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傀儡怪人、恋をする  作者: 橋比呂コー
バイパラス出撃
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二体目の怪物

 二人の魔法少女は方々に回避する。だが、相手が巨大すぎるせいで、飛び回られるだけでも防戦一方となってしまう。

「逃げてばかりじゃダメだウサ。相手は図体がでかいから、こっちの攻撃も容易に当てられるはずウサ」

 ハクトの助言を受け、アマテラスはこくりと頷く。空中の敵に対抗するため、ガードレールの上に飛び乗った、


「くらえー!」

 突進してくるバタフライカイラインにパンチをお見舞いする。元の蝶を模しているのなら、その肉体は防御力に秀でているとは言えない。いくら巨大化しているとはいえ、アマテラスもまた変身したことで膂力が向上しているのだ。結果としては、人間が蝶を握りつぶすのと同等。そう思われた。


 だが、カイラインの幹部ともあろう者が、元の生物をただ巨大化させただけの怪物を繰り出して来るわけがなかった。

「フリー、フリー!」

 アマテラスの拳が怪物の本体を捉える。その直前、不可視の物体に攻撃が阻まれた。

「痛った。何これ、壁みたいのがあるじゃん」

「ならば、これで決める」

 ムーンワンドを構えたツクヨミが進み出る。ワンドから三日月型の光線弾が発射される。しかし、バタフライカイラインに到達する前に、軒並み弾き飛ばされてしまう。


 攻撃が通用しないという不可解な現象に戸惑う魔法少女たち。その様を達観し、バイパラスは哄笑をあげた。

「苦戦しているようですわね。それもそうですわ。バタフライカイラインは不可視のバリアを貼ることができますの。あなた方のチンケな攻撃では破ることはできませんわ」

「じゃあ、これはどうだ。タイヨーパーンチ!」

 アマテラスは勇んで必殺魔法を放つ。拳に炎を纏わせた殴打。過去に、幾多ものカイラインの怪物に引導を渡した一撃である。


「虫に炎は効果抜群。これならいけるはず」

 ツクヨミも太鼓判を押す。だが、炎は本体に接するより前に四散してしまう。それどころか、反撃の体当たりを受けてアマテラスは地面に叩きつけられる。

「そんなウサ。アマテラスの必殺魔法が効かないなんてウサ」

「当たり前でしてよ。あなた方のデータは既に収集済み。対策ならとっくの昔にできておりますの。それに、本当のお楽しみはここからですわ」

「どういう」

 ツクヨミは途中で言葉を切る。背後に不穏な気配を察したからだ。


 その一撃を回避できたのは野生の勘とでも言うべきだったか。とはいえ、未だに悪寒が収まらない。数秒でも反応が遅れていたら串刺しにされていた。

 ツクヨミが戦慄した理由はまさにそれだった。串刺し。バタフライカイラインの形状からはありえない攻撃だ。可能性があるとしたら口だが、あれは攻撃用の器官ではないだろう。第一、アマテラスと対峙していた怪物が一瞬のうちにツクヨミに切迫するなどありえない。


 すべての疑問は一瞬のうちに払拭される。黄と黒の二色で彩られた肉体。バタフライカイラインと同じく複眼だが、こちらはより凶悪な様相を呈している。羽はさほど巨大ではないものの、それよりも脅威は人間でいうところの右腕に装着されている針だ。本来ならば尻に装填してあるはずのそれを移し替えたのだろうか。それでも、そいつの元となる生物を推測するのは容易だった。

「スズメバチの怪物」

「ホーネットカイライン。あたくしの自信作第二号ですわ」

「ピアー!」

 バイパラスの紹介を受け、ホーネットカイラインは雄たけびをあげる。


「怪物を二体同時に出して来るなんて、聞いてないウサ」

「あらー。別に、二体同時に出しちゃいけないなんてルールはありませんことよ。それを言いますなら、そちらはいつも二人がかりで一体の怪物を相手にして卑怯じゃありませんこと」

 それを指摘されるとぐうの音も出ない。ともあれ、戦況としては最悪だった。


 バタフライカイライン単独でも手に余ると判明したばかりだ、それなのに、実力が未知数とはいえ、もう一体の怪物を繰り出されるなんて。

「ツクヨミ、今行くぞ」

 アマテラスが加勢に動く。しかし、進行方向をバタフライカイラインが塞ぐ。闇雲にパンチを繰り出すが、バリアを貫くに至らない。


 ツクヨミはツクヨミで、ホーネットカイラインの針を躱すのに手一杯だ。プロのフェンシング選手顔負け。いや、それを上回る勢いで刺突が放たれるのだ。加えて、回避に専念しているのは、勢い余った針がコンクリートの壁を貫通したのを目の当たりにしたからである。あんなものがまともに命中したら、魔法少女の加護で防御力が上がっていると言えども命の危機だ。


 二人の魔法少女が怪物に苦戦しているのを前に、妖精のハクトはあわあわと指をくわえることしかできなかった。あの二人の実力としては、協力して一体の怪物を倒せる程度。なのに、タイマンを強いられては勝ち目は限りなく薄い。

(せめて、あの魔法さえ出すことができれば、状況を打破できるウサが)

 そのためには、二人が合流する必要がある。しかし、怪物たちはハクトの思惑を見透かしているかのように、徹底的に分離させるように立ち回っている。


 それは、そのまま指揮官の思惑か。サディスティックにハクトに微笑みかけたのが解答だった。しかも、彼女はそれだけで満足していないようだった。

「なかなかアスタリウスが現れませんし、待ちくたびれましたわ。もし、魔法少女が命の危機に陥れば、特上のネガニウムを集められますわね」

 掌底にはどす黒いエネルギーが集約している。そして、ゆっくりとアマテラスへと腕を伸ばす。

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