表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

ヒロイン転生なんて聞いてない!

ゆるい設定で勢いで書きましたので細かなところの設定については温かい目で見ていただければと思います。


短編を連載にして少しずつ書きたかった細かなお話を書いていこうと思います。

「マリー!マリー!!しっかりして、目を開けて!!!」




 母の声で、ぼんやりした頭をふって目を開ける。周りの皆が息をのむ音が聞こえる。




「マリー!本当にあなたという娘は!来週から学園に通うというのにいつまでも心配かけて!お転婆なのも大概にしておとなしくして頂戴!」




 母の目から大粒の涙が次々にこぼれだす。




ーーん?母??


  このペネ○ペ・クルスもかくやという美女は、河合茉莉わたしのお母さんでは断・じ・て・な・い!!


  私のお母さんはもっとこう、健康的ぽっちゃりで、刑事ドラマが好きで、大きな口を開けて笑うおばちゃんだ。








■■■




 私、河合茉莉は都内のIT系でプロジェクトマネージャーをしているごくごく普通の会社員だ。金曜日の業務明け、長期で担当していた案件が終わったのだが、このご時世飲み会が出来ないからせめて自宅でちょっとリッチなビールでも…とコンビニに買い出しにでかけた。その途中でふらついた(今思えばあれ絶対酒気帯び運転)の車が歩道に乗り上げてきて、信号待ちしていた私の目の前に眩しいライトが視野いっぱいに広がった。




ーーいざその瞬間は叫んだり、逃げようとしたり出来ないんだなぁ…




 なーんて妙に冷静に状況分析したりして。




 そう、たしかに私結構やばかった。


っていうか、その状況から鑑みるにこれっていわゆる転生モノ?


転生キタコレ??




 あれでしょ、悪役令嬢に転生して今度は婚約者の殿下に関わらないように穏やかに生きるために頑張るの的なやつでしょ?




 あーーーー、、なんか、、目開けたくなくなってきた。。




■■■




「マリー!聞いてるのですか、マリー!」




 また母の声で現実に引き戻された。




「先生がいらしたから様子を見ていただきましょう。ねぇ先生、骨が折れたり大きな怪我といった様子はないのですが頭をうっていたらどうしましょう…」




 その言葉にぎょっとした。




「えっ…、お母様、骨が折れるって私どうしたのかしら?実のところなんでこうなったのかよく覚えていないの」


 とっさに質問してみた。






「あなたがどうしてもと言って馬で遠がけに行ったんじゃない。馬の練習もろくにしないですぐに遠がけに行きたいなんていうから、危ないんじゃないって言ったのに!周りが諌めることもよく聞かずに落馬するなんて、お母様は生きた心地がしなかったんですからね!」




ーーう、う、うわぁ…私マリーなにやっちゃってんの…流石にそれはアカンやろ。。。


  落馬って、もしかしてもしかしなくてもマリーがお亡くなりになって、かわりに私の魂がこの肉体に入った感じ、的な?でも記憶は一応引き継ぎ受けられる不思議な転生システムになってて言語やマナー、一般常識はわ・か・る・わ…




「お母様、ご心配ご迷惑おかけしてしまって本当にごめんなさい。もう二度としないわ。」




ーーっていうか、悪役令嬢だったらあれかしら、公爵令嬢とか侯爵令嬢的な感じなのかしら。


  流石にお嬢様だと乗馬はしないのかなぁ。


  個人的には引き馬だったら今後機会があったら乗ってみたい…けど今そういうアレじゃないわよね。っていうか今後一生乗馬は許してもらえないわねこの空気。




 なーんて呑気に考えていたらその間にも触診・問診を地味に差し込んでいた主治医からは、怪我の問題も頭の問題もないとお墨付きをもらった。




「来週から寮生活でお母様と離れて過ごすのが今からとても心配だわ…。ねぇ、ハワード、この子義妹のこと、しっかり頼むわよ」


「わかっております、お義母様。」




 その瞬間、初めて義兄がベッドの側にいることに気がついた。




ーー待て待て待て、「ハワード」が義兄って言った?このアッシュグレーの髪にこの顔……


  えっ、、、てことは、、、


  「マリー」に「ハワード」と来たら、これは「Flour de Ecole 〜秘密と花園〜」のゲームだわこれ!






  マリーって、、、私、、、








  ヒロインのほうじゃーーーーん!!!!!!!!!!!!










「お母様、怪我がないか私自身でも見てみたいので鏡をお借りしてもよろしいですか?」


「えぇ、もちろんよ」




 そいういうと侍女が手鏡をさっと持ってきてくれた。




ーーおぉぅ…


  ピンクブロンドのふわふわの髪、青の洞窟みたいにグラデーションを見せるキラキラした碧い瞳、


  (化粧もしていないのに)ぷっくりした桜色の唇、真っ白なすべすべの肌。


  ヒロインてかくあるべきよねぇ……今は自分の顔だけどいつまでも見ていたい。






 ってそういうこと言ってる場合じゃないわ!!状況を整理しよう。その前に皆部屋から一旦出ていってもらって、ノートにきちんと整理しよう。




 まず、私が転生したと思しきこの世界は、以前ハマってやっていた乙女ゲーム「Flour de Ecole 〜秘密と花園〜」の世界ですな。でもこのゲーム、一年半くらい前にハマってやっていたものでその後いくつかハマったゲームが有って正直細かな設定が抜けてるから、今思いつく限りのイベントやフラグを思い出していこう。




 基本ゲーム設定的には超王道の乙女ゲーム。王立魔法学園で攻略対象と悪役令嬢をスパイスに恋のストーリーを進めてハッピーエンドを目指す内容で変な設定は特になかった。




 まず私自身のことでしょ。




 私、マリーは子爵令嬢。お父様には正妻がいらしてその方との間に長らく子が産まれなかったため遠縁から引き取られたのがハワードお義兄様。ハワードお義兄様がいらして数年して、正妻の方が病を得てお亡くなりになって、お父様はお義兄様がいたこともあって後妻を取ることに優先順位をおいていなかったみたい。そのおかげで、女主人のいない屋敷はあたたかな気配りや社交があまりなく、ハワードお義兄様の幼少期はお忙しいお父様に構ってもらえずかなり寂しい思いをされたというのがゲームのエピソードにあった。




 私のお母様は貧乏な田舎男爵の令嬢だったんだけど、相当見た目が美しくてデビュタントの際に王都にやってきた舞踏会でお父様が(年甲斐もなく)一目惚れしちゃってソッコーで結婚にこじつけて出来たのが私、マリー。だから家族にはかなり愛されて育った。お母様は、貧乏な田舎男爵出身ということもあって、身に染み付いた倹約気質ケチが抜けきれずお金のかかる社交は必要最低限にとどめていたこともあって私はデビュタント前は人前にも出ず、相当のびのび育ててもらったおかげ(?)でかなりお転婆に育ってしまっていた。家族の口癖は、「口だけは閉じていろ、動くな、それだけでいい」だった。地味にひどい。






 次に大事なのは攻略対象でしょ。えーっと確か…




1. 王太子 鉄板だよね。確か金髪碧眼のいかにも王子様でスチルがめっちゃキレイだった。


2. 騎士団長令息 今王太子付きの騎士で、ツンデレ系の黒髪金眼のスポーツタイプ。


3. 義兄 アッシュグレーの髪に濃紺の瞳で寡黙なんだけど攻略したあとに見せてくれる笑顔がたまらない。キュン死。


4. 先生 これは学園に通い始めると出てくる魔法薬学の先生で柔らかいキャラメルブラウンの髪と瞳のワンコ系。だけど困ったときに頼れるギャップ。




で、まぁヒロインだからどのルートで行くか逆ハー狙うか裏キャラ行くかなんだけど。




 ……正直、全員ご遠慮させていただきたい!!!!!!!!!!!!!!!!


 熨斗つけて返品したい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!




→王太子ルート:転生してるのに王妃とかホント無理。もう少し身軽なポジションで人生を自由に楽しく過ごしたい。婚約者からの略奪愛のち王太子妃教育とか無理でしょ。


→騎士団長令息:あのキャラマジ脳筋だから正直価値観合わない。


→義兄:ヤンデレ入ってて監禁しちゃうから無理。メリバとか私には重すぎる。


→先生:生徒に手を出す倫理観がもう生理的に無理。ぶっちゃけ本気で無理。




 あーやばい。ヒロインとして楽しく生きていくの結構難しいんじゃないかこれ。なんと言っても悪役令嬢、いるんだよねぇ……イジメられるってわかってて学校行くのしんどいし、その結果悪役令嬢が断罪されるところ見るのも正直嬉しくはないし。




 ってことで、まずはあの鼻持ちならない公爵令嬢のフラグ折からかぁ、、、ホント骨折れるわこれ。なんで自分のじゃないフラグおらなきゃいけないのよ!悪役令嬢も転生しててくんないかなぁ……




 そしてもう来週からゲームスタートとか、ホントもうちょっとこの世界になれるバッファくださっても良かったんじゃないですかねぇ!?!?




■■■




 そんなことを言ったって時間は流れて「来週」はつまり「今日」なのである。あっさり入学式なのである。生で見る攻略対象はめっさカッコいいわけである。




 今日、ゲーム的には子爵令嬢だけど魔力量が異常に多い私は王太子と同じクラスになって高位貴族の一部令嬢にさっそく無視されたりとかしちゃって、何なら避けられちゃって初日早々浮いちゃうところを優等生王太子が気をつかって声かけてくれるところが出会いなわけである。




 で、だ。そういう八方美人な王太子の様子を婚約者の公爵令嬢が見ていて面白いわけがないんですよ。ということで初日からボッチな子爵令嬢わたしを、その後在学中ずっと気にかけてくれる上に生徒会まで一緒にやることになって、まぁ一緒に仕事していると仲良くなるから公爵令嬢は晴れて悪役令嬢爆誕なわけであるのですよ。




 ということは、私がボッチにならないように頑張る、というのがてっとり早い解決方法ですね。誰か友達作りましょう、と。と、ここまで思って教室に入ってみると私の後ろの席にはきれいなシルバーグレイの髪の美少女が座っていた。おお、眼福!




「あ、あの、ご機嫌よう。私マリー・ノアイユと申します。これからよろしくお願いいたします。」と勇気を振り絞って美少女に声をかけてみた。




 すると、その美少女は


「ご機嫌よう。わたくし、シャルロット・ド・リュジニャンと申します。以後お見知りおきを。」


 と、鈴のなるような声で言ってきた。




ーーえ、この子がシャルロット悪役令嬢なの?めっちゃくっちゃ可愛いんですけど!!!!


  え、この子が断罪とかホント世界の損失なんですけど。


  え、リュジニャンとか、ニャンとか、まじでホントの名前なの?可愛すぎない?




 この瞬間、私は思った。




ーーこの子を、プロデュースしよう。王妃になってもらってモード界を牽引してブームというブームに火をつけてもらおう。これは、「シャルロット・プロジェクト」だと思えばプロマネとしての腕がなるわ。一生プロジェクト立ち上げまくって花火どっかんどっかんあげたるわ…!!




ということで、悪役令嬢(予定)のとりまきになりました。

短編でいただいたアイデアを盛り込みながら、主役のマリーにももうちょっときゅんきゅんしてもらいたいと思い連載で書きはじめました。

面白かったら★つけていただけるととても嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ