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ポメラニアン転生 〜俺が望んだのはこっちではない〜  作者: しゅーまつ


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王都軍が動く

「ここの魚介類は気に入ってるから取引してくれると嬉しいけどどうかな?」


「も、もちろん喜んで…」


「じゃ、また秋にくるよ。多分10月の頭か半ばぐらいになると思うけど」


「いつもは王都にいるのか?」


「今年は来月頭からエルイムに行くんだよ。9月15日に式典があってそれに出ないとダメなんだよね。船で行くから予定がよく読めなくてね。スムーズに帰ってきたら10月頭になるんだ。その間にインダシアとかにも行くつもりだからもしかしたら少し帰って来るのが遅くなるかも」


「随分とあちこちに行くんだな」


「インダシアにスパイス関係の仕入れをしに行くからね。上手く話が纏まったらスパイス関係の値段が下がると思うよ」


「スパイスってどんなのだ?」


「食べてみる?」


ケイトもカレーを食べたいと言うからここでご飯にすることに。シーフドカレーでいいか。


具材は漁師に提供してもらった。売り物にならない魚で出汁を取ってそれをベースにカレーソースを作る。貝やイカやエビをカレー粉で炒めてカレーソースに投入して完成。


「辛いのがダメな人はこっちを食べてね」


鍋を分けて辛味を精霊に食べて貰ったものをソフィアに。


「初めて食う味だが旨いな」


「夏場に美味しいよね」


「ねぇ、あんた。ウニは生で食べる以外にどうやってたべれば美味しいと思うんだい?」


「パスタにすればいいと思うよ」


「パスタ?」


「そう。作ろうか?」


と次はウニクリームパスタだ。


パスタを茹でている間にソース作り。オリーブオイルでニンニクと塩コショウと玉ねぎを炒めて生クリーム投入。ウニを入れて潰してソース完成。茹で上がったパスタにウニクリームソースをかけてウニを乗せて完成。


「味が濃厚だからこういうのも美味しいと思うよ」


そんなに数を作ってないので皆も試食程度だ。


「お、美味しいじゃないか。あんだやるじゃない。生で食べるよりこっちの方がいいに決まってるよ」


「上に乗せてあったのが生のウニだよ」


「え?」


「美味しかったでしょ?」


「全然気持ち悪くなかったよ… 甘くてとろりとしていて…」


「でしょ?だから仕入れるからたくさん捕ってね」


「ま、任しときなっ」



漁師やウニのおばちゃんと飯で打ち解けた。もう俺が獣人でも気にしないようだ。


「じゃ、また来るから宜しくね」


「おー、楽しみに待ってんぜ」


ここでランクールを出すと皆に驚かれた。


もうウニもゲットしたから帰るのみだ。領主も探しに来なかったから別にいいだろう。


帰りの運転はランガスじゃなしに俺に運転してくれと懇願するサリ。


「ちょっとはマシになったのか?」


「ランガスさんの運転に比べたらあんたの運転は天国よ」


ランガスは運転荒いからな。


「ポンタ」


「何ジャガー?」


「依頼は本当に良かったのか?」


「まぁ、人的被害は出てないみたいだからいいんじゃないの」


「それと獣人の賊というのも気になる」


「それは軍に相談するよ」


「軍に?」


「そう。ヴォルフに報告しておく。軍の実戦訓練に役立ててもらおうかなって」


「王都軍が賊の討伐に出るのか?」


「討伐じゃないよ。訓練の一環でやってもらえばいいんだよ。ゲリラ軍を相手にする訓練だと思ってもらえばいいんじゃない。あの森は魔物もでるし、より実戦に近い訓練ができるから喜んでやってくれると思うよ」


「お前は全く」


とジャガーに呆れられたがこれはヴォルフの嫌いな言葉を改善していくのに役立つのだ。


ーだから獣人はー


アーロンズで獣人がほんの少しでも何かするときっとそう言われることになる。


犬族で形成されている王都軍の精鋭が獣人の賊を討伐することで獣人に対する意識が少しは変わるのではないかと思ったポンタなのであった。


ゆっくりと2日かけて家に戻るとロップが飛んで来た。


「ポンタさん、アーロンズの港街ギルドが探しているみたいです。戻ったら連絡が欲しいと」


「依頼はキャンセルしたって言ったのに」


「どういうことですか?」


ロップに事情を話す。


「あー、なるほど。だったら仕方がありませんね」


「だろ?嫌な顔されてまで高難易度依頼を受ける必要ないんだよ」


「ちょっと向こうのギルドが可哀想ではありますね」


「ギルドはやることはやってくれてたみたいだからギルドを責めるのはお門違いだよね」


「まぁ、貴族の依頼はややこしくなりますよね」


「だよね。次からはそういうの受けないようにするよ」


「はい。ポンタさんは頑張ってポーションを作って下さいね」


もうロップは受付じゃなしにポーションショップの責任者だからな。あちこちに出掛けててポーションが滞る方が困るのだ。



ポンタはエルイムに行く間のポーションを作りだめしていく。ケイトもせっせとポーションを作り出した。念のために10月分まで前納品するのだ。薬草も精霊に育ててもらっては合成していく。幽霊船の為にポーションは大量に作ったから薬草の在庫が減っているのだ。エルイムに行ったら薬草がしばらく手に入らんかもしれんからな。



ーアーロンズ領ー


「どこにも見当たりませんでした」


冒険者ギルドはポンタ達を探していた。領主から冒険者が来ないと連絡が入り、門番の事を伝えたら来てないと報告されたらしい。


「ギルマスどうしましょう」


「王都の港町ギルドに連絡を入れておいてくれ。領主には俺から話をしてくる」


ポンタ達が漁港の船着き場で飯を食ってるとは思わず街中を探していた冒険者達。しかしポンタ達はどこにも見当たらずギルマス案件となっていたのだった。



ーヴォルフ邸ー


「ポンタ殿から連絡がございました」


執事が手紙をヴォルフに渡す。


「ほう、北の森に獣人の賊がいるので実戦訓練相手にどうかだと?面白い情報を持って来るやつだ」


「いかがなさいますか?」


「北の港街での情報か。アーロンズの所だな」


「はい。ポンタ殿はアーロンズ領主の依頼を受けに行ったそうですが門番に獣人であることに差別を受けたそうで依頼をキャンセルして戻ってきたとの事でございます」


「やつがそう言ったのか?」


「いえ、冒険者からの報告です」


「ふむ、それであるのに討伐せよと言わんばかりの提案か。何を企んでおるのだ?」


「恐らく獣人の不始末は獣人が片付けた方が良いと思われたのでしょう。あの豚貴族のように」


「そういうことか。ふむ、北側は獣人差別も強いからいい機会ではあるな」


「向かわれますか?」


「当然だ。ポンタはいつにエルイムに出る?」


「8月1日でございます」


「ならば同日にアーロンズ領主に予約を取っておいてくれ」


「かしこまりました」



7月下旬にニッポネアの船が着いた。待ちに待った寿司職人だというのにちゃんと寿司を握って貰えないまま出発するのは残念で仕方がない。


大急ぎでアラキとハインツと親方で寿司カウンターの改装を打ち合わせる。タネを入れるショーケースは大まかにウィリアムとジョージに伝えてある。


「大将、バタバタして出ちゃうけどごめんね」


「ポンタ殿、大丈夫ですよ。我々もこちらの国に慣れないうちにお客に商品を出す訳にはいきませんから。こちらの人の好みを調べながらお待ちしてますよ」


大将と職人がもう一人。見習い3人の体制で来てくれた。見習いといっても一通り出来るらしい。


「楽しみに帰ってくるから」


「はい、我々も楽しみにしております」


ポンタ達は全ての納品を終え、自分のいない間のズーランダとの仕入れと納品はレッキスに任せておいた。



エルイムに出発するのに港に向かうと多くの騎士達に敬礼される。


「ポンタ殿、お待ちしておりましたぞ」


「ロバートさんも行くの?」


「第一王子と第三姫が式典に出ますのでな。私も同行をいたします。後ほどご紹介させて頂きますので」


「別に紹介してくれなくていいですよ。式典の時ぐらいしか会わないだろうし」


「船で一ヶ月近く一緒なのですからそういう訳には参りませんよ」


そっとしておいてくれればいいのにとポンタは思うのであった。




ーアーロンズ領主邸ー


「よ、ようこそヴォルフ伯爵様」


「うむ。北の森に獣人の賊が潜んでいるとの情報を聞いたのだが間違いはないか?」


「わ、わざわざ王都軍が討伐に来てくださったのですか」


「討伐ではない。賊を実戦訓練の的にしてはどうと補佐隊大隊長から提案を受けてな」


「補佐隊大隊長ですか?」


「そうだ。ここの門番に嫌な顔をされて追い返された我が王都軍の補佐隊大隊長からの提案だ」



アーロンズの港街は騒然となっていた。


王都軍の兵士が領主の屋敷の前に殺気立って隊列を組んでいるのだ。


「おいおい、ウチの領主は国と敵対でもしたのか?」


「いや、領主様は中立派のはずなんだかな。敵対してたら領主邸を囲むんじゃねえーか?」


「そういや隊列を組んだままだな。えれぇ殺気立ってるけどよ」


「王都軍ってあんなに恐ろしいんだな。俺等なら睨まれただけでちびっちまうぜ」



「ウチの門番が大隊長に嫌な顔などをするはずがありませんっ」


「そうか。私の耳には幽霊船討伐の依頼を受けた時に獣人であるから門番に嫌な顔をされてキャンセルしたと聞こえてきたのだが」


「えっ?」


「名前はポンタ。冒険者でもあるがラメリアでも二人しかいない特級ポーション師であり王都軍補佐隊大隊長なのだよ。クソ忙しいあいつがわざわざ王都からここまで来てそんな嘘を付くと思うか?」


「まっ、まさか、依頼を受けたのにここへ来なかった冒険者が王都軍の…」


「ま、門番を信用するかどうかは貴様に任せる。それより賊のいる地図を寄越せ。王都軍が殲滅してやるから貴様も見に来るが良い。しかし注意をしておけよ。ポンタはウチの兵士たちから人気が高いからな。お前は敵認定されていてもおかしくない」



ヴォルフはそうニヤッと笑ってアーロンズに言ったのだった。



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