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第18話 【ゴリツィン王サイド】王軍西へ

「王様!一大事です!」

「何事だ。」

「南部のトゥリアで、市民が反乱を起こしました!」

「なんだと!?」

反乱を報告した召使いはさらに続ける。

「トゥリアだけではありません。カルギア、ウズロバヤ、リアザンでも反乱が起きており、現在各都市の守備隊と交戦中とのことです!」

「!!・・・あれだけの見せしめをしてやったと言うのに、まだワシに刃向おうと言うのか。なかなかいい度胸(どきょう)をしているではないか。」

「タマンスキー!1万の兵を預ける。奴らを皆殺しにしろ!」

「ははっ!」





2週間後、王宮。



・・・タマンスキーの奴め、むざむざ負けおってからに。

「申し訳ありません!」

「たかが愚民(ぐみん)相手に何をやっているか!」

「それが、奴等、予想以上の規模と勢いで・・・」

「もういい。ワシ自ら軍を率いて出向いてやる!」

タマンスキーは別の街へと向かわせ、ワシは2万の軍を引き連れ、反乱軍の中心、トゥリアに向け出陣した。


トゥリアに到着するやいなや、反乱軍が待ち構えていた。

「反乱軍の首領は誰だ。」

家来が指し示す方を見る。

「あの女の様にございます。」

はるか遠くに、防具をつけた若い女の姿が見えた。

なるほど、奴がこの軍の元締めか。

「いいだろう。ワシの偉大さ、王の恐ろしさ、見せつけてくれようぞ!」



数時間後。

「ふん。口ほどにもない。」

ワシの大勝利だ。

「反乱軍は、ほぼ逃げ散った模様です。」

殲滅(せんめつ)は出来なかったか。

「それと、申し訳ありません、首領の女は取り逃がしました。」

家来が報告する。

「よし、反逆者に加担したトゥリアを破壊しろ。」

「お待ちください王様。」

ワシの命令に異議を唱える者がいるだと?

「貴様は・・・参謀のスコーピンではないか。今回はタマンスキーの代わりに連れてきたが、なぜ貴様が止める。」

「トゥリアは5万の民が暮らす大都市。これだけの街を破壊すると、流石に兵の士気に多大な影響が出ます。」

「奴らはワシに刃向ったんだぞ!その報いを受けるべきだ!!」

「ですから、せめて首謀者を処断するにとどめるべきと・・・」

「構わん!やれ!」

「・・・どうなっても知りませんよ。」

こうしてワシに刃向ったトゥリアの街は、徹底的に破壊された。

未来(みらい)永劫(えいごう)地図から消え去るであろう。

ちなみに、破壊のため突入したトゥリア市内は無人だったと言う。

―住民共も皆殺しにしてやろうと思っていたのに、逃げ足の速い奴らめ。


「よし、逃げた反乱軍どもを地の果てまで追え!1人残らず血祭りに上げろ!」

ワシは軍を率いて、西へ逃げた反乱軍を追う。途中カルギアでも反乱軍と交戦し、輝かしい勝利を挙げた。

まさに連戦連勝だ。

そのはずなのだが。


異変に気付いたのは、カルギアを出発してから1週間ほど経ち、更に西のユーユと言う街に到達した頃だった。

「おかしい、なぜ兵の数がこんなに減っているのだ!」

王都を出た時、ワシの軍は2万人いたはずだ。

それが、愚民(ぐみん)の雑魚相手に連戦連勝しているにもかかわらず、もう8000人余りしかいないではないか!?

スコーピンの答えはワシを驚かせた。

「それが・・・最近わが軍からは脱走兵が相次いでいます。このままでは、軍として長くは持ちません。」


―なんだと!?

ワシから逃げ出そうとする奴らがいるだと!?

「先日の一件で兵の士気も下がる一方で・・・」

「トゥリアを破壊したワシのせいだとでも言うのか!?」

「いえ・・・」

ならばどうするか。それは簡単なことでは無いか。

「首領の女がこの先のどこかに潜伏しているはずだ。そいつを捕えて公開処刑してやる!かくまった奴等にも容赦(ようしゃ)はせん。」

そいつさえ捕まえれば、反乱軍は完全に瓦解(がかい)するだろう。

どの道、もう反乱軍には戦う力はないだろう。

「よし、更に西へ進め!その女を地の果てまで追うのだ!」


ワシは、更に西へ、西へと向かう。

王都を出発してから早2週間がたった。

今日はジェレボという村で一泊している。

パルスカ王国との国境までも、あと50キロほど。2日あればたどり着けるだろう。

思えばだいぶ西へ来たものだ。

兵の数は、もう6千にまで減っている。

「まだ女は捕まらんのか?」

偵察隊からは(こころよ)い返事はない。

「ただ今捜索中でありますが、更に西へ向かったとしか・・・」

「万が一パルスカに逃げ込まれたら、もう手出しができなくなるのだぞ、わかっておるのか!」

スコーピンが地図をワシに見せる。

「王様。この先はパルスカとの国境まで、ほぼ森が続くだけです。集落と言った集落は、せいぜいコスキか、長く独立状態のロスラヴィと言う名の寒村くらいしかありません。本格的に、奴がパルスカに逃亡してしまう可能性も考えなければならない時期です。」

首領の女がその何とかいう名前の村に居なければ、後はパルスカに逃げ込まれて無罪放免か。

そんなことはさせんぞ、パルスカに逃亡する前に絶対に見つけ出してやる。

―うん?待てよ?―

「おい、スコーピン。今何と言った。」

「ですから、パルスカに逃亡してしまう可能性を考えなければ・・・」

「・・・いや、その前だ。」

「前ですか?・・・そのパルスカまでに残る集落は、後はコスキかロスラヴィしか・・・」

ワシははっとして地図を見る。

最近、反乱軍にかまけていたとはいえ。

なぜこんな大事なことを忘れていたのだろう!


いつの間にか。


いつの間にかワシは、あの忌々しいユーリの奴が牛耳る、ロスラヴィの。

そのすぐ近くまでたどり着いていたのだ。

「ひとまずコスキ村を捜索して、それが駄目なら・・・」

スコーピンがのんきなことを言っている。

そういえば、スコーピンは宮廷が嫌いな奇特な奴で、王宮にはあまりおらぬのだったな。

「他の村などどうでも良い。ロスラヴィだ。」

「は?」

「全軍、ロスラヴィに向かえ!」

「十年近くワシに刃向い続けたロスラヴィ領を、完膚(かんぷ)なきまでに破壊するのだ!」

(レガ)(リア)を取り返し、ユーリの奴とその仲間を王都で(さら)し首にする。

これで、ワシは誰からも後ろ指を指されることのない、完璧(かんぺき)なこの国の王だ。


お読みいただき、ありがとうございます。


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