表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/22

ひとつ火を囲む

火は、また少しだけ強くなっていた。

誰かが枯れ枝をくべたのだろう。


その周囲に、8人の男女──そして、トワがいた。


輪の中。

たったそれだけのことなのに、心臓の鼓動が微かに温かかった。


「ふっ、見たか今の顔。完全に“馴染んで”やがる」

「そりゃあ、あんな剣渡されたら、もう絆ってやつだろ」


男たちが笑う。

女たちは、穏やかな目でトワを見ていた。


そして、一人の女性が近づいてくる。


銀色の髪を三つ編みにし、頬にかすかな斑文を持つ──種族不明の彼女。


彼女は、まっすぐトワの前に座り、言った。


「あなたは、もう“私たちの仲間”だよ」


その言葉は、重くも、自然だった。


まるで、元から決まっていたことのように。



次に、屈強な腕を持つ短髪の男が、

酒瓶のような容器をどんと地面に置いた。


小さな焚火を囲む輪──それは、ただの野営じゃなかった。

どこにも属さない者たちが、火を中心にえんを成す。


「お前がどこから来たか、何者かなんて関係ねぇ。

この火を囲んだ時点で──“円”の一部だ」


そのとき、火が一瞬だけ揺らいだ。風のせいじゃない。

誰もが、無言でその揺らぎを見つめる。


そして──その“落ち着いた声の男”が静かに口を開いた。


「火が絶えない限り──いつかまた、えんは回り出す。

……それが、“ここ”で生きるってことだ」


その言葉に、誰かが笑った。

誰かが、黙って火に木の枝をくべた。

そして全員が、“仲間が増えた”ことを理解していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ