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傀儡怪人、恋をする  作者: 橋比呂コー
アスタリウスとの出会い
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動画配信者と謎の少女

 下校したその足で、龍二は央間駅近辺にあるゲームセンターに向かう。比較的大型の店舗で、クレーンゲームや音楽ゲームの他、一昔前のビデオゲームまで取り揃えられていた。

 店内は機械音が常に鳴り響いており、やかましい。それに、すれ違う人間たちは軒並み男性ばかりだ。女性客が集中的に訪れるエリアもあったが、そこは「男性客の立ち入りはご遠慮ください」との張り紙がしてあった。遠目から観察したところ、プリクラと呼ばれる機械で写真を撮っているらしい。


 変身前の情報が皆無な現状、非効率だが闇雲に聞き込みをするしかないか。そう思いつつプリクラコーナー付近をうろうろと歩き回る。そうしていると、店員からにらまれた。やっていることは確実に不審者だが、実際に不審者扱いされては面倒なことこの上ない。龍二はそそくさと別のエリアに移動する。


 すると、音楽ゲームが設置してあるエリアでひときわ大きな歓声があがった。画面上に流れてくる音符に合わせて太鼓を叩くゲームの筐体前にカメラがセットしてある。それを前に軽薄そうな男が手を振っていた。

「どんどんチャンネルの、MIKAKUNINでーす。今日はね、先日配信された新曲をやっていきたいと思いまーす」

 ギャラリーからは、「MIKAKUNINが生配信してるぞ」「マジかよ」などという声があがる。どうやら、人気のゲーム実況動画の配信者が生配信を行っているらしい。


 円形上に観客を集める中、MIKAKUNINはゲーム筐体にコインを入れる。迷うことなくバチを操作し、とある曲を選択した。

 明らかにゲームのために開発された、非常に激しいメロディーが流れる。開始から数秒後に、矢継ぎ早に音符が流れてくる。素人目からしても、常人では反応することすらままならぬ譜面だということは理解できる。


 そんな難曲をMIKAKUNINはこれまた人間離れしたバチ捌きを披露してゲージを伸ばしていった。観客からは時折「おー」という歓声があがる。流石にノーミスとはいかないが、危なげなくノルマクリア達成ラインまでゲージが到達する。


 そして、ゲームクリアのアナウンスが流れた時には、自然と拍手が巻き起こった。

「いやー、きついッスわ。運営も、これ、人間がプレイする曲って考えてないっしょ」

 ユーモアを交えた感想に撮影者が「ですよねー」と相槌を入れる。もはや、テレビのバラエティ番組の撮影の域に達している。見方を変えれば龍二がプリクラの前でウロウロしているよりも迷惑なのだが、店側もいい客寄せと思っているのだろう。それどころか、むしろ暗に通行客を捌いて協力している節がある。


 やがて、動画撮影が終了し、機材の片付けに入る。つい、龍二も撮影の様子に魅入って最後まで見物してしまった。油を売りすぎたから、本来の目的を果たさねば。

 そう思った時だった。MIKAKUNINが動画を撮影していた隣の筐体で、一人の少女がゲームをプレイし始めた。ブロンドの髪をボブカットにしたスタイリッシュな体型だ。パーカーとデニムのホットパンツを着用し、肩にはヘッドホンをかけている。いわゆるダウナー系というのだろうか。たれ目で気だるげな雰囲気がある。それでも整った顔立ちは衆目を集めるに十分。そのはずなのだが、彼女の間だけ空間が断絶されているかのように、黙々と筐体を操作していく。


 選曲されたのは、先ほどMIKAKUNINがプレイしていたのと同様の曲だ。開始直後から襲い来るラッシュを危なげなく叩いていく。その腕前も去ることながら、龍二が釘付けになったのは、バチ捌きそのものだ。洗練された無駄のない動き。と、いうよりも、ゲームクリアのためだけに特化し、寸分の遊びも挟む余地はないという断固たる意志が伝わってくる。


 それは戦績にも表れた。ゲーム終了と共に「フルコンボ!」との祝福が流れたのだ。まさかのノーミス。そんな偉業を前にさしものギャラリーもざわめく。

 だが、それはほんの一部でしかなかった。なにせ、隣に大物動画配信者がいるのだ。そちらにばかり集中し、そもそも少女が視界に入っていない者が大多数だった。


「ま、こんなもんか」

 ゲームをプレイし終えた少女は、そそくさと退散しようとする。周囲の喧騒などまるで関係ない。あまりに清々しい態度はある種の気高さすら醸し出していた。

 龍二はどうにも彼女のことが気になった。何故と問われると返答に窮する。ただ、呼び水に群がる螢のような心地を彼女に感じたのは確かだ。


「ちょっと待ってくれ」

 半ば無意識のうちに彼女に声をかけていた。鬱陶しさを前面に彼女は振り返る。

「なんか用」

「ああ、用というか、なんというか。聞きたいことがある」

 一体どうして、初対面である彼女にこんなことを尋ねようと思ったのか。論理的に説明せよと求められても解を出す自信はない。だが、自然と口から飛び出してしまったのだ。

「魔法少女アスタリウスについて知らないか」

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