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ポメラニアン転生 〜俺が望んだのはこっちではない〜  作者: しゅーまつ


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他国へ行く事に

「この国では獣人は差別されてるんだね?」


「表立って嫌がらせされるほどじゃねーけどな。人族より生き辛いのはたしかだな」


そうなると恋愛すら難しいかもしれん。


ランガスの説明によると北にアリーシア帝国という国があり、そこは人族至上主義で獣人は奴隷扱いされるため獣人は寄り付かない。ここはコディア王国、西にオールディ王国、東にソレムス王国が並んでいて3カ国は連合国と呼ばれている。アリーシア帝国は虎視眈々と他国に侵攻しようとしている国らしく、3カ国が連合を組み対抗しているそうだ。

元々コディア王国はアリーシア帝国と面していることもあり、アリーシア程では無いが人族が上だという認識はあるとのこと。


「南側は?」


「大陸の最南端にズーランダ王国という獣人の国があってな、コディアとズーランダの間にラメリアという国がある。ラメリアは様々な人族や獣人が住んでるでかい国だ。お前が生きやすい国はズーランダかラメリアだろうな」


なるほど。北は人族が多くて南下するほど獣人が増えるって感じか。 


「俺は獣人の国、ズーランダに行ったほうがいいかもね。かなり遠い?」


「陸路で行けばどれだけ時間が掛かるかわからん。西のオールディーに行けば海路があるから船で一ヶ月ってところだ。オールディーまで陸路で一ヶ月程度だから全部で2〜3ヶ月くらい掛かるぞ」


「うへっ、そりゃ大変だな。道中魔物とかいるよね?」


「そりゃいるさ」


さて、自分一人で行くには危険が高過ぎる。かと言ってこの国にこのままいると嫁さんどころか彼女すら難しそうだ。


「ラメリアは陸路でどれくらい?」


「ラメリアは連合国を合わせたぐらいの規模があるからな。それに北側は人族寄りだからどっちにしろ南側まで行かねばならん。森林を抜けてラメリアに入って南側に行くより、海路でズーランダに入ってからラメリアの南側に行く方が早いかもしれんぞ」


「行ったことある?」


「いや、連合国内しか行ったことはねぇ。だからこの話は聞いた話だから実際は違うかもしんねぇな」


交通網や情報網が発達してなさそうなこの世界だと当然だな。ランガスは高ランク冒険者だからこそ色々と知っているのかもしれん。


「どうするかもあるけど、しばらくこの国で稼いでお金を貯めてからじゃないと無理だね」


「お前の取り分は100万Gやる。これでなんとか旅費は出ると思うぞ。護衛を頼むには足らんがな」


「100万もくれるの?」


「お前稼ぐあて無いだろうが。俺はまだ余裕があるから気にすんな」


ランガスには借りがどんどん大きくなるな。


「ランガス、俺はこの借りは返せんぞ」


「貸しでもなんでもねぇ。お前の報酬だ」


こいつ本当にいいやつだな。力ずくで襲おうとしたことは水に流してやろう。


「ところでよ、結局お前の天職ってなんだったんだ?」


「俺にもよくわからないんだよね。使徒って出てたんだけど」


「使徒?なんだそりゃ?」


「な、わかんないだろ?わかんない事を考えても無駄だからもう別にいいよ。天職は気にせずに薬草採取と商売人でもやるよ」


「薬草採取はまぁいいが商売人ってなんか勝算はあるのか?」


「俺、実はアイテムボックス持ちなんだよね」


「アイテムボックス?」


「荷物を空間にしまっておけるやつ。アマンダも使えてたじゃない」


「あれは収納魔法だぞ。お前も使えるのか?」


「まぁね。だから商品を運ぶだけでもお金稼げそうじゃん」


「なるほどな。収納魔法が使える奴は冒険者パーティでも引く手あまただ。だがな、それは自分の身を守れるぐらい強くなるまで秘密にしとけ」


「なんで?」


「利用されるからだ。体のいい荷物持ち扱いされるのが落ちだ。ダンジョン攻略とか専門にやってるやつはポーターと呼ばれる荷物持ちを雇う事がある。力の無い奴は低賃金で働かされるからな。商人にしてもそうだ、個人でやるには信用がないから仕事を発注するやつはいねぇ。だからまずは雇われることになるだろ?冒険者と同じく力がねぇとこき使われて終わりだ」


世知辛い世の中だな。


「じゃあ、比較的安全な所で薬草採取するぐらいしか出来ないね」


「オールディーに行きがてら採取すりゃいいんじゃねーか。薬草なら途中途中にある村や町でも売れるからな」


「道中が危ないじゃんかよ。馬車に乗っていくとかしないと」


「付いてってやるよ」


え?


「ランガスが付いて来てくれるの?」


「他に誰がいるんだよ?そんかし、依頼を受けつつ移動するから時間は食うぞ」


「同じパーティは無理なんだろ?」


「だから付いていってやると言ったんだ。ソロ同士ってやつだ」


「あ、ありがとう。お言葉に甘えておく」


「なら決まりだな。さ、ギルドに登録しに行くぞ。身分証が無ければ他国には入れんからな」




「あらランガスさん。その可愛い娘はどうしたの?」


「冒険者になりたいやつを連れて来てやっただけだ。お前字は書けるか?」


ここの文字はローマ字をアレンジしたような奴だから分かる。書き慣れてないから時間は掛かるけれども。


「名前ぐらいは書けるよ」


「ではこちらに名前の記入をお願いします」


えーっと、書くのは名前と性別だけか。


名前はポンタ、性別は男。


「えっ?」


受付嬢が今は書いたのを見て目を丸くする。


「女の子はこう書くんですよ」


「いや、男で合ってます」


「あらぁー、そうなの。てっきり女の子かと…、ごめんなさいね」


「いえ大丈夫です」


身分証代わりの冒険者証をゲット。ランクは一番下のE。仕組みはランガスから説明を受けたから省略してもらった。


ギルドの酒場で飯を食いながらランクアップの基準を聞くことに。



「依頼達成したら報酬を貰うだろ?その1/100が冒険者としてのポイントになる。失敗したら報酬額の3倍のポイントがマイナスされる」


「EからDに上がるのは何ポイントぐらい?」


「1万ポイントだ。つまり100万Gの報酬を稼いだらDに上がる。Cに上がるには50万ポイント。つまり5千万Gの報酬を稼がないとなれん。Bには5億G、Aには10億Gだな」


「えっ?ランガスは10億以上稼いでんの?」


「そうだぞ。ギルドに出ている普通の依頼を受けるだけならまず無理で、高額の指名依頼をもらえるようになれば可能だ」


薬草売って5千万Gを稼げるとは思えんな。こりゃ俺には冒険者として大成するのは無理だ。Cまで上がれる奴が少ないというのも頷ける。冒険者なんて若い間しか活躍出来ないだろうし。


「お、お嬢さん初めまして」


ランガスと話をしていると誰かが話し掛けて来た。


ん?この臭いは… ゲッ、ラークじゃんかよ。


「なんだよ?今はランガスと話をしてんだよ」


「よ、良かったら一緒に食べませんか」


こいつ話を聞いちゃいねぇ。


「だから今ランガスと話をしてるっていってんだろ。臭いからあっちにいけよっ」


あっ、つい臭いと言ってしまった。また揉めるかもしれん。


「す、すいません。依頼続きで風呂に入れなかったもんで」


ん?怒らずに謝った?


「なんだよ。素直に謝るとか気持ち悪ぃな。前みたいに怒るかと思ったのに」


「ど、どこかで会いましたか…、いや、こんなに天使みたいな可愛い娘に会って忘れるはずがねぇ」


「あのなぁ、俺は男だ。ほら冒険者証を見ろ」


「えっ?あっ…本当に男…。いや、この際獣人でも男でも構わねぇ。俺と付き合って下さいつ」


「ラーク、止めろ。こいつはもうすぐこの国を出る」


「ど、どこに行くんでやんすかっ」


「ズーランダだ。獣人にとってこの国は生き辛いからな」


「お、俺が守ってやるから付き合って下さいっ」


「俺のことはランガスが守ってくれるから遠慮しとく。はいサヨウナラ」


「ランガスっ、てめぇAランクだからってズルいじゃねーかよっ」


「うるせぇ。飯食ってんだからあっちに行けよ。ポンタが迷惑してんだろうが」


「ポンタ…?」


「あらぁ、あの時の子犬ちゃんだったの?」


後ろからメビウスがやってきた。


「犬じゃなくて獣人だったわけ?」


「そうだよ」


「獣人って、子供の時から獣人よね?」


「俺は特別な種族なの」


「ウフフフ、珍しいわね。やっぱりあの時に無理やりでも貰っておくんだったわ。どう?私と暮らさない?」


あの胸には惹かれるけど実験されそうだから止めておこう。


「遠慮しときます。俺は嫁探しに行かないとダメなので」


「お嫁さん?私がなってあげようか?」


えっ?マジで、異世界バンザイ。生まれて初めてモテた。


「えっと、あのまずは彼女からと言うことで…」


「プークスクス」


そう返事をしたら吹き出すメビウス。


「何本気にしてんのよ?」


えっ?


「ポンタ。からかわれてんだよ。メビウスが獣人と付き合う訳ねぇだろ。それに美人ではあるが異常者だからやめとけ」


くそっ。男の純情を踏みにじりやがって。


「あーっ、もうっ二人共あっちに行って」


純情な男心をもて遊ばれたポンタはイラッとしてあっちいけシッとした。


「あら、可愛い小犬でも吠えるのね」


こいつ…、ファングアタック食らわしてやろうか。


ランガスがいい加減にしろと凄んだ事で二人はあっちに行った。ラークもランガスが本気で凄んだ事を理解したら目線を反らした。さすがAランク冒険者だ。


そして次から次へとムサイ男連中が声を掛けてくる。


「お前、モテモテだな」


「男にモテても嬉しくない」


「そうかよ。まんざらそうでもなかったじゃねーかよ」


「冗談はよしこさん。もうここ出よう。うっとおしくて敵わん」



帰り際にもヒゲの男に投げキッスされたり尻を触られたりした。貞操の危機を感じたポンタはそそくさとギルドを後にしたのであった。

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