第76話 壇上へ
サーシャの部屋。
「・・・絶対に嫌です!!」
サーシャの拒絶に、俺は笑うと。
「・・・わかった。なら却下だな。」
「・・・最近、やけに貴族の奥方から歓待されると思ったら、そう言うことだったんですね。」
「はははは!らしいな。」
「もう!笑い事じゃないですよ・・・」
サーシャは頬を膨らませている。
俺はその頬をそっと撫でた。
「大丈夫。サーシャを、そんな妙なことに巻き込ませるものか。」
「ユーリ様・・・」
・・・頬を染めたって止めないぞ。
そんな時、ドアが開き。
「サーシャ嬢。なんか大変なことになったと聞きましたが。」
「ああ。大変だよ全く。貴族達は、サーシャをお飾りの王にしたいんだとさ!」
「・・・それはまた、凄い事になりましたね。サーシャ嬢はいかに?」
ミーリャさんは苦笑いを浮かべ、サーシャの方を向き直る。
「わたし絶対嫌です!ちゃんとユーリ様が王様になってください!」
そこだけは強調するサーシャに、俺は真顔で返す。
「わかってるわかってる。・・・そこら辺はちゃんとするから。」
俺はサーシャをなだめる。
「・・・はい。」
一段落したところで、再びドアが開く。
「こんばんはー。おじゃまするでー」
マリナと。
「ロスラヴィから、ただいま戻りました!!」
この数週間姿を見ていなかった、イオナだ。
「おう、お疲れ様。・・・今丁度いい所だぞ。」
「もう!」
イオナも帰って来たし、ちょうどいい。
「ユーリさん、例の件、私やり遂げました!」
「流石はイオナ。」
俺はイオナの頭をなでてやる。
「ありがとう・・・・ございます・・・あの、ユーリさん、みんなが・・・」
―みんな?
「ユーリ様・・・」
「ユーリ殿・・・」
「ユーリ兄様・・・」
―・・・あれ?
俺に向いたみんなの視線が、心なしかちょっと痛いぞ?
「・・・さ、さあ、イオナも帰ってきた事だし、今後について、俺達の方針を決めたいんだが。」
色々な意味で長い沈黙の後、俺は口を開いた。
「方針・・・ユーリ様は・・・」
「・・・。」
「・・・そう言う事ですよね、ユーリさん。」
「・・・元はうちの問題でもあったのに。」
今度こそ、みんなの真剣なまなざしが俺を見る。
「・・・本当は、まだもう少し力を溜めたかったんだけどな。
いつの間にか。
俺は、覚悟を後回しにしていたのかもしれない。
だが。
サーシャに。
俺の大事なみんなに、妙なことがふりかかる位なら。
今こそ覚悟を決める時だ。
そう思っていた時。
イオナが口火を切る。
「ユーリさん、・・・お待ちですので、そろそろ、良いですか?」
「・・・もちろん。」
その後、俺達は場所をもう少し広い所に移し。
今後のことを深夜まで話し合った。
翌日。庁舎の庭。
貴族の代表、タンボフ公が宣言する。
「・・・以上を持って、我々貴族一同、ロスラヴィ領当主、サーシャ・ロスラヴィ殿を、第三の『王子様』の替え玉・・・ひいては、我らの次代の『王』に推薦いたします。」
「・・・。」
だが、サーシャは無言だ。
当然、その心は決まっている。
パチパチパチパチ!
割れんばかりの拍手が、俺の隣に居たサーシャに送られた。
その拍手を背景に、サーシャは壇上に上がる。
俺もサーシャの方を見据える。
拍手が鳴りやみ、サーシャが声を発して曰く。
「皆様の支持には感謝します。・・・ごめんなさい、わたしも、王になる気はありません。」
「なっ!」
「サ、サーシャ殿!?」
「王になる気が・・・無い!?」
当然のごとく、貴族達は動揺している。
その動揺の中。
サーシャは一礼すると、素早く壇上を後にした。
「ユーリ様。後はよろしくお願いします!」
俺はサーシャと手を交わすと。
まだざわめきが収まらない中、俺は入れ替わりに素早く壇上に登った。
貴族達のざわめきが、一層増す。
「ユーリ公?」
「一体これはどういう・・・!?」
「どうもこうもなく、聞いての通り。サーシャは3人目の偽王子・・・次の『王』への推薦を拒否した。・・・・申し訳ないが、サーシャを偽王子三世に担ぎ上げるのは止めてもらう。」
ざわめきが、大きくなる。
「3人目の『王子様』が・・・」
「我らは一体・・・」
「これから,如何しろと言うのだ!!」
「そうだそうだ!・・・まさか、ユーリ公が3人目の『王子様』を名乗るとでもいうのか!?」
「貴公は名が知れている。偽者を名乗るのは、流石に無理があるぞ。」
沈黙。
俺はそのざわめきを、手で制し。
貴族達に。
集まった者たちに語り始める。
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※次回投稿は11月5日(金)午後から夕方を予定しています。




