プロローグ
「ごめんなさい。私は可愛い感じの人が好きなのでゴリマッチョはちょっと…」
犬飼悟は初恋の人にもっと筋肉のある人が好きとフラれ筋トレに励んだ。しかし、その後は好きになる人なる人全てに同じように断られ続ける人生だった。
現実の女性にフラれ続けた悟はラノベ、アニメ、ゲームの中に自分を投影し空想の中に幸せを見つけるようになった。それは社会人になりけっこうなおっさんになったころまで続いたがある日人生の転機が訪れる。
それはペットショップで偶然見付けたポメラニアン。ウルフセーブルという変わった毛色の犬だった。フラれ続ける人生、いくら好きでも画面から出て来ない嫁への虚しさから悟は犬を飼った。名前はたぬ吉。
ゴリマッチョの悟でもたぬ吉を連れて散歩をすると女の人から声をかけられるようになる。
「こんにちはー、今おいくつですか?」
「はいっ、34歳です」
「あ、あの…犬の年齢を聞いたんですけど…」
声をかけてこられるのは嬉しいが目当ては自分ではなくたぬ吉なのだ。
「お前はいいよなぁ、モテモテで」
「キャンっ」
たぬ吉は俺から見ても可愛い。モフモフで愛想が良くて頭もいい。芸を教えたらすぐに覚えるし。
悟は仰向きに寝転んでたぬ吉を抱き上げて話しかける。
「なぁ、たぬ吉。俺も今度生まれ変わる時にはお前みたいに可愛くなれたらいいのになぁ。そうすれば現実でも彼女が出来るのに」
「キャンっ」
そして飼い始めてから十数年でたぬ吉は天寿を迎えて虹の橋の向こうへと行ってしまった。
「たぬ吉っ、俺を置いて逝くなっ」
悟は寂しさのあまり、たぬ吉を追うように虹の橋を渡ってしまったのであった。
〜虹の橋の向こう側【天界】〜
「可哀想な者よ」
どこだここは?
何もない部屋というか空間から声が聞こえる。返事をしようにも声が出ないというか身体すらない。
俺はたぬ吉を追って橋を渡ったけどどこに来たんだ?
しかし今話しかけてきたやつは俺のことを可哀想な者とかなんだよ?失礼なやつだな。
「可哀想な者よ、次の人生はお前の願いを叶えてやろう」
次の人生?ということは俺は死んだのか?
それと願いを叶えてくれるだと。だとすると次の人生はモテモテ人生になるってことか?そんな事をしてくれるなら失礼なやつだと言ったのは謝ってやろう。よし、早く生まれ変わらせてくれ。早くっ 早くっ!
犬飼悟は切り替えが早かった。伊達にフラれ続けた訳ではないのだ。
「あの光の輪をくぐれば生まれ変わる事が出来る。その前にいくつか説明しておかねばならぬことがある、まずは…」
いやっほうっ!あっちの光っている所に行けばモテモテになるんだな。善は急げだ、れっつらごー!!
「あっ、これ、待てっ、待たんかっ。あっ… 説明も聞かずに行ってしまいおった。しようがないやつじゃのぅ」
悟は神の声を最後まで聞かずに生まれ変わりを選んだ。光の輪がもう一つ有りどちらを選ぶか説明を聞く前に。