再構刻ノ刻(後)
「俺が……再構者……?」
トワは自分の掌を見つめた。
血も、汚れも、そこにあるはずの“現実”は、光に包まれて消えていく。
『記録者であり、再生者であり、破壊の反対……“創造”を与える者。』
その言葉とともに、トワの脳裏に“何か”が流れ込んできた。
言語ではない。映像でもない。
無数の可能性の“素材”・・・朽ちた武器、壊れた道具、粉砕された建造物、感情のかけら……
あらゆる“ゴミ”が、何かに生まれ変わろうと、蠢いている。
「頭が……熱い……いや、冷たい……どっちだ、これ……!」
『お前の身体は、変わろうとしている。拒むな。受け入れろ
“ここ”にいる者としての、お前自身を。』
「俺は……」
息をのむ。
トワの肉体に、再構刻の“痕”が浮かび上がった。
鎖のように巻かれた刻印が、右腕から肩、そして背にまで走る。
セランが、少し離れた場所からそれを見ていた。
その表情には、恐れはない。ただ、何かを“確信”するような静かなまなざし。
「これが……俺の、“チカラ”……?」
『否。これは始まりにすぎない。貴様が望むならば、さらなる再構刻を我に許可せよ。』
「再構刻……? お前が、“俺に聞いてる”のか……?」
『我は、再構刻の核核。
貴様が真なる構築を許可せぬ限り、再構成は為されぬ。』
トワは、グッと歯を食いしばった。
この力は・・・未知すぎる。だが、必要だ。
この異常な世界で、生きるためには。
「……ああ。許すよ。お前の“再構刻”、見せてくれ……!」
マネキンの身体から、光が溢れた。
その姿が、わずかに“変化”する。
動けないはずの関節が、ギギ……と音を立てて動き出し・・・
『再構刻、起動確認。制御ユニット稼働。
貴様の命令を、受け入れた。』
トワの前で、沈黙していた“マネキン”が一歩、確かに踏み出した。
ザリ……。
その一歩が、世界に響くような感覚だった。