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傀儡怪人、恋をする  作者: 橋比呂コー
バイパラス出撃
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あんた本気?

 標的にされた当人は当惑を隠せなかった。今まで幾多の魔法少女を相手にしてきたが、ここまで堂々と宣戦布告されたのは初めてだった。とはいえ、狼狽えてばかりでは沽券に関わる。胸を張り、彼女の前に立ちふさがる。

「あくまでも俺が目的か。いいだろう。こちらも、如何としても貴様を倒さねばならぬからな。すべてはクーグッツ様のために」

 見得を切ったのだが、アスタリウスの反応は予想していたものと異なっていた。眉根を寄せ、不満そうに口を真一文字に結んでいる。


「あのさ。それ、本気で言ってる?」

「どういう意味だ」

「あんたが戦ってるのって、クーグッツ、とかいう奴のためなわけ?」

「貴様、クーグッツ様への無礼を働くなら許さんぞ」

「そうですわよ。なんと、非常識な」

 弾劾されるが、アスタリウスはつまらなそうに息を吐く。


「結局、あんたもあいつらと同じだったわけか。ようやく、本気でやりあえる相手かと思ったのに」

「随分とお高く留まってるじゃないか。俺が本気で戦ってないと言いたいのか」

「逆に聞くけど、あんた、本気であたしを倒したいわけ? 組織のために仕方なく、とかじゃなくて」

 その指摘にドラゴンカイラインは言葉を詰まらせる。なぜ、アスタリウスを倒そうとするのか。答えとしては一つしかない。しかし、それをぶつけたところで、彼女を納得させることなどできまい。


 押し黙っていると、アスタリウスは翼を広げて旋回する。

「待て。どこへ行くつもりだ」

「そうですわよ。逃げるなんて、許しませんわ」

「勘違いしないで。あんたらとやり合うのに興醒めしただけ」

「興醒め、だと。貴様、このまま俺が人間を襲ったとしても、見過ごすとでも言うのか」

「別にそうしてもいいよ」

 ノータイムで返された回答に、ドラゴンカイラインは我が耳を疑う。こいつ、人間のために戦っているのではないのか。


 そんな疑問を先取りしたようにアスタリウスは続ける。

「子供向け番組の主人公みたく、悪い奴らを倒す。そんなんで魔法少女やってるわけじゃないから」

 こうまで堂々と言い張られると、反論する言葉も見つからなかった。まるでもって価値観が違う。それでいて、気高さすら感じさせる威光。胸の内かさんざめいて仕方がない。


 アスタリウスは更に高度を上げていく。すると、

「妬ましき大蛇の饗宴」

 螺旋を描きながら、エネルギー体の大蛇が追いすがっていく。アスタリウスは急降下に転じたかと思うと、光の剣でそれを切り裂いた。


「あのさ、しつこいんだけど」

「しつこくて結構ですわ。ドラグラス様をさんざんコケにされて、あたくしが黙っていると思っていまして」

 「シャー」と威嚇音を顕わにしている。そもそも、バイパラスが怪物としての本性を覗かせる機会が皆無だ。それに加えて、露骨に敵意を剥き出しにしているのだ。槍が降ったとしてもおかしくはない。


 アスタリウスの魔法をまともに受けたことで、バイパーカイラインの余力はほとんど残されていない。魔法を放てるとしても数発が限度。このまま戦うのは自殺行為に他ならない。

「やめろ、バイパーカイライン。奴と戦ったところで勝機は薄い。一旦、体勢を立て直すのだ」

「申し訳ありませんわ、ドラグラス様。いくらあなた様の命令でも、あの小娘に一発お灸を据えないことには、腹の虫がおさまりませんの」

 言うが早いか、再度大蛇を飛ばす。今度は易々と回避される。そのまま離脱されてもおかしくはなかった。


 だが、アスタリウスはゆっくりと地表に降り立つ。その表情には喜々すら浮かんでいた。

「へえ、あんた、面白そうじゃん。そう来なくっちゃ」

 そして放ったのは「カドゥー・カル(光弾)」の魔法。対し、

「深淵に惑いし霧の障壁」

 両腕の蛇から大量の霧を噴出する。煙幕による目くらまし。そんな意味合いもある。だが、この魔法の本領は全くの別だ。

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