ふたりの旅路、そして最初の問い
がれきの街を抜け、焼けただれた鉄柱を越える。
降り積もった灰の道に、足跡がふたつ。
冷たい風が吹き、乾いたガラスの器のようなものがカランと転がった。
沈黙が続く。
でも、不思議と気まずさはなかった。
「……ありがとう。連れてきてくれて」
先に口を開いたのは、セランだった。
その声は遠くから届くような、空気にとける優しさだった。
トワは少しだけ笑って、「こっちが礼を言いたいくらいだよ」と返した。
「俺、まだこの世界のことも、自分のことすらちゃんとわかってなくてさ。
君みたいに“自分で決められる”って、すごいなって思ったんだ」
「決めてるわけじゃないよ」
セランは足を止めて、少しだけ空を見上げた。
「……ただ、どこかに“呼ばれた”気がしただけ。あなたと一緒なら、見える気がしたの」
「何が?」
「この世界の正体」
トワが問いかける。
「隊長に何か指示されてた?」
セラン
「ううん、そんなことないよ。自分で決めたんだもん。」
風がふたりの間を通り抜ける。
それ以上、彼女は語らなかった。
けれど、トアはふと思った。
たった一言のやりとりに、どうしてこんなに“救われた”ような気持ちになるのかと。
「……名前、聞いてもいい?」
「セラン。セラン=エルファリエ」
「俺は、トワ。トワ=ミル=ネイム」
そう言って、トワは手を差し出した。
握手を交わすような国じゃない。
けれど、セランはほんの少し微笑んで、その手を取った。
「よろしく、トワ。……ここからが、本当の始まりだね」