意志を刻む武器
焼け焦げた地面に、膝をつくトワ。
マネキン・・・いや、“目覚めた存在”は静かに彼を見下ろしていた。
その瞳は、命じるのではない。ただ“待っている”ようだった。
セランは少し離れた岩に腰を下ろし、
黙って二人を見守っている。
「……再構刻って、どうすれば使えるんだ?」
トワが問いかける。
『すでに、君の中には“核”がある。
それを動かすのは、思考、感情、そして、意志』
マネキンの声が、脳内に直接響く。
『素材は問わない。君が“在る”と定義したものは、すべて変換可能。
必要なのは、ただひとつ、“刻む言葉”』
「刻む……言葉?」
『それが、再構に宿る“理念”だ。武器とは、“意志”の結晶だ。
さあ、己が道を貫く“初めの刃”を……口にしろ』
トワは周囲を見渡す。
焦げた鉄柱、砕けた瓦礫、溶けかけたガラスの破片。
それらを手に取り、胸に抱きしめるようにして、目を閉じた。
こんな世界で、何を“貫く”べきか。
人を疑うか?
奪うか?
それとも、自分だけが生き延びるか?
否だ。
「……俺は、壊れたこの世界を……」
拳を握る。骨が軋む。呼吸が熱を帯びる。
「“繋ぎ直す”刃がほしい!」
瞬間・・・
ゴゴゴゴッ……!
空気が震えた。破片が浮き、重力を無視して渦巻く。
それはまるで、“世界”が応えたかのように。
鉄、石、光の粒子が一点に集まり
バチィッッ!!
眩い閃光とともに、トワの手の中に“それ”はあった。
一本の細身のロングナイフ。
黒鉄の刃身に、薄く刻まれた何かの暗号?記号?
「……再接“再び、繋ぐ”……?」
セランがぽつりと呟く。
マネキンは、ほんの僅かに口元を動かした。
……それが笑みかどうかは、誰にもわからなかった。
『刻印完了。……これより、“君の道”が刻まれていく』
トワはナイフを持ち上げた。
手に吸い付くように馴染む感触。
だがそれ以上に、胸の奥に確かな手応えがあった。
これは、ただの武器じゃない。
「信念」を形にした、“始まりの刃”だ。
「ありがとう……これで、俺は……」
彼は、もう迷わなかった。