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第6話(後半) 「再会の晩餐」


 グラトニーの振るう鎌が、湊のコートを裂き、隠していた左腕を露わにする。

 剥き出しになった異形の腕が、赤黒い蒸気を上げてグラトニーの「捕食」を拒絶するように蠢いた。

「ハハッ、すごい! その腕、ボクが知ってるルシアンの力じゃない。……君のドロドロした執念が、神様の力を腐らせて混ぜ合わせたんだね。最高に美味しそうだよ!」

 グラトニーの背中から伸びる触脚が、湊の四肢を縛り上げ、空中へと吊り上げた。

 抗おうとする湊だが、グラトニーの能力『絶望の胃袋アビス・ガスト』は、触れた者のエネルギーを強制的に吸収し、脱力させる。

「湊、逃げて……ッ!!」

 リナの叫びも、グラトニーの歪な笑い声にかき消される。

「ねえ、知ってる? エデンの上層部はね、ボクに『美味しい記憶』をたくさんくれるんだ。でも、どれだけ食べても満たされないんだよ。君を、君のその絶望を丸ごと飲み込んだら、ボクは満足できるかな?」

 グラトニーが湊の顔に手を伸ばす。そのレンズ越しに、湊は見てしまった。

 狂気の色に染まっているが、確かに見覚えのある――あの、真っ直ぐで優しかった瞳を。

「……嘘、だろ」

 湊の全身から力が抜ける。

 目の前の怪物が、ゆっくりと仮面バイザーをスライドさせて開いた。

 そこにいたのは、三年前、エデンの「浄化」の最中に湊がその手を離してしまい、死んだはずの親友――**「カイト」**だった。

「……かい……と……? 生きて……たのか……?」

 だが、カイトと呼ばれた少年の瞳には、再会の喜びなど欠片もなかった。

 ただ、底なしの飢餓感だけが渦巻いている。

「カイト? ……ああ、懐かしい響きだね。でも、今のボクの名前は『グラトニー』。エデンのゴミを食べて、綺麗にするのがボクの仕事なんだ」

 カイトは楽しげに、湊の喉元に指先を這わせた。

「あの時、湊がボクの手を離したから、ボクは暗い穴の中に落ちたんだ。暗くて、寒くて、お腹が空いて……。だから、ボクはエデンに自分を差し出したんだよ。何もかもを『食べる』ためにね」

 衝撃の事実。湊が『レナトゥス』として戦う原動力の一つであった「過去の罪罪悪感」が、最悪の形で肉体を持って襲いかかってきたのだ。

「……ごめん……カイト……」

「謝らなくていいよ、湊。代わりに……君の全てを、ボクにちょうだい?」

 グラトニーの鎌が、湊の胸の『エンヴィ・コア』を狙って振り下ろされる。

 湊の左腕が、絶望的な共鳴を上げた。

 奪ったセラフィムの力が、かつての親友の声に反応し、湊の肉体を内側から激しく侵食し始める。

 親友との再会。それは、湊が人間を捨てて怪物になるための、最後の「引き金」だった。

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