魔鳥
ヒョウ族の集落はビーバー族がやってきて開発が始まっている。木を口でガジガジ噛じるイメージだったけどちゃんと斧やノコギリを使っていた。
その様子を見ていると木を切り倒すより木の根を掘り起こすのが大変な様だ。未開発の森だし、この辺の木は広葉樹だから根が深いんだろうな。
ある程度掘って根を切るのか、こりゃ大変だな。
ふと、木の根をアイテムボックスにしまえないかやってみることに。
「ごめん、ちょっといいかな?」
「作業中に近寄ると危ないぞ」
「ごめん、ちょっと試したいことがあるんだよ」
試しに木の根を触って収納してみる。
ヒュンっ
あ、出来た。
「今何をした?」
驚くビーバー族。俺も驚いたわ。チェーンロックや首輪の事を考えると理屈は同じなのかもしれない。異世界転生お決まりのチート能力はポイント交換かと思ってたけど本当はアイテムボックスなのかもしれない。
えーっと、木の根を収納出来るならもしかして木も収納出来るんじゃないのか?
試しに近くの木を収納すると根ごと収納出来てしまった。木材を使わないなら伐採する必要ないじゃないかこれ。
今の様子を呆然と見ているビーバー族。
「集落の人以外には内緒ね」
正気に戻ったあとのビーバー族にどの木を切るのか指示して貰い収納していく。材木置き場を決めてそこへ出して行くと他の人達が枝を落として丸太にしていくのであった。
「ポンタがいるとめちゃくちゃ効率良く開拓が出来るな。お前、大工にならんか?」
「それもいいかもね」
木を収納して出す簡単なお仕事だ。これで食べていけるなら楽だな。
一緒に作業をしているとあまり喋らなかったビーバー族とも打ち解けてきた。
「この材木に使えない枝とかは薪にするんだよね?」
「そうだ」
「炭も作ろうか」
焼き物をするには炭火の方が良いからな。
土でかまどを作って蒸し焼きにするんだっけ?
ビーバー族は土をこねてそういうのを作るのも得意らしく、かまどみたいなものを作ってくれた。枝をギチギチに詰め込んで蒸し焼きにしていく。かまどから煙が出なくなったら出来上がりのはず。
開拓を手伝いながら薪にも使えない枝葉を燃料に蒸し焼きを続けていった。延焼しないように水をかけたいのだが樽で汲んで撒くのは一苦労だ。
そういやハイエナ達に出された酒をそのままアイテムボックスに入れることができたよな。もしかしたら水も樽いらないんじゃ?
川まで移動して水をそのままアイテムボックスに入れていくと、アイテム名が川の水となって水量メーターがどんどん増えていく。どこまで入るか試してみるが上限が見えない。50万リットルの所で止めた。多分25mプール位の水量だろうか?
今度は放水だ。指先から指定した水量がホースで出すように出てくる。
「ポンタは水魔法が使えたのか?」
「いやこれは収納魔法みたいなやつの応用。水を収納しておいて出しているだけ。無限に出せるわけじゃないよ」
作業が終わって皆の所にもどったポンタはアイテムボックスの実験をすることに。今日収納した水は川の水と出た。他の水を入れたらどうなるのだろうか?
まずは長の所にある井戸の水。これは冷水と出た。温度を計ると5度だった。色々と調べた結果、
【熱湯】98度以上
【湯】70度前後
【ぬるま湯】40度前後
【常温】20度前後
【冷水】10度以下
こんな感じになった。50度とかの温度のものを収納すると一番近い温度のところに加算されていった。
ポーションはどうなるのか試したが容器無しで収納しても温度を示すような表記はでなかった。容器に入れて収納すると温度はそのままだ。とても不思議。
ざっくりとした温度表記が出るものは水と油だった。それともう一つわかったのは触らずとも手の近くにあって意識をすれば収納出来るということ。180度の油に指を突っ込むのを躊躇っていたときに判明したのだ。
これまで揚げ油がダメになってきた時にランプ用にしていたがこれからは高温にして収納しておこう。もしかしたら武器として使えるかもしれない。熱湯より殺傷能力がありそうだしな。
液体の容器なし収納はとても便利だ。最近大量に作るプリンも卵液をそのままストック出来るし、容量を指定して指先から容器に出せるのだ。
それに岩塩も様々な大きさのものが収納されていたのを合成することも出来た。合成した岩塩は出す量も指定することが出来るのでゴリゴリしなくても一粒の量✕グラムとかで出せる。
やはりチート能力はアイテムボックスだったようだ。これはもっと早くに色々と試すべきだったな。
ポーションの腐敗実験の結果もだいぶ揃ってきた。結果はクエン酸を入れても劣化するということだ。アイテムボックスには生きているものは入れる事が出来ない。なので密封容器に入れてからアイテムボックスに入れると滅菌状態となり腐らない。冷暗所に置いておけばかなりの期間保存出来るだろう。しかし密封容器は数を揃えることが出来ないから却下。
しかしフルポーションはそのまま置いておいても劣化しなかった。どれぐらいの期間劣化しないかはまだ分からないがかなり持つのではなかろうか?なんか酒みたいだな。アルコール度数が上がれば劣化しにくいように。
フルポーションも水で薄めると普通のポーションにランクが下がっていく。フルポーション1:水125で上級、水200で中級、水500で初級になった。これは新発見。フルポーションを作ってから水で薄めた方が薬草の使用数が少ないのだ。
他にもなんかあるかな?
ふと初級ポーションと馬油を合成してみたら初級ポーションクリームになった。わざわざ卵で乳化させる必要ないじゃんかよ…。
マヨも玉子を割ってから卵黄のみ収容し、分量を分けた酢や塩を合成したらマヨになった。アイテムボックスの合成システムヤバいわ。
翌日からも開拓を手伝ってはアイテムボックスを実験したりなんか料理を作ったり、豚貴族に呼び出されたりする生活が続いた。
ウサギ族の住む所はまだ出来ていないけれど畑の植え付けは出来そうだと言うことでウサギ族の若手が耕しにきた。
「ここは腐葉土が多くて土がフカフカですね」
とか嬉しそうに言うがよくわからない。多分褒めているのだろう。畑作りはプロに任せておこう。
「それは何?」
「これはアスパラガスですよ。こうして元の奴を持ってくれば種から育てるより早くに収穫が出来るんですよ」
へぇ
ズーランダの気候は温暖で明確な四季は感じにくい。雨季と乾季が分かれているわけでもないから野菜類の季節性はあまり考えなくても良いとウサギ族は言うが本当だろうか?もしかしたら種族特性能力とかあるのかもしれんな。
「胡椒の育て方はわかる?」
「どのような植物ですかね?」
「自生しているものを見てもらった方が早いかな?」
「そうですね。その方がいいかもしれません」
「ウサギ族は高いところに飛び乗れる?岩を登って行かないとダメなんだけど」
「どれぐらいですか?」
大体の大きさを説明するとギリギリかもしれないと言われたのでハシゴをビーバー族に作ってもらうことにした。ハシゴはすぐに出来るようなので明日ジャガー達に同行をお願いしよう。
翌日ハシゴをアイテムボックスにいれて胡椒のあるところにウサギ族達と行った。
「これはつる植物ですね。熟した実と挿し木で栽培を試みましょうか」
ついでに胡椒の実をまた大量に収穫をして畑に戻った。
ウサギ族はテキパキと熟した実を植えるのと添え木を立てて挿し木をしていく。上手く行ってくれると良いなぁ。
ポンタはウサギ族に後は任せておくことにしたのだった。
特に用事のない日はジャガー達に薬草採取に連れて行ってもらう。
「そんなに取って使い切れんのか?」
「採取出来るときにしときたいってのもあるけど採取したあとの事も気になるだろ?こうやって間引くように採って行けば周りのが元気になって行くのも分かったし」
薬草も野菜とかと同じだな。適切に間引いてやれば他のは大きく丈夫に育っていく。これも群生地だから確認出来ることだ。
薬草を採取しては合成してせっせとフルポーションにしていくポンタ。水も飲料用水で冷水から熱湯までせっせと足していく。ラメリアに行く準備をしていかねばならないのだ。
「ポンタ、今日は珍しい魔物を狩りにいくか」
「俺も行くの?」
「デカいやつだから全部持って帰るのが難しいのだ。お前の好きな鶏系の魔物だから旨いぞ」
「なら今までどうして狩りにいかなかったの?」
「季節限定というやつだ。この時期にしかこの辺りには出ないやつでな」
へぇ、季節変化がほとんど無いのにそういう魔物もいるんだな。
行ったことのない森の奥へ奥へと進んでいく。俺の足は遅いからジャガーのカバンの中で様子を伺っていた。
「なに?あの黒い鳥は?」
見た目はずんぐりしたバカでかいダチョウみたいな感じの魔物だ。いや魔鳥というのだろうか?
「あれはケンターキー、飛ばない代わりに蹴りが鋭いしくちばしの攻撃も中々のものだ。身体への攻撃は羽で吸収されるから倒すのが厄介なんだぞ」
「どうやって倒すの?」
「羽のない首を狙う」
「危なくない?」
「気配を消して後から襲いかかる」
「何羽かいるけど他のが襲ってきたりしないの?」
「する」
「俺が囮になればいいんだね」
「正解だ。お前に気を取られている時なら簡単に狩れる」
ジャガーはケンターキーが届かない高さの枝に俺を乗せてウリボアの時のように落ちないように紐で括った。
「本当にここまで届かないよね?」
「絶対に届かん。木には攻撃をされるだろうからこうして括っておけば安心だ」
まぁ、ジャガーがそういうなら大丈夫なんだろうけど。
ジャガーとネロはそっとケンターキーの後ろに周り、準備OKと手を上げたので無駄吠えをする。
「キャウキャウキャウッ」
グキャー ドドドドドっ
無駄吠えに気付いたケンターキーは一斉にこちらに来た。上からでもデカいのがよく解る。
グキャグキャ鳴きながら木にくちばしや足での攻撃を仕掛けてきてグワングワンと揺れる木。
「ヒィィィぃっ」
括ってもらってて良かった。こんなに揺れたら絶対に落ちていたな。
絶好の機会とばかりにジャガーとネロがケンターキーの首に攻撃を仕掛ける。ジャガーは後から飛び乗っては首を爪で裂き、ネロは食いちぎっていた。それに気付いた外野ケンターキーがジャガー達へ攻撃を仕掛けようとするのでその都度キャウキャウしてやる。
今倒したので6羽、残り2羽はもう後ろに飛び乗っているから大丈夫そうだな。
と二人の戦いの様子を見ていると目の前に大きな何かがふわっと現れた。
鋭い足が俺の目の前にあるっ。
「うわっ」
ぐっ
逃げようとしたポンタは括られているので身動きが出来ない。
「いやぁァァァっ」
大きな声を上げると一瞬ホバリングのような飛び方で後ろに下がったてまた爪で襲ってきた。
死ぬっ
ポンタはとっさに熱した油をそいつに掛けた。アチアチ油を顔に食らって何も鳴き声を出さずに落ちていった鳥らしきもの。
「ポンタ、大丈夫か?」
血まみれのジャカーが枝に飛び乗ってきた。
「うん、なんとか。今の何?」
下ろしてもらってアチアチ油を掛けた相手をみる。ネロが止めを刺してくれたようでもう死んでいた。
「これ何?」
「八つ目フクロウだ。スマン、こいつは羽音が何もしないし気配を消すのが上手いから迂闊だった」
見た目の大きさはゴールデンレトリーバーぐらいあるな。持ってみろと言われて持ち上げると拍子抜けするぐらい軽い。
とりあえず帰ろうと言うことでケンターキーと八つ目フクロウを収納して集落に帰ったのであった。




