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傀儡怪人、恋をする  作者: 橋比呂コー
バイパラス出撃
14/42

やかましいクラスメイト

 翌日のことである。どうにか授業をこなした龍二は机に顎を乗せて突っ伏していた。すると、眼前から覗き込む顔があった。正確には眼鏡であろうか。

「龍二氏。お疲れでござるか」

「りゅうじうじは言いにくくないのか」

「おお。ならば、龍二で良いか。最後の『うじ』を兼ねていて一石二鳥でござる」

「勝手にしろ」

 九朗はフフンと鼻を鳴らす。龍二は姿勢を正し、教科書を片付ける。


「時に、魔法少女についての調査で進展はありましたかな」

 唐突にそんなことを聞かれ、ギクリと喉を詰まらせる。だが、別におかしな質問ではない。彼は魔法少女の研究家を自称していたではないか。むしろ、有益な情報を聞き出せるかもしれない。


「そうだな。昨日、アスタリウスが戦っていたそうだが、知っていることはあるか」

「ゲキトラスなるカイラインの幹部が出現したと聞いたでござるな。うーむ、戦闘自体はすぐに終わったせいで、収穫はないでござるな。と、いうよりも、アスタリウス殿は立つ鳥跡を濁さずで、本当に情報が少ないのでござる。それに、この町の魔法少女といえば、アマテラスとツクヨミというのが定番でござるからな」

「そうなのか」

 あれだけ圧倒的な力を持つのだから、人間たちの間で話題沸騰になっているかと思っていた。彼に言わせれば、「知る人ぞ知る魔法少女」だそうだ。


「アマテラスとツクヨミについてだったら、いくらでも語ることができるぞ。例えば、キャットカイラインとの戦いとか」

「いや、別にいい。知りたいのはアスタリウスについてだけだ」

「おお、一途でござるな」

 口の前に手をかざして制止させる。キャットカルアとの戦いなら既に知っている。なぜなら、当事者だからだ。まだ魔法の扱いに慣れてなく、アマテラスが「タイヨーパンチ」で時計塔をへし折ったはず。


 魔法少女というよりも、九朗というクラスメイトには別の利用価値がある。この中学の生徒ならば、あの少女について知っているかもしれない。

「ところで、御子柴天音という少女について知ることはないか」

「な。御子柴先輩に絡まれたのか」

「なぜ、絡まれた前提になっている。だが、間違いではないな。放課後に校庭外れのプレハブ倉庫に来るよう言われている」

「か、完全に呼び出しでござる」

 戦慄する九朗。その所作が大げさすぎたのか、近寄ってくる二人組があった。


「どうしたのさ、太田くん。そんな歌舞伎役者みたいな真似して」

「ひ、日輪さん。落ち着いて聞いてほしいでござる。龍二が、龍二が、御子柴先輩から呼び出しを受けたでござる」

「な、なんですとー!」

 大声をあげるものだから、クラス中の注目を浴びてしまう。思わず、額に手を添えた。


「陽菜、大げさに騒ぎすぎ」

「騒ぐよ、こよみん。あの御子柴先輩だよ。学校サボって、反社会勢力を制圧してるっていう」

「そんなことをしているのか」

「いや、あくまで噂に過ぎない。でも、本当にやっているかもしれない」

「そうでござる。時代も時代なら、『おまんら、覚悟するぜよ』とメンチ切りながら、ヨーヨーで不良を倒していた先輩でござるからな」

「うん。本当にやってそう」

「それはない。確か、昭和のドラマの話」

 不良を倒していたかはともかく、ヨーヨーを飛ばしている様を想像すると、案外様になっていた。と、余計な妄想をしている場合ではない。


「聞く限り、一筋縄ではいかぬ先輩のようだが」

「そうだよ。触らない神にタニタ無しって言うでしょ」

「触らぬ神に祟りなし。体重計のメーカーは関係ない」

「そうともいう」

「おお、今の声真似、似てたでござる」

「どうだ。この声真似、昔から得意だったんだぞー」

「頼むからやめてほしい。幼稚園の時、男子と一緒にぞーさんやってたのを思い出す」

 元ネタを知らない龍二は話についていけなかったが、暦が恥ずかしそうに顔を隠しているあたり、女性としてはしたない行為に及んでいたのは想像に難くない。


「気になるのであれば、その先輩について探ってみるのはどうでござるか。御子柴先輩は確か三年一組だったはずでござる」

「なるほど、一理あるな」

 九朗の提案に龍二は柏手を打つ。級友であれば、もっと詳しい話が聞けるだろう。それに、そもそも御子柴天音がアスタリウスだと決まったわけではない。他にも有力な候補と出会えるかもしれないのだ。


「よし、私も一緒に」

「それは無理」

「なんでさ、こよみん」

「陽菜は部活の助っ人がある。今日は、サッカー部」

「ああ、そうだった。ごめんね、ボディガードできなくて」

 陽菜は手刀を切って謝ってくる。

「別に構わんが、マネージャーのようだな」

「陽菜は私がいないとまともに生活できない」

「ええ、そりゃ無いんじゃない」

「私が風邪で学校を休んだ時、すべての授業で忘れ物をしたのを、私は忘れない」

「ああ、そんなことあったね」

 遠い目をしているが、そんな調子で大丈夫かと第三者ながら心配になる。


「すまぬな、龍二。拙者も助けに行きたいが、今日は夕方から魔法少女クロニクルの新イベントが始まるのでな」

「ソシャゲなら別に構わないはず」

「舐めてもらっては困るな、月見坂氏。ランキングイベントは初動が重要。それに、今回の上位報酬のセレスティアSRは貴重な全体バフ持ちなうえ、ガチャ産とは衣装が異なっており」

「はい、長くなりそうだから、お口チャック」

 と、暦は無理やり九朗の鼻を掴んだ。「容赦ないな」と朗らかな陽菜だが、笑い事ではない事態に陥っているのは気のせいだろうか。

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