ひとつ火を囲む
火は、また少しだけ強くなっていた。
誰かが枯れ枝をくべたのだろう。
その周囲に、8人の男女──そして、トワがいた。
輪の中。
たったそれだけのことなのに、心臓の鼓動が微かに温かかった。
「ふっ、見たか今の顔。完全に“馴染んで”やがる」
「そりゃあ、あんな剣渡されたら、もう絆ってやつだろ」
男たちが笑う。
女たちは、穏やかな目でトワを見ていた。
そして、一人の女性が近づいてくる。
銀色の髪を三つ編みにし、頬にかすかな斑文を持つ──種族不明の彼女。
彼女は、まっすぐトワの前に座り、言った。
「あなたは、もう“私たちの仲間”だよ」
その言葉は、重くも、自然だった。
まるで、元から決まっていたことのように。
⸻
次に、屈強な腕を持つ短髪の男が、
酒瓶のような容器をどんと地面に置いた。
小さな焚火を囲む輪──それは、ただの野営じゃなかった。
どこにも属さない者たちが、火を中心に円を成す。
「お前がどこから来たか、何者かなんて関係ねぇ。
この火を囲んだ時点で──“円”の一部だ」
そのとき、火が一瞬だけ揺らいだ。風のせいじゃない。
誰もが、無言でその揺らぎを見つめる。
そして──その“落ち着いた声の男”が静かに口を開いた。
「火が絶えない限り──いつかまた、円は回り出す。
……それが、“ここ”で生きるってことだ」
その言葉に、誰かが笑った。
誰かが、黙って火に木の枝をくべた。
そして全員が、“仲間が増えた”ことを理解していた。