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ポメラニアン転生 〜俺が望んだのはこっちではない〜  作者: しゅーまつ


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北の港街

ようやく北の港街に到着。ここもかなり大きな港街だ。


「どこに向かうのじゃ?」


「買い物だね。どんな魚介類があるか見たくない?」


「はよ行こっ」


ケイトはポンタの手を引いて早く早くと海鮮市場に向かった。王都の海鮮市場は露天みたいな感じだけど北の街は専用の海鮮市場の建物が建っていてたくさんの人が買いに来ている。


「王都もこんな風になってたらええのにな」


「王都は商人がガサッと仕入れて王都内に売りに行ったりしてるからね。こことはちょっと商売のやり方が違うんだよ」


北の港街は港街で生活が成立しているようで個人客が多いのだ。ここは漁業で成り立ってるって感じだな。


「見た事がないやつ売ってんな」


「確かに魚の種類が変わるね」


王都の港町と同じような魚もあるけど全く違うものもあるよな。


獣人の姿は少ないのでめちゃくちゃ見られるけど気にしない。それに俺達は小さいから人混みに埋もれてしまいそうだ。


ソフィアが危ないので抱っこして見て回る事に。もうおっさんに尻を触られたりするのは諦めよう。ここでは俺は無名の獣人だ。


「あれなんなん?」


とケイトが見たものはエビ。


「オッチャン、これボタンエビか?」


「そうだ。一盛り1500Gだ」


山盛り入って1500Gとかかなり安い。


「たくさん買っても大丈夫?」


「買えるなら好きなだけ買え」


獣人だから金を持ってないと思われたのかな?


「じゃ、全部頂戴」


「は?全部ったら20万Gぐらいになるぞ」


「身分証で払えるよね?」


「お、おぉ…」


他にもホタテ貝みたいなものや甘エビ、アワビ、ツブ貝みたいなのを買い占めていく。


「こんなにどうするんだ?」


「食べるんだよ。俺達は王都から来たからここの魚介類が珍しいんだよ。どれも旨そうでいいよね」


「王都から来たのか?今日は船が着く日じゃないぞ」


「あちこち観光しながら陸路で来たんだよ」


「いい身分だな。何やってんだお前ら?」


「メインはポーション屋。他にも異国の物を売る店とか色々とね」


「へぇ、獣人の癖にすげぇな」


「そう。獣人も色々と凄いんだよ」


もう獣人の癖にと言われても腹も立たない。北に来るほど獣人の地位は低いみたいだからな。物をちゃんとした値段で売ってくれるだけでいいわ。


店先にあるものを全部買い占めて60万Gのお支払い。もっと値段が高いだろうけど全部と言ったことで負けてくれた。


お支払いの身分証を渡す。


「お前、そのなりでA級冒険者だと?ポーション屋ってのはどうした?」


「これは個人的な買い物だからね。他の身分証にはお金を入れてないんだよ」


「他の身分証?いくつも持ってんのか?」


「商人ギルドのものとかね。後はズーランダのとか」


冒険者証はコディア、商人と軍のはラメリア、あとはズーランダの貴族証だ。


「お前何者だ?」


「ウチらは特級ポーション師なんやで」


とケイトが尻尾をフリフリしながら自慢する。


「特級ポーション師ってなんだ?」


大きな街とはいえ王都から離れているから知らないのも無理はないな。自慢気に言ったケイトはちょっと残念そうだった。


ここでのお買い物は終わり、次は見た事がない魚を買いに行く。


「なんか赤くてでっぷりした魚があんで」


ノドグロみたいな魚だな。ボタンエビとかもそうだけどかなり深い所の漁をする技術があるみたいだ。


「買えるだけ買ってもいいかな?」


「おう構わねぇけど、ウチの魚は高級魚だから高いぞ」


「だろうね。見事な魚ばっかりだよ」


この市場はどこも氷をふんだんに使ってるから鮮度が高い。


ここでの買い占めは100万Gを超えた。


「あれはなんや?」


「ウニだね。食べてみたい?」


小さな店でおばちゃんが売ってるのは殻付きのウニ。自分で殻から出した事がないけど旨く出来るだろうか?


「おばちゃん、これ身だけにしてくれることは可能?」


「別料金をもらうけどいいかい?」


「全然いいよ」


「じゃあいくつだい?」


ウニは人気が無いのかめっちゃ安い。1つ20Gで殻を剥いたら10Gプラス。


「全部買ってもいいなら全部お願い」


「え?」


「ダメなら売ってくれるだけでいいよ」


「そんなに食べるのかい?」


「うん。思いっきり食べてみたいから」


「そんなに食べる人初めてだよ。獣人には人気があるのかい?」


「人族も好きな人は好きなんじゃないの?」


「あんまり人気がないんだよ。ウニは簡単に捕れるからあたしらの小遣い稼ぎ程度に売れるぐらいだね」


ところ変わればってやつか。あの魔導冷凍庫なら仕入れられるかな?


「みんなはどうやって食べるの?」


「スープに入れたりとかだね。他の食べ方があるのかい?」


「ウニは生で食べるのが一番だよ」


というとゲッと嫌な顔をされた。獣人はこれを生で食べるのかという顔だ。


「一緒に食べてみる?」


「いいよ、気持ちが悪い」


100程あったので3000Gをお支払い。他の買い物をしている間に剥いといてくれるとのこと。


「随分と妙な物が売っておるの」


ドラコが指を指したのはカニだ。かなりイガイガしたカニだ。足が8本だからこれはタラバカニ系だな。カニというかヤドカリの一種だ。値段も安い。タラバと同じぐらいの大きさで3000Gとかだ。これも買い占めていく。


次は塩干物。


やった、塩鮭があるじゃん。


「おっちゃん、これ全部買ってもいい?」


「おう、塩をしてあってもそんなに日持ちはせんぞ」


「大丈夫」


「サモンが好きならあっちに生のが売ってるぞ」


と教えて貰った店にいくとデカいのと今の赤い身のと売っていた。


「これ全部買っていい?」


「か、構わんが…」


もう遠慮せずに買い占めていこう。


「秋に来たらまた違う種類のサモンが手に入るぞ」


「それ、卵持ってる?」


「ああ、持ってんぞ」


「その卵は売ってる?」


「腹の中に入ったまんまだ。釣り餌にでも使うのか?」


「いや、食べるんだよ」


そういうと嫌な顔をされる。獣人はそんなもんを食うのかとか聞かれた。


「ちゃんと処理したら旨いんだけどね。誰も食べないなら卵だけ売ってとか出来るかな?」


「そんなもんただでくれてやるよ」


これは絶対に秋にもここに来なければならない。エルイムから帰ってきたら絶対にすぐにここに来なくては。


他にもニシンがいるか聞いたら春に捕れるそうでその卵も捨てるらしい。ニシン自体も下魚扱いでかなり安いらしい。これは勿体ない。


この街にはちょっとケモミミ商会として人をおいた方がいいかもしれない。


王都の港町みたいに漁師と専属契約できないかな?


もうかなり買い物をしたのでウニを受け取って市場を出ようとするとエビを買った人が俺達を探してやって来た。


「良かった。探したぜ」


「ん、お金払うの間違ってたりした?」


「いや、違う。お前A級冒険者だろ?このあと冒険者ギルドに行くか?」


「いや、遊びに来ただけだから寄らないよ」


「この街には昔からの依頼が出てんだけど見てってくれねぇか?」


「なんの依頼?」


「幽霊船の討伐依頼だ」


え?


「そんなの出るの?」


「ここんところは出てねぇみたいなんだけどよ、あれが出ると漁が止まっちまうんだよ。A級ならなんとかできねぇかと思ってよ」


幽霊船か…


「海賊船じゃないの?」


「いや、幽霊船だ。アンデッドが乗ってやがるって話だ」


アンデッドか。それならなんとかなるかもしれないけど今回仕事を受けるの嫌だな。


と、嫌そうな顔をすると依頼だけでも見て行ってくれと頼まれた。



「どうするん?」


「内容を見てからランガス達と相談するよ。船の上で戦うとか危ないしね」



とりあえずギルドに行ってみることに。


掲示板を見てもそんな依頼は出ていないから受付で聞いてみるか。


「すいません」


「はい、依頼ですか?」


「いや、俺達冒険者登録もしてるんだけどね、市場で幽霊船討伐の依頼を見て行ってくれと言われたんだけど」


「え?あれを受けてくれるんですか?」


「受けるかどうかは依頼を見てからね。それに今回は遊びに来てるからフルメンバーじゃないんだよ」


そう言うと依頼書を出してきてくれた。


【幽霊船討伐依頼】漁場に現れる幽霊船の討伐。報酬1億G。


依頼主は北の街の領主。ここはアーロンズ領と言うらしい。


「随分と報酬が高いね」


「これは昔からずっと出ている依頼なんですよ」


「幽霊船が出たらどうすんの?」


「漁をやめて皆が引き上げてきます。一度出ると2週間ぐらい漁が出来なくなるんです」


漁業が盛んなこの街で2週間も全船が漁場に出れないと大損害だな。


もう少しに詳しく聞くと急に霧が立ち込めだして来たら幽霊船が出る前触れだそうで、春先は普通のもやか幽霊船の霧か判別が出来なくて漁に支障が出るとのこと。


「幽霊船は悪さをするの?」


「接舷してアンデッドが乗り込んで来るんです。小さな船だとひとたまりもないですよ」


幽霊船は大昔の海賊船ではないかと言われているようだ。


「それを討伐したらその船とか貰えんの?」


「え?」


「魔物とかなら討伐したら素材とか手に入るじゃない?海賊船なら船も貰えるのかなって」


「あ、はい。本当にこの依頼を受けるつもりですか?失敗するとマイナスポイントが物凄く付きますよ」


「どうすれば失敗扱いになんの?逃げられたら?」


「討伐に向かった船が沈められて損害が出たら失敗になります」


「その船はどうすればいい?」


「領主の船を借りる事になります」


「了解。じゃあ討伐に出て無理そうだなと思って引き返したら失敗にならないんだね?」


「はい。その代わり船を出した費用が請求されます。一日当たり人件費含めて100万Gになりますよ」


「じゃあ、幽霊船が出たと聞いてから出ないとダメだね」


「そうなりますね」


じゃあすぐに受けるのは無理だな。いつ出るかわかんないし。


「ありがとう。縁があったら受けるかもしれない。けど俺達は日頃は王都にいるから無理かもね」


「王都から来られてたんですか」


「うん、王都の港町ギルドがメインなんだよ。俺達はほとんど活動してないけど仲間はあちこちで依頼を受けてるよ」


「じゃあ、幽霊船が出たら連絡を入れますね。冒険者証を見せてもらってもいいですか?」


「はい、どうぞ」


受付に冒険者証を渡す。


「えっ、A級…?」


「俺のA級はたまたま持っていた素材が物凄く高く売れたからランクが上がっただけなんだよ。討伐によく行く仲間は実力でA級とB級に上がってるから」


「なんの素材ですか?」


「八つ目フクロウだよ」


「もしかしてエルイムの贈答用魔物依頼ですか?」


「そうそう。仲間はピテカンとオーガの上位種を出したんだ」


「あー、わかりました。幽霊船が出たらぜひ連絡をさせてもらいます」


受付の人はニコニコとそう言った。これで本当に討伐出来たら査定がかなり上がるだろうからな。


相手がアンデッドならポーション銃でなんとかなるだろう。


ポンタはそう気楽に考えていたのであった。

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