表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
約束〜父親の会社が倒産したので家事代行のバイトを始めたら、アイドルとお近づきになりました。  作者: 蓮太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/19

13.憂鬱な時間。

「おはようございます。」

健人は、力の無い声と共に、会社のドアを開ける。


「け、健人くん!大変だ!」


「どうしました?」

健人は虚ろな目で店長を見る。


「あ、いや、大変・・・なんだが、

まず、健人くんは大丈夫なのか?」

目の下にくまを作り、明らかに覇気のない健人を、店長は心配そうに見つめる。


「あ、はい。」

健人は、俯くと、店長の大変な話題とやらを聞くことも忘れ、現場に向かう準備を始める。

店長は、心配しながらも、健人の後ろをついて回る。

「健人くん、体調の悪そうな所、申し訳ないんだが、昨日、詩音ちゃんの様子はどうだった?」


「何でですか?」

健人は、虚ろな目で店長を見る。


「いや、詩音ちゃん、無断欠勤してるみたいで、自宅のインターホンを鳴らしても留守なのか応答も無いみたいで、マネージャーさんが困って聞いてきたんだよ。」


「そうですか。家にいるんじゃないですか?」

健人は、詩音の事が心配ではあったが、自分の事で精一杯だった。

ヨレヨレの体を無理やり動かし、健人は現場へと向かった。


お客さんに心配されながらも、何とか作業を終え、会社に戻った。

「お疲れ様です。」

健人が会社に入ると、店長と杏子が話ている。

「あっ、いいとこに。」

杏子は、健人に手招きする。

「杏子さん、何ですか?」


「・・・ハァ。あなた達、絶対何かあったわね。」

健人の様子を見て、杏子は確信した様だ。

「詩音ちゃん、連絡取れないみたいで、この後家にいってみようと思うんだけど?」


「杏子さん・・・行ってやって下さい。

俺、疲れたので失礼します。」

健人は、道具を片付けると、ヨレヨレとしながら、会社を出た。


「健人くん!待って!」

ゆっくりと歩く健人を、杏子が追いかけて来た。

「杏子さん。どうしたんですか?」


「健人くん、そこのベンチで少し話しましょう?」

杏子は、公園のベンチを指さした。


「別に構いませんが。」

健人は、俯きながら、杏子の後ろを歩き、ベンチに座った。


「健人くん、詩音ちゃんからは、健人くんの家に詩音ちゃんが行った日までの事は聞いてる。

・・・昨日、何かあったのよね?」


「ありました。もう、ダメなんだと思います。」


「詳しく聞かせてくれない?」

杏子は、健人に詰め寄る。


「あぁ、まぁ。昨日・・・」

健人は、昨日の出来事を杏子に話した。

「俺、詩音のちゃらんぽらんな振る舞いにムカついてしまって・・・泣いてる詩音を突き放して・・・もうきっと、詩音も愛想つかしたと思います。」


「そう。確かに、詩音ちゃんのそれは良く無いわね。自分の気持ちだけを押し付けて来られたら、私も我慢できないと思うわ。」


「・・・俺に恋愛経験があれば、許せたかもしれない。

でも、俺にとって詩音は初恋なんです。

だから、許せなかった。

・・・許したかった。」

健人は、静かに俯く。

膝の辺りを涙が濡らす。


「そっか。そうだよね。

健人くん、しばらく考えるべきだよ。

まだ結論を出すのは早い。

落ち着いたら、考えなさい。

年長者からのおせっかいなアドバイスよ。」


「ありがとうございます。」


「さっ、そろそろ詩音ちゃんの所にも行ってみるわね。

早く行かないと、店長から催促の電話がありそうだし。」

杏子は立ち上がり、公園を出ようと歩き出す。


「杏子さん!ありがとうございます。」

健人は深々と頭を下げた。


「がんばれー!」

杏子は、笑顔で手を振った。



ピンポーン。

その後、杏子は詩音のマンションを訪れ、エントランスのインターホンを押した。


ウィーン。

応答無く、自動ドアが開く。

「ふふ。やっぱりいたみたいね。」


杏子が詩音の部屋のドアの前に立つと、鍵が空く音がする。

「入るわね〜。」

静けさが包む廊下を杏子はゆっくりと進み、リビングのドアを開けた。

杏子は辺りを見回すが、詩音の姿は無い。

「詩音ちゃん?」


「杏子さん。」

力無く声がして、杏子が足元を見ると、ドア横に設置されたインターホンのモニターの下に、詩音は小さくうずくまり座っていた。

「まぁ。」

杏子は少し驚いた。

「そんな所にうずくまってないで、ソファーにすわりましょ?」

杏子が手を差し出すと、詩音は手を取り、力無くたちあがった。

「お茶入れるわ。さっ、ソファーに座りなさい。」


「うん。」

詩音は言われるがままに、ソファーに座る。


キッチンに立つ杏子は、詩音を心配そうに見つめながらも、手際良く温かいお茶を用意した。


コトン。

テーブルにカップが2つ置かれる。

詩音は無言で、カップからたつ湯気を見ている。

「詩音ちゃん、大丈夫?」


「・・・大丈夫・・・じゃないかな?

初めて、お仕事を無断やすんじゃったよ。」

詩音は、膝を抱えて俯く。


「健人くんとさっき話したわ。」


「えっ!?健人くんは!健人くんは何て?」

詩音は狂った様に、杏子に詰め寄る。

「分かった、分かった、落ち着いて!」

 

「ごめん。」

杏子がなだめると、詩音はまた俯く。


「健人くんもね、言葉が足りないから、私も彼の気持ちをちゃんとくみ取れた自信はないんだけどね、詩音ちゃんは、健人くんにとって、初恋なんだって。

初めて好きになった人の中に、自分以外の男の人がいる。それは純粋な健人くんには耐えられないんだと思う。そんな状態の詩音ちゃんに言い寄られた事が、許すことができなかったんだと思う。

まだ、大丈夫。

私はそう思う。」


「・・・ありがとう、杏子さん。」


「まぁ、今のままじゃダメ。

これから、詩音ちゃんがするべきは、けいくん?に会って、健人くんの事だけ見れるって言い切れる様にするか、何かの行動で、けいくんじゃなくて、健人くんだって示す。

どちらかじゃないかな。

まぁ、けいくんを選ぶパターンもあるかもだけど。」


「・・・そうだね。単純な話なんだね。

ふさぎこんでても、何も変わらない。

・・・私、考えてみる!」

詩音の目に光が戻った。


「がんばれー!」

杏子は、詩音を抱きしめた。

「うぅ。ありがとう杏子さん。

杏子さんも忙しいのに、私なんかの為に。」


「詩音ちゃんは特別なのよ。

子供のいない私にとって、詩音ちゃんは娘みたいに思ってるのよ?

健人くんも同じ。

二人には幸せになって笑ってて欲しいわ〜。」


「杏子さん。私、頑張って考えるね。」


「頑張って!さぁ、そろそろ帰ろうかしらね。」


「うん。ありがとう。」


詩音は、杏子を玄関まで見送ると、リビングにもどり、スマホを手にとる。

「もしもし。今日は本当にごめんなさい。明日からはちゃんとお仕事行きます。」

詩音は、マネージャーにお詫びの連絡を入れる、


あ〜良かった〜。

寿命が縮まったわよ!

今日は、体調不良で誤魔化したから、明日からは頼むわよ?


「はい、ごめんなさい。

・・・理由は聞かないんだね。」


大体分かるわよ!

熱愛報道は勘弁してね?


「うん。その事なんですけど、少し考えて、また相談させて欲しいです。」


・・・嫌な予感しかしないわ。

まぁ、とりあえず、明日からまたよろしくね!


「はい。よろしくお願いします。」


プープー。


「ハァ。私の気持ち。どうしたいんだろう。」

詩音は、ソファーに座ると、物思いにふけった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ