表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/22

再構刻ノ刻

もう立てない。

トワの膝が崩れる音が、瓦礫に鈍く響いた。


「くそっ……なんで、俺が……!」


全身が痺れている。

背中から打ちつけた鉄板の感触すら、もう感覚にない。


目の前には、さっき倒したはずの“怪物”

異様に膨張した体躯、どろどろに溶けた皮膚の“何か”が、まだ蠢いている。


「しつこい……んだよ、化け物がっ……!」


トワは拳を握ろうとしたが、指先すら動かなかった。

短剣は砕けていた。


 


 カラン……


背後で、小さな金属音がした。

振り向けば、“あれ”がいた。


 


 無表情のマネキン。


いつからそこに?

いや、そもそも、あいつはずっと、ずっと後ろから付いてきていた。


「……お前、なんなんだよ」


無言。

だが確かに、“こっちを見ている”。


ぞわ、と背筋をなぞるような感覚が走った。


その瞬間・・・トワの脳内に、声が響いた。


 


「再構刻ノ刻、至ル。

  問ウ。“我ニ、再構刻ヲ許スカ?”」


 


「……は?」


目の前のマネキンは何も言っていない。

けれど、“脳に直接”響いたような──そんな錯覚じゃない。これは、現実だ。


 


「俺に、問いかけてる……?」


トワは目を見開いた。

マネキンはただ、じっと佇んでいる。動かない。喋らない。だけど


 


「答エヨ。“汝ハ、我ニ触レ、再構刻スル意志アリヤ”」


「っ……そんなの、わかんねぇよ……!」


混乱が、怒りに変わる。


「意味わかんねぇんだよ……!なんで俺なんだよ!

 俺はただ、気づいたらこんな世界にいて、ただ生きたくて……!」


拳を地面に叩きつける。


「それだけなのに……!!」


 


静寂。


マネキンの“視線”だけが、変わらずトワを見据えていた。

そして、また、脳に言葉が届いた。


 


「触レロ。“再構刻”ノ刻ハ、今此処ニアリ。

  ソレハ、“運命ノ連鎖”ヲ導ク鍵トナル」


 


「……再構刻……」


トワの指が、かすかに動く。


ふらつく腕を伸ばし、マネキンの胸部に、そっと、触れた。


その瞬間、


世界が、変わった。


視界が焼ける。

頭の奥から、雷が走るような衝撃。

鼓動が速くなる。いや、爆発するようなリズムが脈打つ。


 


「なに、これ……!?身体の中が……ッ、燃える……!」


 


その手から光が奔る。

マネキンの体表に、“文字”のような、回路のような黒い紋様が浮かびあがった。


その一部が、トワの腕へと流れ込む。


痛み、苦しみ、でも・・確かな、“力”。


 


「我ノ名ハ、“ナレ=ルフェクト”

  “仮面なき傀儡” 封印されし《黙示ノ王》」


「……ルフェクト……?」


 


「汝ノ覚醒ヲ、124年、待チ続ケタ。

  ……此処ヨリ先、汝ハ“再構刻者”トナル」


 


最後の言葉が、鋼のような響きで刻まれた。


「最初ノ“王”ト成レ。トワ=ミル=ネイム」


 


トワは、気づけば立ち上がっていた。

疲労も痛みも、どこかに消えていた。

ただ、握る拳に、かつてない力が宿っていた。


 


目の前の“異形”が再び襲いかかる。


 


「……なら、試してみるか。俺の“再構刻”ってやつをよ──!!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ