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傀儡怪人、恋をする  作者: 橋比呂コー
バイパラス出撃
18/42

アマテラス、ツクヨミ、出撃

 突然現れた怪物により、人々は逃げ惑う。それを尻目に二人の少女が人気の少ない路地裏に集結していた。

「二人とも、遅いウサ」

「ごめん、ハクト。さっきまで学校だったからさ」

「私たちにも私生活はある。都合よくホイホイと出動できない」

「そうそう。部活から抜け出すの大変だったんだからね」

「うん。君たちの私情は把握している。ともあれ、早く変身するんだ」

 ハクトに促され、少女たちはポケットから勾玉を取り出す。


「高天原の神よ。我らの御霊を以て、悪しきを払わんと誓おう。八百万の柱の力、我らに授け給え。畏み畏みも白す。天・蓬・変・幻!

 勾玉を握りしめながら祝詞を唱える。すると、どこからともなく荘厳なメロディーが流れてくる。同時に無数の護符が少女たちの体を包んだ。


 少女たちの制服が光の粒子となり、ほぼ同時に魔法少女の装束が装着されていく。その間は一秒足らず。瞬きしたら衣装が様変わりしていたと言っても過言ではない。

 魔法少女アマテラス、ツクヨミへと変貌した少女たちは悪しき者が暴れる戦場へと天翔けていく。


 頃合いとしては、学業を終えた学生たちが帰路に着く頃だろうか。その足となる駅周辺は当然のことながら人でごった返す。狙いすましたように、バイパラスは駅のロータリーに光線弾を放った。


 もちろん、それで直接的に人間たちを攻撃するつもりはない。余波で怪我をしたのなら知ったこっちゃないが、目的はあくまでネガニウムだ。ほんの一撃だけでも、300ほどのネガニウムが回収できた。

「まったく、遅いですわね、魔法少女ども。この分ですと、持ち帰れないぐらいのネガニウムが回収できてしまいますわよ。まあ、それならそれで構いませんが。ドラグラス様へのいい手土産になりますわ」

 高笑いしながら人間どもを睥睨する。それにしても、やたらと遅い。連絡を入れたドラグラスでさえ到着していないのだ。彼が潜伏する学校は、よほど煩わしい場所なのであろうか。


 そんな取り留めのない考えを巡らせていた時だった。

「そこまでだよ、カイライン」

 威勢のいい声とともに、二人組の魔法少女が駆けつけた。待望の救世主の登場に、人間どもは色めき立つ。


「サンサン輝くお日様パワー! 日光の使者、魔法少女アマテラス!」

「ムンムン気分を吹き飛ばす! 月光の使者、魔法少女ツクヨミ!」

「二人合わせて! 魔法少女イザナミガールズ!」

 名乗り口上とともに、ハートやら星やらが飛び交う。どや顔を決める魔法少女たちだが、バイパラスの反応は嘆息だった。


「あなたたちですの。正直、お呼びではありませんわ。とっとと、アスタリウスを出してくださいまし」

「アスタリウス? なーんか、話題になってたよね」

「転校生が言っていたやつかもしれない」

「それはどうでもいいよ。バイパラス! 悪さをするなら、このアマテラスがお仕置きするかんね」

「それは月に代わってのポーズ。むしろ、私の方が合う」

 勝手に話を進められ、バイパラスは髪を弄る。そして、パチリと指を鳴らした。


「まあ、いいですわ。アスタリウスが来るまでの前哨戦として遊んであげますわ」

「言ったな、おばさん。甘く見たことを後悔させてやる」

「お、おば」

 バイパラスのこめかみに青筋が浮かぶ。ツクヨミが「あー」とうっかり給食をこぼした時のような声を出した。


「前言撤回しましょうか。頭を垂れて許しを請いなさい。そうすれば、お尻ぺんぺんぐらいで許してあげますわ」

「ねえ、ツクヨミ。このおばさん、なんか怒ってない」

「あまり挑発させてはいけない。女子中学生の尻を叩いて喜ぶ変態だから」

「ツクヨミ。余計に挑発してどうするウサ」

「よほど痛い目に遭いたいようですわね」

 ポキリと骨を鳴らす音がする。近くを飛んでいた野鳥が慌ててUターンしていった。


 このままバイパラスが先制攻撃を仕掛けるか。そう思われたが、激怒していたのが嘘のように大手を広げた。

「まあ、あなた方の相手はあたくしではありません。と、いうよりも、こやつで十分です。おいでなさい、バタフライカイライン」

「フリーフリー!」

 呼びかけに応じ、巨大な昆虫の怪物が姿を現す。


 巨大な羽を広げ、複眼をギョロリと見まわしている。口吻と呼ばれる独特の口を伸縮させ、膨張した胸を常に震わせていた。

「巨大な蛾の怪物」

「いや、あれは蝶」

「くそ、モ〇ラを出すなんて卑怯だぞ」

「いや、あれは。うん、蝶で合ってるか」

「戯言を言っていられるのも今のうちですわ。バタフライカイライン、遊んでやりなさい」

「フリー、フリー!」

 マンタという海洋生物がいるが、バタフライカイラインの体長はそれに匹敵する。そんな巨体が体当たりを仕掛けてくるだけでも十分に脅威だ。

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