elimination
あるところに孤独な少年がいました。
少年は、人の海の中で孤独なのでした。
街を歩いても、電車に乗っても、彼を知る人は誰もいません。
少年はもう、誰の目にも止まらず、誰の記憶にも残りません。
暑い夏が終わり、秋が過ぎてしまったので、身を刺すような寒さの冬になりました。そこかしこから、楽しそうなクリスマスソングが聞こえてきます。ふと気づくと、いつもの道にイルミネーションが施され、恋人たちが行き交っています。
冷たく澄んだ空気と、暗い夜道。
カツカツと響く自分の足音。
吐いた白い息は、急いで消えていきます。
少年は立ち止まり、イルミネーションを見上げました。少年がそれをこんなにも美しいと思うのは初めてのことです。少年にとってそれは精緻な彫刻のように感じられました。
そしていきおい、少年の目からは涙が溢れるのでした。