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傀儡怪人、恋をする  作者: 橋比呂コー
幽鬼ファントムカイラインの脅威
36/42

ドラグラスVSアマテラス&ツクヨミ(?)

 ハクトが指定した地点に到着したが、特に不審な存在は確認できなかった。ただ、攻撃を受けた痕跡はあり、ガードレールが無残に破壊されている。

「こらー! 町を勝手に破壊してるんじゃない。悪さばっかしてないで、さっさと出てこい!」

 アマテラスが威勢よく呼び掛ける。遅れて合流したツクヨミとハクトも臨戦態勢をとる。


 やがて、突風が彼女たちを襲った。先ほどまで無風だったのに、不自然極まりない。乱れた髪を整え、ハッと空を見上げる。

 翼を生やした人間がゆっくりと降臨してくる。魔法少女の同胞ではないことは、邪悪な漆黒の翼の色が物語っていた。それに、そもそも少女ではない。眼鏡をクイッと直す様が形になっている、冷徹なビジネスマンのような風貌。


 過去に一度対峙したことがあるから、その姿は嫌でも脳裏に刻み込まれている。アマテラスたちはこれまで幾多のカイラインの怪物と戦ってきた。その中でも群を抜いた強敵であった。

「ドラグラス」

「よりによって、ヤバイのが出てきた」

 アマテラスでさえ、神妙に身構える始末だ。ドラグラスは鼻で笑うと、翼を格納する。


「正直、打算だったが、本当に釣れるとはな。貴様なら。まあ、ギリギリどうにかなるだろう」

「おい、今の間は何だ」

 ツクヨミがかみつくが、ドラグラスは無言で掌底を広げる。

「先手必勝! タイヨーパーンチ!」

 有言実行とばかりに、アマテラスは拳に炎を宿らせて突撃していく。あまりにも単調な物理攻撃。

「マフソン(障壁)」

 ドラグラスは魔法で壁を生成し、拳を受け止める。思い切り障害物を殴る羽目になり、アマテラスは手の甲をさする。


「アマテラス。相手は無謀に攻撃していては勝てない。作戦を練るべき」

「そっか。でも、どうする。あいつに通じるのって、合体魔法しかないよ」

 目配せする両者。すると、ドラグラスは再び翼を広げる。魔法少女たちをあざ笑うかのように、ゆっくりとその周囲を旋回する。そして、そのまま見当違いの方向に飛び上がっていく。


 突然の逃亡に鳩が豆鉄砲を食ったように固まる魔法少女たち。しかし、我に返るや、

「こら、逃げるな!」

 アマテラスは声を張り上げて追跡を開始する。

「相手から諦めてくれたのなら、追う必要はない」

「でも、あいつを放っておいたら、また悪さをするかもしれないよ。そうならないようにするのが、私たち魔法少女じゃん」

「うむ。一理あるか」

「僕は深追いは反対なんだけどねウサ」

 口々に言い合いながらも、目標は見失わない。


 と、いうよりも、ドラグラスはあえてゆっくりと飛翔していた。彼が全力を出せば、小娘たちなど一瞬で置いてけぼりにできる。思惑を達成するためには、彼女らにはきちんとついてきてもらわねば困るのだ。

 それにしても、飛行能力は持っていないのだろうか。ドラグラスは走るよりも飛ぶ方が早いのでそうしているだけだが、同時に、地上を走行するルートを参照しなければならないので、移動方向に制約ができる。鬱陶しさを覚えながらも、ドラグラスはとある地点へと誘導を続ける。


 移動中に決着がついていたら、作戦も元も子もなかった。だが、アスタリウスはそこまでヤワではなかったようだ。ろくに反撃できていないものの、未だ変身した姿のまま健在であった。


「あれは、例の怪物」

「テレビで見るよりも凶暴そう」

 ようやく追いついた魔法少女二人組が感嘆の声をあげる。ファントムカイラインはバス停の屋根の上に乗っかり、高々と遠吠えをあげている。怪獣映画の敵役同等の行動をしていることからして、自我を失っているのは間違いないようだ。


 その怪物から十数メートル先で、アスタリウスは肩を押さえて前かがみになっていた。綺麗な白銀のドレスは土埃で汚れている。苦悶の表情を浮かべており、いつ変身解除されてもおかしくはない。

「アスタリウスがピンチだ。早く助けなきゃ」

 アマテラスが駆け寄ろうとする。しかし、彼女の前でキューピットのような妖精が立ちふさがった。


「ちょっと、邪魔しないでよ」

「それはこっちのセリフさ。君らはハクトが管轄する魔法少女だろ。彼から聞いてないのかい。あいつはアスタリウスの獲物だって」

 大の字になって通せん坊するシェム。しかし、それで引き下がるアマテラスではない。

「でも、アスタリウスはボロボロじゃん。これ以上戦うなんて」

「三下が舐めた口言ってくれてんじゃん」

 満身創痍のはずが、雄々しく翼を広げる。その姿に、アマテラスは二の句も告げずに圧倒される。


「あんなの、あたし一人で十分だし。それに、助けてくれなんて、言った覚えはない」

「で、でも」

「とっとと失せな!」

 怒声を浴びせられ、アマテラスは後ろ足を踏む。その肩をツクヨミが叩く。

「あいつも、ああ言っている。無理に協力する必要はない」

 反論しかかったアマテラスだったが、ツクヨミはゆっくりと首を横に振る。

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