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Have a life
海外のキャンパスは規模が違う。
広大な敷地に驚く恵子の肩を、誰かの手が軽快に叩いた。
『けいこ、そろそろ入学式だよ』
現地で世話になっている女性の姿に、恵子も親しげな笑みを浮かべている。
「ありがとう、キャシー。これが終わったら向かうね」
『熱心だねぇ。なら先に行っとくよ!』
カメラを持ち上げた恵子に、キャシーは慣れた様子で背を向けた。
そのまま去って行こうとしたキャシーだが、何かを思い出した様子で振り返ると、大きく片腕を上げている。
「Have a nice day!」
良い一日を願う挨拶に、恵子も手を上げ返す。
恵子の今日があるのは、とあるヒーローがいてくれたおかげだ。
抜けるような青空を見上げ、恵子は輝かんばかりの笑顔を思い浮かべていた。
今日も明日もその先も、命が続く限り生きていく。
澄み切った夏の空を写真に収め、恵子は誰にともなく呟いていた。
「Have a nice life」




