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それでも前へ
初投稿よろしくお願いいたします。
………身体中に響く鈍痛。
安定しない視界。
動かない右腕。
幾多にもある切り傷。
もはや立ち上がるのは困難だ。
しかも、見えない赤い糸が地面に縫い止めてお前はもうここまでだという風にしてくる。
しかし、彼は振り払った。
もう、神のオルガンのからくり人形にはなりたくないと。
状況把握の為、辺りを見渡す。
そこは夜よりも暗い場所。
だが、見上げると白と赤紫で作られたステンドグラスからぼんやりと赤黒い光が差し込む。
その光の下には純白のドレスを身に纏った女が一人降臨していた。その様はまさに神が佇むようにさえ見える。
力の差は歴然。
ステータスでいえば、10倍も彼の者が上だ。
普通の人物ならば絶望していただろう。
しかし、その老人の瞳は曇ることなく透き通るように輝き始めていた。
一歩一歩確実に彼女へと進んで行く。
途中で神術で攻撃を受ける。
己の穢れを消していくように。
だが、彼は歩き続ける。
英雄潭のように、囚われのお姫様を勇者が救うというように。
彼もまた彼女を救う為に彼女へ歩いてゆく。
これは、たったそれだけの物語だ。




