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俺は生まれ変わったらしい

「さ、今日からは自分で獲物を狩るのよ」


ん?獲物を狩れ?こいつは何言ってるんだ?


というかこの目線は何だ?どうして地面がこんなに近くに・・・


「ほら早く。あのカエルなら自分で獲れるでしょ」


ん?自分で獲る?この声の主は一体何を言って… げっ、なんだ俺のこの手は?というかこれは前足?


ズンッ


うわっ


早くカエルを獲れと話し掛けたであろう奴が自分の横にデカい足を出してきた。その足の主を恐る恐る見上げてみた。


おっ、狼?なんちゅうデカさだこいつ。それに本当に話し掛けてきたのはこいつかよ。獣が喋るなんてこれは夢か?


そして目の前にある池をそっと覗いてみるとそこに写ったのは自分の顔…?これはタヌキ…?いやこの顔は俺が飼っていたたぬ吉の子供の頃の顔…


もしかして俺はたぬ吉になったのか?


「おい、ちびのろま。何カエルなんかにビビってんだよ。さっさとやれよ」


そう声を掛けてきた周りにいるのはデカい獣の子供だろうか?そいつらは白というか銀に近いような毛並みの仔犬か仔狼。しかし水面に写っている自分の顔は黒い毛に覆われた愛らしいポメラニアン…


ダメだ。まったく状況が飲み込めない。


「早く獲らないと逃げちゃうでしょ」


どうやらこのデカいのは岸際にいるカエルを捕まえろと言っているようだ。しかし、網も何も無い。


「ほら、こうやるのよ」


ガブッ


げっ、カエルを咥えろと?そんなの生臭いに決まってるじゃないか。


「さっさとやれよ。お前だけだぞ何も捕まえてないのは」


そう言った仔獣の足元には大きなネズミのような物が落ちている。あいつはあれを捕まえたのか。


状況的にこのでかいのが母親で仔獣達は兄弟ってことか?


しかし何故に俺は獣の姿になってんだ?


えーっと確か望みを叶えてやろうとか言われて光の輪に飛び込んだんだっけな?あれは夢か?自分のほっぺを手というか前足でペシペシしてみるも目が覚めない。やはりどういうことか状況が飲み込めない。



ピキーーンっ


ん?獣たちの雰囲気がなんか変わったぞ。


「ど、どうしたの?」


「みんな、逃げなさいっ」


ダッと走り出す仔獣達。


「あなたも早く走りなさいっ。こっちよ!」


えっ?えっ?えっ?


ザッと大獣も走り出す。


「ちょっ、ちょっ、待って、待ってってばっ」


自分では懸命に走っているつもりだがチョコチョコとしか走れないこの小さなボディ。獣達に付いて行けず取り残されてしまった。


「なんか居たぞっ」


目の前に小汚い少年達が現れた。なんだこいつら?剣みたいなものを持ってやがるじゃないか。


やばいやばいやばいっ


剣を持った少年4人に囲まれて俺ピーンチ。


「こんなところまで来たかいがあったぜ。こいつはまだ子供の魔獣だから俺達にも楽に狩れるな」


こいつら何を言っているのか言葉がサッパリわからない。が、俺を殺そうとしているのはわかる。


「キャウキャウキャウっ」

(待て、話せば分かる)


げっ、さっきまで話せたような気がしたのに今は鳴き声しか出ない。


「鳴いても無駄だぜ、観念しろよ」


ピーンチっ、ピーンチっ!このままでは訳も分からず殺されてしまう。逃げようにも囲まれているしこの遅い足では逃げ切れる訳もない。


「おりゃっ、死ねっ」


「キャウーーーン」

(いやーっ、殺されるぅぅ)


振り下ろされた剣をなんとか避けて走り回る。


「こらっ、逃げんな」


「ちょっとぉ、やめなさいよ。それまだ子供じゃない」


「うるせぇっ、だから簡単に倒せるんじゃないか」


「そんなの倒しても成績にならないわよ」


「この魔獣はなんていう魔獣かな?連れて帰って教官に見てもらう?」


逃げ回っている時に表れたのは小汚い赤毛の少女と銀髪の少女。言葉は分からないけどこの少女達には敵意を感じない。これは助けを求めねば。


「キャンキャンっ」


少女達の方へ行くと銀髪の少女に首根っこを掴まれ持ち上げられた。


「へっへーん。捕まえたのは私だからこれは私のね」


「サリ、お前どうすんだよそいつ?」


「討伐するより生け捕りの方が成果になるかもしれないじゃない」


「子供の魔獣だからって油断すんなよ。でっかくなって襲って来たらどうすんだよ?」


「大丈夫よ。テイムにチャレンジしてみる」


「お前テイムなんて出来ないだろうがよ」


「でっ、出来るわよっ。多分…」


「お前の天職ジョブはテイマーじゃないだろうが。そんなもんにかまってないでちゃんと自分のジョブの治癒魔法を使えるようになれよ」


「分かってるわよ」



何を話していたかさっぱりわからんが、こうして俺は連れ去られることになったのであった。




どうしてこうなった?


「ふんふん♪」


鼻歌混じりで俺の首根っこを持ってぶらぶら歩く少女。皆はワイワイと話しているがやはり何語を話しているかサッパリわからない。


そして町へ入り家というか宿舎だろうか?同じ建物がたくさんある長屋みたいな所に到着した。


「本当にテイム出来るんならちゃんとやっとけよ。無理なら討伐対象だからな」


俺を殺そうとした少年達は違うところに去って行った。家の中に入れられキョロキョロと見渡す。部屋には物がほとんどないから裕福そうでもないな。この1ルームに少女二人住まいか。



「はい、ご飯よ」


小さなキッチンで何かを作って目の前に置かれた。何を言っているのかは分からないがこれは餌だろうか?


目の前に出されたのは残飯みたいなもの。玉ねぎみたいな物とか入ってるし食べたらやばそうだ。信じられんが今の自分はどう見ても犬だ。それに食べ残しなら犬の自分には塩分とか強そうだから食べるのやめておこう。まだそんなに腹は減ってない。


差し出された餌を食べずに水だけ飲んでおく。


「あれぇ?食べないんだけど」 


「サリの料理が不味そうだからじゃないの?」


「うっさいわねっ」


「冗談よ。いきなり知らないところに連れて来られて警戒してるんじゃないの?お腹空いて我慢出来なくなったら食べるわよ」


「そうかなぁ。じゃあ私達は食べようか」


「でもサリももう少し料理作るのマシになってよね」


「リンダ、文句を言わないの。お金が無いんだから」


「ハイハイ。頂きまーす」


犬飼悟が残飯だと思ったのは二人のご飯と同じ物だった。それを知らない三上は部屋の角で丸くなって警戒を続けるのであった。



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