じゃぁ、私こっちだから。ありがとう、茜。」
詩音は、茜に手を振る。
「うん!また!」
茜も笑顔で手を振った。
次の日、
「おはようございます。」
健人は、相変わらず、覇気薄く会社のドアを開ける。
「け!健人くーん!こ!これは!これは?」
健人を見るなり、店長は駆け寄り、腕をつかむと、テレビの前に引っ張る。
テレビの画面には、熱愛報道再び!
と大きく書かれている。
「いや〜!これは黒でしょ!黒!」
コメンテーターが叫ぶと、前回撮られた写真と、昨日、健人が詩音の腕を掴んでいる写真が並べられる。
「どう見ても同一人物でしょ!」
よりによって、2枚の写真の健人は同じ服を着ている。
「詩音ちゃん!もう言い逃れできませんよー!」
コメンテーターはカメラに向かって叫ぶ。
「ただ、新しい写真の詩音ちゃんは泣いてる様に見えるよね〜。」
コメンテーターは、俯く。
そして、再び顔を上げ叫ぶ。
「この男!詩音ちゃんを泣かせるなんてけしからん!」
「まぁ、まぁ、何があったかは分かりませんし。」
キャスターは、コメンテーターを落ち着かせようとする。
健人がテレビに気を取られていると、店長が叫び出す。
「健人くん!これだよ!熱愛あるの?あるのー!?」
店長は泣きそうだ。
「いえ、まだ無いです。」
「・・・まだ?」
「分からないんです。まぁでも、店長が恐れている様な事は起きないと思います。」
「あらあら。」
近くのイスに座る杏子は、笑う。
「健人くん、素直にならないと後悔してからじゃ遅いのよ?」
「杏子さん!何か知ってるんですかー?」
店長は、杏子にも詰め寄る。
「店長、大丈夫よ。2人共、ちゃんと考えて行動する子達だから。」
「・・・まぁ、杏子さんが言うなら。」
店長は、不安気に肩を落とし、店長室へと入っていった。
「杏子さん、俺、このままじゃダメなんだと思うんですがどうしようもなくて。」
「この報道は、タイミング的にはいいかもね。二人が歩き出すチャンスじゃないかな?もぅ一層のこと、お付き合いしていますー!とか詩音ちゃんが言ってくれたらいいのにね〜。」
杏子は笑う。
「それは難しいですよ。そもそも付き合ってないですし。」
健人は、渋い顔をすると、準備を始めた。
健人がそんなやり取りをしている時、詩音は、自宅で正座していた。
「詩音ちゃん!あれほど言ったのに!これどうすんのよー!」
マネージャーは、頭を抱える。
「ごめんなさい。」
ただ、ただ、詩音は謝る。
「熱愛は無いのよね!?」
マネージャーは、詩音に詰め寄る。
「・・・今は無いです。」
「今は、って?あぁ〜頭がクラクラしてきたわ。」
マネージャーは、詩音の前に正座する。
「事務所の方で対応は考えるから、とりあえず今日の現場に向かうわよ。」
マネージャーは、詩音の肩を優しく叩く。
「待って。大切な話があります。」
「・・・詩音ちゃん、私をストレスで殺すつもりね。」
「・・・結果的にそうなるかも。」
マネージャーは姿勢を正した。
「私、このままお仕事を続けるのは無理です。」
「ハァ。で?どうしたいの?」
マネージャーは、予想通りの展開に、肩を落とす。
「来月の、20歳の誕生日に、アイドルを引退する会見を開きたい。
そこで、健人くんが大切な人だって発表する。」
「それで?」
「アイドルは辞めるけど、女優は続けたい。無理かな?」
「ハァ。事務所と相談してみるわ。」
「ありがとうございます。」
詩音は、深々と頭を下げた。
詩音は、健人への気持ちを伝えるため、熱愛禁止のアイドルを辞める決断をした。
・・・健人くんは、受け入れてくれるだろうか。
不安を振り払う様に詩音は首を横にふる。
詩音は、健人との楽しかった日々を思い浮かべて、撮影現場へと向かった。




