「鋭過ぎた名探偵」
事件は突然起こったんだ。俺が資料室に入った時には、もう真理は死んでいたんだ。
警察の話しだと、死因は絞殺による窒息死。凶器は遺体の首の傷痕から、タオルだと断定された。第一発見者の俺が疑われているんだ。皆に……。俺はこの状況を打破する為に。
『この学園の名探偵、二年の天乃宮真人をよろしく』
と廊下の掲示板にポスターが貼ってあったのでそこに書いてあった電話番号に電話した。俺は真剣な声で頼んだ。
「あの、掲示板を見て、電話した者ですが、依頼を頼んでいいですかね?」
「いいでしょう。所で依頼料は払えるんでしょうね?」
依頼料の事なんて、このポスターには書いてないぞ。俺はその時、気付いてしまった。このポスターは名探偵詐欺だと。
「やっぱり、払えないんですね、依頼料のカレーパンは、まぁ、当然と言えば当然の判断ですね、では」
こいつ馬鹿だな、などと冷静に考えていた俺は思考を止めて、慌て、言った。
「ちょっと、待って下さい。カレーパンは払えます」
「いい判断です。で、現場は何処です?」
「二年C組、隣の資料室です」
「意外と近場ですね」
そう言って電話が切れた。その時、後ろから声をかけられた。
「貴方ですね、依頼人は、僕の勘がそう告げています。貴方が僕にカレーパンをくれるとね」
俺が依頼人だと、わかるなんて、流石、名探偵だと思って、振り返って俺は、後悔した。
そこには、学生服を着て、頭にはテンガロンハットを被り、サングラスを掛けた、身長が百七十センチ位の変な男がいた。
「僕が、この学園の名探偵、天乃宮真人です」
そう言って名探偵はウィンクしてきた。
なんで、こいつ先生に注意されないんだ。
これも名探偵の所以なんだろうか。
その後、俺も自己紹介をしてから、事件の内容を名探偵に話し始めた。
「先生に頼まれて、次の授業に使う、資料を取りに資料室に入ろうとしたんです、でもドアを開け様としても、ドアが開かなくて、職員室に鍵を取りに行ったんです。そして鍵を使って鍵を開けたら真理さんが資料室で死んでいたんです」
「なるほど、これは推理小説とかで有名な密室殺人って奴ですね」
確かに密室だ、資料室のドアは一つしかないし、窓はあるが、資料室は二階にある。まず無理だろう。
俺は名探偵に警察が話していた、情報も伝えた。
名探偵は不適に笑みを浮かべ。
「実に簡単な事件でした。犯人は最初からミスを侵しています。まず密室、これはそもそも、密室ではないんです」
変なポーズをしながら話し始めやがったよ。
俺はとりあえず、話しに乗る事にした。
「密室じゃないだと?確かに鍵は掛かっていたんだぞ」
「そもそも、その部屋に鍵をかける人はいないんですよ。貴方はドアに鍵が掛かっているフリをした。そして、職員室に鍵を借りに行った。ドアを開けたら死体があったと騒いだ」
「なんで、俺が、そんな事する必要があるんだ?」
「簡単です。貴方が犯人だからです。だいたい、貴方は最初から怪しかったんですよ。まず、殺された谷川さんを名前で呼んでいた。つまり、貴方と谷川さんは、かなり親しい仲だった。あぁ、それと警察は、僕のクラスにも来ましたよ、このスポーツタオルは誰のか知らないかってね。その時、僕はタオルに小さく、中野と書いてある事に気付きました。貴方の名前も確か中野でしたよね」
俺は動揺していた。見た目と動きが馬鹿キャラの名探偵の予想外のまともな推理に。
「俺が犯人だったらなんで、名探偵を呼ぶ必要があるんだ?」
名探偵はやれやれと言った感じのポーズを撮ってから喋り始めた。
「貴方が僕を呼んだのは、警察が戻って来るまで暇だったから。警察がタオルを調べれば、貴方がやったとわかるから、それまでの時間潰し。貴方の話しは購買で聞きましょう」
俺は名探偵に引きずられ、購買に連れて行かされた。そして、カレーパンを買わされた。
カレーパンを受け取った、名探偵は俺の前から立ち去ろうとしていた。
「俺が真理の名前を名字で呼んでいたら、どうしていたんだ?」
名探偵は変なポーズでこちらに振り返り言った。
「どちらにしても僕には貴方が犯人だとしか思えないんですよ」
「どうしてなんだ?」
俺は聞いていた。
「それは、登場人物が僕と貴方しかいないからですよ」
そう言い残し、名探偵は廊下を歩いて行った。俺は名探偵の姿が見えなくなるまで廊下を眺めていた。