表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

好奇心はネコを殺す

作者: 森三治郎

ホラーかな?


 「あれ・・・・」

私は、“何とか院”とある位牌の裏に小さな箱を見つけた。

私は居候だ。ここは私の家ではない。従兄弟の加藤勝彦の家だ。勝彦の父、慶彦の家で慶彦の父善蔵が同居している。

居候の身で、神聖な仏壇にある物を探るなどしてはいけないと思いながらも、好奇心を押えることが出来ない。

そ~と、取り出してみた。漆塗りの木で出来た、小さな箱だ。『何だろう、小判でも入っているのかな』と思い、ドキドキしながらそろりそろりと開けた。

綿が詰まっていた。その綿を除けると、枯れ木のような物があった。手に取り、じっと見た。

「わっ!」

私は、それを取り落とした。それは、干からびた指だった。

「加奈、何をしている」

「⁉・・・・」

勝彦が、怖い顔で睨んでいた。

私は、転がった指、そして優等生の勝彦が唯一気にしてる部分、右手の小指わきのへんに肉が盛り上がった部分を往復していた。

勝彦の視線は震える箱、そして転がり落ちた指に。

そして、より険しい、恐ろしい、物凄い禍々しい顔で私を見た。

優等生で、温和で、優しい面影は無い。

「ガッ!」と来た。



 「わあー!」

異様な叫びを聞いて、善蔵が飛んできた。

「どうした」

「ううう・・・・」

善蔵は転がった箱、干からびた指、首を絞めたまま固まった勝彦の手を見て、状況を悟った。

「何てバカなことを」

「うう」

「あのな~指が一本多かったくらい、何でもないんだぞ~。若いころは、何でも潔癖症ぎみになるがな、そんなことは何でもない。気にすることないんだ。馬鹿者が」

「うう」

「どうするつもりだ」

「自首するしか・・・・」

「う~ん、『好奇心はネコを殺す』か、『雉も鳴かずば撃たれまい』に。加奈もへんな物を見てしまったんだな~」

善蔵は動かない加奈を見ていた。

「しょうがない。首吊りに見せるしかないか」

「えっ、それって」

「起こったことはしょうがないだろ。元に戻るわけじゃなし」

僕を、助けてくれることはありがたいけど・・・・それって犯人隠避、共犯。法律違反じゃ・・・・。いや、切り替えが早すぎるんじゃ・・・・。

「そっちを持て」

二人で加奈を持ち上げようとした時、「げほげほげほ」と加奈がせき込んだ。

僕は思わず加奈を取り落とした。“ゴツン”と音がした。

僕も善蔵じいさんも、飛び上がるほど驚いた。

「加奈、大丈夫か」

「うん、大丈夫」

加奈はしわがれた声で応えた。



 それから、私はハスキーボイスになってしまった。

クラスの男どもから、急に「女っぽくなった」とか「魅力的な声」とか言われてモテるようになった。

良かったのか、悪かったのか判らない。

勝彦とは、指のことも死にかけたこともダブーとなっている。


多指症→手と足の指が多い症状です。

発症率は、1000人に1人か2人といわれています。真偽のほどはわかりません。

私のまわりにそんな人は居なかったし。

豊臣秀吉は、手の指が6本あったといわれています。これも、真偽不明です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 干からびた指や勝彦の変貌も恐ろしいですが、 作中でも言われていますが善蔵の切り替えの早さが特に恐ろしいですね。 加奈は助かりましたが、なんともいえないもやもやが残るホラー作品でした。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ