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傀儡怪人、恋をする  作者: 橋比呂コー
バイパラス出撃
20/42

アスタリウス参戦

「妬ましき大蛇の饗宴」

 それはバイパラスの魔法であった。漆黒のエネルギーは大蛇へと変貌する。蛇行しつつ急接近したエネルギー体の大蛇はアマテラスの足に絡みついた。


 その存在を認知した時にはもう遅い。悲鳴を上げる余地すら許さず、アマテラスの全身にからみついていく。

「アマテラス!」

 ツクヨミが助太刀に駆け付けようとするが、ホーネットカイラインが通せん坊をする。それに、奴を突破できたとしても、バタフライカイラインが待ち構えているのは自明だ。


 全身をぐるぐる巻きにされたアマテラスはけたたましい悲鳴をあげる。同時に、観戦していた人々からも悲壮の声があがる。増幅したネガニウムはバイパラスの手元へと集約されていく。

「ああ、ドラグラス様以上のネガニウムを集めてしまうとは。あたくしってば、罪深き女ですわ。これで魔法少女の首まで献上したら、身に余る褒美を手に入れられるでしょう。そうすれば、ドラグラス様と一生ハネムーンを過ごすことができます。そのために、お亡くなりになりなさいな。蛇毒による戦々狂々」

 その魔法を発動した途端、アマテラスの悲鳴が一層けたたましくなった。絡みついている蛇に魔力を注いで強化したのだ。直接的な肉体的苦痛に加え、じわじわと毒を流し込まれている。よしんば蛇から逃れたとしても、体内を蝕む毒を解除しないと、どのみちお陀仏だ。


 唯一の打開策は二人の魔法少女が合流すること。だが、それがままならないのだ。もはや、万事休す。誰もが諦めかけた時だった。

「カドゥー・カル(光弾)」

 どこからともなく魔法が発動する。次の瞬間、アマテラスにまとわりついていた大蛇が爆散した。


 ようやく体の自由を得たアマテラスは地面で四つん這いになる。毒のせいで立ち上がることさえままならない。それでも、力を振り絞って天を仰いだ。

 そこに顕現していたのは白銀の天使だった。ブロンドの髪を風に靡かせ、凛々しい顔で怪物を見据えている。

「ま、まさか、あんたは」

「魔法少女アスタリウス」

「そう、そうですわ。ようやくお会いできましたわね、アスタリウス!」

 平坦な調子で名乗った魔法少女に対し、バイパラスは恍惚と浮足立つ。自慢の魔法が一撃で破られたことなどどこ吹く風だ。


「アマテラス!」

 どうにかホーネットカイラインの攻撃をかいくぐり、ツクヨミはアマテラスの元に合流する。バイパラスの魔法から解放されたものの、顔面蒼白で息遣いも荒い。

「まずいウサ。バイパラスの毒に侵されているんだウサ。早く治療しないと危ないウサ」

「でも、私、治療魔法なんて使えない」

 ツクヨミが悔しそうに下唇を噛む。魔法少女が怪我を負った時のために、それ専門の魔法が使える伝手をハクトは用意してある。戦いで破壊してしまった建造物を再建する伝手と似たようなものだ。

だが、現場に急行してもらうにせよ、どうしても時間差が生じる。それまでアマテラスの体力が持つかどうか。


 ふと、彼女らの前に降り立つ影があった。背中の羽根を格納し、凛とした佇まいでアマテラスに視線を送る。とっさに、ツクヨミが庇うように立ちふさがる。

「邪魔なんだけど」

「こっちのセリフ。何しに来た」

 その少女、アスタリウスは面倒くさそうに髪の毛を掴む。

「その子を死なせたいなら、そこで棒立ちしてな」

 そう言って、指先に光を迸る。


 それでハクトはアスタリウスの意図を察したのだろう。「ツクヨミ、素直にどくんだ」と促してきた。不服そうに頬を膨らませるツクヨミだったが、支援者である妖精のハクトが考えなしに吐いたセリフとは思えない。しぶしぶながら従うことにした。


 魔法の標的を定めたアスタリウスは、ほんの一言、

「ヒートシュ・ショープ(回復)」

 と、呪文を唱えた。指先から放たれた光がアマテラスを包む。それは一見すると攻撃魔法のようでもあった。絶句したツクヨミはアスタリウスを睨む。


 だが、ほどなくしてアマテラスの表情が綻んでいく。苦痛の呻きも収まっていき、一分足らずの間に寝息すら立てるぐらいに快方に向かっていた。

「すごい魔法ウサ。僕の知り合いでも、これほどの回復魔法の使い手は見たことないウサ」

「やっぱりこれ、回復魔法なわけ? あまりに効きすぎて、催眠魔法かと思った」

「あくまで応急処置だから。毒は消せたと思うけど、本気は出せないんじゃない」

「助けてもらったのなら礼を言う。ありがとう」

「別にいいし。目の前で死なれたらうざいから、手出ししただけ」

 事もなげに言い放つと、アスタリウスは視線を別方向に移す。その先に居たのは、無論バイパラスだ。


「お仲間の治療に精を出すとは、お優しいことですわね」

「別に。それよか、あんたってカイラインの幹部よね。だったら、さっさとドラグラスを出してくれない。あいつとの決着がまだだから」

「あなたのようなお子ちゃまがドラグラス様の名前を口にすること自体がおこがましくってよ」

「うっさいし、おばさん」

「お、おば」

 バイパラスはこめかみを引くつかせる。本日二度目の攻撃に、怒声を浴びせなかっただけでも奇跡だ。

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