イベント編その3
登場人物
ルイス 主人公。王子様を目指して修業中。無類のドラゴン好き。
ペルタ 勇者。ルイスの護衛。ルイスに協力してもらい、結婚相手の王子様を探している。どこか魔女っぽい。
アンドリュー 勇者。ルイスの護衛。真面目で言動がお堅く厳しい。
ユメミヤ 旅の娘。貞操観念が強くおしとやか。ルイスに片想いしている。
ロッド 王子様。ルイスと歳が近く仲が良い。
☆皆既月食
ルイス「皆既月食、神秘的だったね。今夜は皆既月食に月が天王星を隠す天王食も加わったんだって。皆既月食と惑星食が重なるのは442年ぶりとか。凄いよね」
ペルタ「数百年の時を超えそんな事が今起こるなんて不吉な! 残念ですが、人類は滅亡します」
ルイス「アチャー、僕の仲間にこういう人がいたとは。魔女みたいな黒いローブ着て何かと思えば」
ペルタ「なにを軽いノリで対応してるの? 深刻に考えなさい!」テーブルドン!
ルイス「そんなに怒らないで、冷静になってよ。ねぇ、アンドリューさん」
アンドリュー「なぜ、ルイスはそんなに冷静なんだ? 人類に滅亡の危機が訪れたのだぞ」
ルイス「えぇ……信じるの? 人類滅亡よりショックだよ。アンドリューさんがそっち側なんて、なんか今こう、僕の冒険の基盤が根底から揺らいだというか」
アンドリュー「そう、ルイスの冒険にも影響がでるだろうな。オトギの国の住人はこれから、滅亡に備えて行動しなければならなくなるからな」
ルイス「ああ、そうか、アンドリューさんはオトギの国の生まれだから考えが中世なんだ。なら、ユメミヤは」
ユメミヤ「たとえ、人類が滅亡に向かおうとも、私はこのままルイス君についていきます」
ルイス「うん、常に戦国時代のイクサの国から来たんだからそうなるよね。それなら、小さい頃から世界中を冒険してきたペルたんが滅亡を信じるのはおかしくない? 文明の進んだ国にもいたんじゃないの?」
ペルタ「文明の進んだ国なんて冒険しないわよ。冒険するなら文明の発達していない未開の地でしょ?」
ルイス「そうだね、わずかな希望にすがろうと考えが錯乱してしまっていたようだよ。しかし、ペルたんまで中世の人だったとは。僕一人でどうすれば……」
アンドリュー「文明の進んだ国から来たルイスよ。冷静なのはまさか、人類滅亡を回避する方法を知っているからか?」
ルイス「滅亡回避の方法というか、そもそも人類は滅亡しないんだよ」
アンドリュー「な、なに!?」
ペルタ「なんですって!?」
ユメミヤ「本当ですか!?」
ルイス「これだけ食いつかれるとなんだか嬉しいなぁ。救世主になった気分だよ。そうだよ、皆既月食なんてただの現象なんだから、それ以外の何でもないんだよ。人類滅亡とは無関係だよ」
アンドリュー「そう冷静に言われると、そんな気がしてきた」
ペルタ「それにしても、いつもイベントだとはしゃぐルイス君が、妙に冷静ね」
ルイス「こういう時は冷静にならないとね。でも、月食観察の時は、はしゃいでたでしょ?」
ペルタ「そうだったわね、いつものルイス君だった。“可哀想に、これから人類が滅亡するとも知らずに”って憐れんでいたけど、ルイス君の態度が正しかったのね」
ルイス「憐れまれてたんだ。はしゃいでた自分が恥ずかしいというか悲しいというか。まぁいいか。とにかく、みんなわかってくれた? 人類は滅亡しない」
ペルタ&アンドリュー&ユメミヤ「人類は滅亡しない」
ルイス「よかった、さぁ、寝よ」
扉バーン!!
王子様達「人類は滅亡する! その危機を回避するための作戦会議を開こう!!」
ルイス「えぇ……」
ペルタ「助けてっ王子様ー!!」
アンドリュー「やはりか。ルイス、俺達を気遣っての嘘をありがとう」
ユメミヤ「ありがとうございました、ルイス君。しくしく」
ルイス「待って、みんな、王子様より僕を信じてよ! そうだ、ロッド! 君は文明社会から来た王子様だろ!? 人類滅亡なんて信じてないよね?」
ロッド「信じてないけど、なんか楽しそうだからさ」
ルイス「月食だけじゃなく、この事態まで楽しめるなんて凄いよ……僕も楽しんじゃおう。もうどうなっても知らないからね!」




