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格子状の王

静まり返った兵糧管理区の工房。食パンの大量生産を終え、俺とスノウは二人きりになった。一息ついたところで、スノウが尻尾をパタパタと振りながら尋ねてくる。

「ねえねえ、ケンタ! 次は自分たちのために作るんでしょ? 何を作るの? またふわふわのやつ?」

 その問いに、俺はこれまでの冷静なパン職人スタイルが崩壊するほどの、異常なハイテンションで振り返った。

「フッフッフ……よくぞ聞いてくれたスノウ! 次に焼くのは、パン界の王、甘味と食感の絶対君主――『メロンパン』だッ!!」

「め、めろん……ぱん?」

 スノウが後ずさりするほどの勢いで、俺は熱弁を振るう。

「そうだ! 外はカリッカリのクッキー生地、中は羽毛のように軽いパン生地。その相反する二つが口の中で出会うとき、人は幸福の絶頂に達すると言われているんだ!」

 俺は鼻歌を歌いながら、すぐに作業に取り掛かった。

「見てろスノウ、メロンパンは二つの魂を合体させる料理なんだ。まずは上のクッキー生地を作る。常温に戻したバターと砂糖を、空気をたっぷり含ませるように白っぽくなるまで練り上げる。そこに卵を数回に分けて加え、薄力粉をさっくりと混ぜ合わせるんだ。ここでワンポイント。生地を一度冷蔵でしっかり寝かせる。こうすることで、グルテンを落ち着かせ、焼いたときにダレず、あの独特の『サクサク感』が際立つんだ」

 クッキー生地を寝かせている間に、土台となるパン生地を仕上げる。

「こっちは究極に柔らかく、リッチな配合にする。そして分割したパン生地を、冷やしておいたクッキー生地で包み込むんだ。手のひらの体温でバターが溶けないよう、手早く、かつ優しくね。表面にグラニュー糖をこれでもかとまぶして、スケッパーで格子の溝を深く、等間隔に刻む。これが焼き上がった時の美しい『ひび割れ』になる」

 俺は『聖域の焼成ホーリー・ベイク』を起動し、絶妙な温度調整で石窯へ放り込んだ。数分後、バターと砂糖が熱でとろけ、香ばしく色づく最高の匂いが工房を満たす。

「……できた。至高のメロンパンだ」

 焼き上がったのは、表面がダイヤモンドのように輝き、一口齧れば崩れてしまいそうなほど繊細な黄金のパンだった。

「わあああ! なにこれ、宝石みたい!」

「さあ、召し上がれ。熱いうちにいくのが一番だ」

 黄金色のメロンパンを二人でガブリと齧る。

【至高のメロンパンを摂取しました】

【付与能力:精神の完全平穏リラックス、魔力回復速度UP(大)】

「……ふあぁぁ……ケンタ、おいしい。外がカリカリで、中がふわぁってしてて……なんだか、お昼寝してるみたいに幸せ……」

 スノウがふにゃふにゃに蕩けた顔で、幸せそうに頬を緩める。

 その顔を見て、俺は心の底から安堵した。

「実はさ。食パンをあれだけ焼いて、スノウも俺も身体がガチガチだっただろ? だから、この疲れを芯から癒やしてくれる甘いパンを食べさせたかったんだ」

 俺の言葉に、スノウは「ケンタ、私のために……?」と目を潤ませて、また一口、大切そうにパンを頬張った。

(……ああ。本当に、このパンを焼いてよかった。こういう顔が見たかったんだ)

 俺はこの笑顔が見たくて、パン職人をやってるんだ。戦いも政治も、レベル上げも二の次だ。スノウのこの顔を守れるなら、俺は何度でも、どんなパンだって焼いてやる。

【ケンタの現状ステータス】

名前: ケンタ

• Lv: 1

• HP/MP: 15 / 800

• ATK/DEF/MP/LUK: 5 / 3 / 800/99

• スキル:

• 魂の成型 Lv. 42

• 神速の発酵 Lv. 38

• 聖域の焼成 Lv. 40

• 至高シリーズ: 丸パン、クロワッサン、ハンバーガー、食パン

• 次の獲得スキル:万物真実の食覚

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