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ポメラニアン転生 〜俺が望んだのはこっちではない〜  作者: しゅーまつ


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強さにも色々ある

ザワザワザワザワ


そりゃみんなこんな感じになるわな。住み慣れた場所を移すとか大事だし。


「ヒョウ族の縄張りを侵すような馬鹿はいないだろ?」


「動物の世界ならね。でもここは獣人の世界。利害が絡めば何をしてこられるかわからんよ。現に子供達が嵌められて犯罪奴隷にされたろ?」


「そ、それは…」


「あの一件も、ジャガーの事も、俺の事も人族が絡んでいる。強さってのは色々とあるんだよ。面と向かって殺し合うだけが強さじゃない。権力や金といったものも強さなんだよ。ヒョウ族は戦う力は強い。けど、権力や金はないだろ?敵はそういう力を使ってくるんだよ」


「そんな物に誇り高いヒョウ族が負けるか」


「ならなぜ子供達は犯罪奴隷にされた?強いジャガーが借金奴隷にされた?特にジャガーなんてめちゃくちゃ強いのにだ」


そういうと黙るヒョウ族。


「昔のズーランダはどうか知らないけど、色々と発展するに従って状況は変わって行くんだよ。俺はヒョウ族でもないし、この集落の者でもない。だけどジャガーの事が好きだしネロの事も好きだ。それに誇り高いヒョウ族の皆もね。だから俺が知っていること、想像出来ることは伝えておきたい。決めるのは皆だけど将来の幸せの為に考えてみて欲しいんだ」


そう言うと皆は黙ってしまった。どうなるかはわからないけど、俺がこの集落を去る前に出来ることはしておきたい。



皆は話し合うだろうからとポンタはその場を離れたのであった。


「ようポンタ。さっきの話は俺の為にしてくれたのか?」


「ネロの為にというか事実を言っただけだよ。この集落の将来の為には他のヒョウ族やネロみたいな黒ヒョウ族が必要だ」


「俺はこの集落に必要とされてんのかよ?」


「種としてはな。ネロという個が必要とされるかされないかはお前次第だ」


「意味がわかんねぇ」


「俺はお前が好きだが集落の皆がお前を好きかどうかは知らん。昔、かなりヤンチャしていたクソガキだったんだろ?」


「お前、言い難い事をハッキリ言いやがるな」


「俺はよそ者だからな。昔からずっと一緒に住んでたらこういう事を言い難いのは当たり前だ」


「あぁ、そうさ。長に拾われた俺は一人だけ毛並みが違う。他の奴らはなんだこいつ?よそ者を集落に連れて来やがって、てな感じだったよ」


「だろうな」


「俺を他の奴らと変わらない態度で面倒見てくれたのは長とジャガーだけだったんだ。それが突然子供達がいなくなって、帰ってきたかと思ったらジャガーが居なくなった。探しまくったあとに長から子供達の代わりにジャガーが奴隷にされたと聞かされたんだ」


「子供達もジャガーも嵌められたみたいだな」


「なぁ、ポンタ。今回の件は人族がやったんだろ?人族ってそんやつばっかりなのかよ?」


「いや、人族にも獣人にも良いヤツもいれば悪いヤツもいる、それだけのことだ。でもな、人族は獣人より力では劣るが頭は良いんだ。人族が本気で獣人を滅ぼそうと思えば可能だと思うぞ」


「はっ、戦争になりゃ獣人の方が強いに決まってんだろ」


「そうか?この前俺はハイエナ達に襲われただろ?」


「あぁ」


「俺とハイエナ族や犬族どっちが強いと思う?」


「お前の方が弱いに決まってんだろうが」


「だよな?でも俺はハイエナと犬をやっつけたぞ」


「あっ、そうだった。あれどうやったんだよ?」


「なら俺とあの時と同じ態勢になって戦ってみるか?」


「おうっ、やってやんぜっ」


ということでネロに木の上に乗せてもらった。ハイエナと違ってネロは木登りが得意だから短期決戦だな。



「ネロ、準備はいいか?」


「そっちこそいいのかよ?」


「いいぞ。じゃいくぞ」


とポンタは言った後に無駄吠え発動。


「キャウキャウキャウッ」


イラッ


ムカついたネロはひとっ飛びで目の前まで飛んできた。


バッ


飛んで来るだろうと予想していたポンタは顔めがけて至近距離で唐辛子の粉を顔に掛けた。


「ウギャッ」


空中で態勢を変えられないネロはそのまま下に落ちた。


「目がぁ〜 目がぁ〜っ」


顔を手で押さえてゴロゴロ転がって苦しむネロ。落ちた衝撃の方はどうってことがないようだ。


ポンタはバシャバシャっとポーションでネロの顔を洗ってやる。おっと自分の手も洗っておかないとな。


「なっ、何をやりやがったんだっ」


「唐辛子の粉をお前の目に掛けたんだよ。ハイエナ達にも同じことをした。激痛で動けなくなったろ?」


「なんて卑怯な事をしやがんだっ」


「命のやり取りになった時に卑怯もクソもあるかよ。毒持ちの魔物が毒を吹いたら卑怯だぞとか言うのか?」


「ちっ、屁理屈を言いやがって」


「俺は獣人だけど考え方や発想は人族と変わらん。相手を知っていると戦う対策も取れるから勝つ方法を見付けだせるんだよ。だから人族が獣人を滅ぼそうと思えばやれるのは間違いないよ」


「ならなんでラメリアとか攻めて来ねえんだよ」


「滅ぼすメリットがないからだろ?」


「それだけか?」


「それだけだ。攻め込んで滅ぼせるといっても人族に被害が出ないわけじゃないからな。逆に滅ぼすメリットがあれば攻めてくる可能性はあるな」


「まぁ、攻めて来やがっても返り討ちにしてやるけどよ」


「滅ぼす方法は戦いだけじゃないぞ」


「は?外に何があるってんだよ?」


「薬とかかな」


「薬?」


「依存性のある快楽を感じる薬とかを開発すれば戦わずとも相手を奴隷のように出来るからな」


「なんだよそれ?」


「まぁ、気分が良くなる薬だとか言われて渡されても手を出すなってことだよ」


「よくわかんねぇぞ?」


まぁ、元の世界の昔の話だ。植民地にするには色々な方法があるって教えても無駄だろうな。もしそんな動きがあれば神様にバチを当ててもらおう。


集落を移転するか、他のヒョウ族を受け入れるか結論が出ないまま一週間がすぎた。今日はギルドにいく約束をしていた日だ。


ポーションの腐り方の実験はクエン酸を入れたポーションと瓶詰めの薬草は問題なし。クエン酸を入れていない方のポーションは濁り、薬草は発酵していた。アイテムボックスいれて確認すると劣化と出たので捨てよう。クエン酸を入れた方は初級ポーションのままだった。クエン酸を保存材として使えるかもしれん。どこまで持つかこのままおいておこう。



「ポンタは色々となんかやっているな。ポーションの実験は何を調べているのだ?」


「そのままおいておいても劣化しない方法を試してるんだ」


「お前のアイテムボックスに入れておけば劣化しないのだろう?」


「俺が居ればね」


「まさかもう旅立つつもりか?」


ジャガーはぎょっとした顔で聞いてくる。


「いや、ヒョウ族の集落の件が落ち着くまでは出発しないよ」


「お前はもう先の事を考えているのか…」


「俺の寿命がどれぐらいか知らないけど短そうだろ?あっという間にジジイになるんじゃないかと思ってね」


「お前は犬族といっても特殊っぽいからどれぐらいの寿命かわからんな」


「ちなみにヒョウ族の寿命ってどれぐらい?」


「怪我も病気もしなければ6〜70年ぐらいだと思うぞ。長はたしか50歳過ぎていたとは思うが」


人族と余りかわらんな。俺の場合はどうだろうか?仮にヒョウ族と同じとしても10年は短いだろうな。なんせ犬で子供時代をすっ飛ばしたようなもんだからな。



また3人で街に向かいギルドに行った。


「主任さんと約束をしていたんだけど」


「はい。お呼びしますね」 


少し待つと豚獣人の主任が出て来た。


「私が同行して案内します」


テクテクと歩いている間に話を聞く。


「どんな人?マナーとかうるさい人?」


「獣人の貴族は人族と比べて余り細かい事は言いませんのでその点はご安心を。恐らく食事をしながら話をすることになると思います」


「美味しいもの好きな貴族さんという理解でいい?」


「はい。ラメリアからも食材や調味料を取り寄せたりされていますよ。私もご相伴にあずかるので楽しみです」


「権力はどこまで持っている人?」


「そうですね。この街ではかなり有力な方です。それにズーランダは人族の国ほど細かく決まりはないのでなんとかなると思いますよ」


「敵対している貴族とかいる?」


「んー、どうでしょうね。犬族の貴族とは仲が良いとは言えないかもしれません」


「犬族の貴族はなんの管轄?もしかして衛兵を担当してるとか?」

 

「よくご存知で」


なるほどね。これは豚貴族をこちら側に引き込む方がいい。今日の訪問は重要だな。


しかし、こっちの世界でも元の世界と同じような事をしないとダメなんだなぁ。会社の派閥争いと規模は全く違うけれども。


ポンタは貴族を会社の役員と置き換えて対応をどうするか頭の中で想定していたのであった。

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