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第20話 ≪両サイド≫ロスラヴィの戦い 前編 

≪ユーリサイド≫


イオナが来た翌日。

昼食後、食堂で作戦会議が行われていた。


「偵察隊の報告によると、ユーリ殿の予測通り、王軍はこちらに向かっているようです。現在は(となり)のコスキ村に陣を張っています。」

「コスキか、明日にはロスラヴィだな。敵の数は?」

「およそ6千。」

「わーお。俺達の20倍だ。」

「すごい数ですね。」

サーシャがほえーといった顔をする。

「出発時は2万と号していたようですが、かなりの数が途中で脱落するか逃げ出したようです。」

別働隊(べつどうたい)は?」

「念の為探らせましたが、それが全軍で間違いありません。」

「減り方もすごいですね。何かあったんでしょうか?」

サーシャも不思議そうだ。

その減り方から、一つわかることがある。

―おそらく、敵の士気は相当低いな。―

それなら、それも利用しよう。

「俺と出会うまで、サーシャは無我夢中(むがむちゅう)で逃げてたんだよな。」

「はい。それはもう必死だったので。」

「なのに、盗賊に襲われたときは、きちんと街道上にいたと。森の中に逃げ込もうとはしなかったんだ。」

「本能だと思います。森の中は、とてもじゃないけど行けないかなあって。」

「そう。本能で森の中には行きたくない。屋敷から出たことが無かったにしても、地元であるはずのサーシャでさえそうなんだから、見知らぬ土地にやってきて、しかも士気も低い王軍からすれば、なおさら森には入りたくないはずだ。」

「たしかに。ユーリ様といっしょじゃなかったら、今でもちょっと怖いです。」

サーシャはお化けも苦手だしな。

「ミーリャさんは森の中へ。ただし、なるべく街道の敵と交戦はせず、森の中に入ってきた敵だけ追い返して。」

「かしこまりました。」

「ミーリャさんは隠れても存在感があるので、それを逆手に取る。つまり、『森の中には伏兵がいる』と言うことを、敵にあえて知らせてやるんだ。そうすれば、敵はただでさえ見知らぬ土地で、しかも伏兵がいるのがわかりきっている森の中へ突っ込んではこない。」

「なるほど!さすがユーリ様です!」

そうやって敵を街道に誘導する。狭い街道でなら、大軍でも一斉には攻撃できない。

何千人いようとも、大半の兵はただ見ているだけだ。


「イオナは、持ってた剣を使ってたの?」

「はい。ユーリさんは何で戦うんですか?」

「俺は・・・」

そりゃ魔法使いなんだから、魔法で・・・と言いかけた所に。

「ユーリ様はいつも杖で殴ってますね。」

「そうですね。私の時もそうでした。」

「杖で?剣じゃなくてですか?」

イオナは不思議そうな顔をした。

「いや、ちゃんと剣も使うよ?盗賊の首領にとどめ指したのは短剣だし、この間の熊だって買った剣で倒したし。」

あれ?いつの間にか、俺、あらぬ戦い方の印象がついてる?

「でもユーリ様っていったら、やっぱり杖で殴りかかるイメージなんですよね。なんででしょう?」

「確かに。私もサーシャ嬢に同意します。一番、使用頻度(しようひんど)が高いからじゃないでしょうか。」

「うぐぐぐ・・・」

否定できん。確かに、俺の戦い方は、強化魔法を自分と味方にかけてそのまま杖で殴り倒すパターンが多い。

「いいか三人とも。あれは本来魔法の杖であってだな、というかそもそもこの国の(レガ)(リア)で、とても貴重な杖なんだぞ?」

それだけは言っておかないと。

「ユーリ様の戦いを見ていると、時々あの杖がそんな大切な物だってこと忘れてきちゃいます。でもどんなユーリさまでも、わたしはかっこいいと思いますよ!」

あれ?サーシャはすこしだけやれやれって表情だぞ?

「よくよく考えれば、ユーリ殿はすごい物を打撃武器にされてるんですね。」

「だってしょうがないじゃないか。ちょうどいい持ちやすさで、殴りやすいんだから。」

俺は開き直ることにした。





【ゴリツィンサイド】



同時刻、隣のコスキ村。


コスキ村に着いた所で、敵の部隊と出くわした。

弓を少し打ち込んでやったら、戦意を喪失して逃げて行った。

口ほどにもない奴らめ。

1日かけて村内を捜索するが、やはり首領の女は見当たらなかった。

「案外その女も、ロスラヴィにいるかもしれませんな。」

「ありえる。全員まとめて生け捕りにして、王都で打ち首にしてやる。」

そうだ。ロスラヴィだ。そこで奴等さえ踏みつぶせば、ワシは誰にも後ろ指を指されぬ、この国の王だ。

近頃、奴らも兵を集め始めたらしいが、おおかた数十人が良い所だろう。我が軍の百分の一程度だ。軽くひねりつぶしてやる。

「よし、ロスラヴィに向けて出陣だ!」

「お、おー!」

なんだ、その覇気(はき)がない声は。




≪ユーリサイド≫



「領主代行様、王が攻めてくるのは本当だか?」

「はるばるこんな田舎まで、ご苦労なこった。」

「わしらは何をすればよろしいので?」

館の前には、王軍の接近を知った領民がたくさん詰めかけていた。


「明日、我々は森の中で敵を迎え撃ちます。武器を持たない皆さんは、ひとまず後方に居てください。」

俺の考えている決戦場は狭い。少数の味方で十分だし、そもそも大人数は入りきらない。

「領主代行様の命ならば、わしらも戦に参加しますだ。」

「んだんだ。年老いて武器は持てんでも、何かできることがあるかもしれんだ。」

「お気持ちはありがたくいただきます。もしかすると、少し戦いにも参加してもらうこともあるかもしれませんので、準備だけお願いします。」


加わっていた酒場の主人が音頭をとる。

「領主代行様の為、サーシャ様の為、このロスラヴィの為に!みんなでお支えするのだ!」

「エイ、エイ、オー!」

「エイ、エイ、オー!」

すごい盛り上がりだ。


決戦当日。


早朝、日が昇る前。

ミーリャさんが俺に部屋に顔を出した。

「ユーリ殿。私の隊は一足先に出発いたします。森の中から、ご武運をお祈りしております。」

「ミーリャさん達もね。姿は見えないけど、お互い頑張ろう。」

「ええ。それで・・・」

ミーリャさんは笑顔でぽんっとバスケットを手渡す。

「これは、パン?」

「今朝と昼の分のお食事です。早く寝るようにとのご命令でしたので、昨日焼いた残り物で申し訳ありませんが。サーシャ嬢とイオナさんにも、同じものをお渡しします。」

「うん、いただきます。」

今日は早朝からそれぞれ別行動のため、食事は各自でとるようになっている。

いつの間に用意したんだろう、全然気づかなかった。

「夕食は、帰って来てからお作りします。あ、玄関前の掃き掃除がまだでした、行く前にやっておかないと。それでは!」

ミーリャさんはいそいそと出て行った。

こんな時にそんな細かい所まで。

すごいな、このメイドさん。


朝焼けの中、俺が朝食のパンを食べていると、今度はサーシャが部屋に来た。

サーシャは後衛なので、俺よりも少し後の出発だ。

「ユーリ様、おはようございます。今お食事を食べてらしたんですね。」

「うん。食べたら行こうと思って。」

サーシャは隣に腰掛け、俺の手をぎゅっと握った。

「サーシャ?」

「ユーリ様、今日の戦い、わたしは絶対にユーリ様が勝つと思います。でも、それよりも・・・」

「サーシャ?」

俺をみつめる目は、いつものように()きとおり、輝いている。

「わたしは、ユーリ様が無事でいてくださることが、何よりも一番です。」

「ありがとな。サーシャも、無事で帰って来ような。」

「はいっ!でも、わたしは大丈夫です。だって、ユーリ様が守ってくださいますから!」

飛び切りの笑顔を振りまきながら、告げた。


(いくさ)支度(じたく)を終えて椅子に座っていたら、今度はイオナが部屋を訪れた。

「ユーリさん、おはようございます。今日は一緒に前衛(ぜんえい)ですね。」

「そうだな。」

「今までは、私独りが先頭に立って戦っていました。でも、今日はユーリさんが隣にいてくれるので、すごく心強いです。」

「そう思ってくれて何よりだよ。」

「私、ロスラヴィに来た時は、正直希望を持てずにいました。逃げ続けても、もう駄目なんだって。」

イオナは明るい顔で俺に向き直る。

「でも、ユーリさん達と出会って、ユーリさんが励ましてくれたおかげで、再び立ち上がる勇気が湧いてきました。(あきら)めちゃだめだ、私はまだ戦えるんだって。今はそう思えています。」

「そう言ってもらえると、俺も心強いよ。」

俺は立ち上がった。

「よし。今日はみんなで頑張って、王を追い返してやろうな。」

「はいっ!」


俺達は庭に出る。

先に出発したミーリャ隊100人を除く200人が整列している。

その顔は晴れやかだ。

何か演説しようとも思ったが、言葉が出てこない。

ミーリャさん達も行った後だし、それはまた次の機会でいいか。

俺は極めて単純な言葉だけを発した。

「皆でロスラヴィを(まも)ろう。いざ、森に向けて、出発!」




【ゴリツィンサイド】



決戦当日の朝。

我が軍はコスキを出発し、ロスラヴィとの境にある森に差し掛かった。

「王様、街道からそれて森の中に放った斥候(せっこう)が戻ってきません。おそらく森の中に伏兵(ふくへい)が潜んでいると思われます。」

スコーピンが不愉快なことを報告する。

「ふん。せいぜい数十の兵に何ができる。森の中まで兵を展開させろ。」

「それが・・・」


「たとえ命令でも、それだけはできませぬ!」

「森なんかに入ったら、生きて出られないだ!」

・・・

「兵が森の中に入りたがりません!」

「何!?ワシの命令が聞けぬと言うのか!」


スコーピンが言う。

「森の中は迷いやすく、おまけにモンスターも出没します。士気が下がった我が軍が街道を外れて森の中に入るのは無理です。」

「ええい、この役立たず共が!」

「明らかに、敵は我が軍を狭い街道に誘い込もうとしています。ここは一度軍を退き、北のスマレン、南東のドブロフカとコスキの三方から同時に攻撃をかけるべきです。」

「我が軍は圧倒的な数だ、何故ここまできて退かねばならん。大体、貴様の言う通りなら、軍が退いてまで持たぬではないのか。」

「それは・・・」

「このままロスラヴィに突入する。全軍、ロスラヴィに向けて進め!」




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