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三日月の夜に  作者: うみ
4/5

第4夜

私の寿命…。

人間は皆いつか死ぬ。

私も例外ではない。

しかし、その『いつか』がいつなのかは誰も知らない。

100歳まで生きる人もいれば、生まれてすぐ死ぬ人もいる。

人間はいつも死と隣り合わせで生きているのだ。

自覚がないだけで。

いざ死にそうになってから「まさか自分がここで死ぬなんて」と思う。

私だってそうだ。

今日という時間をただ消費して、休みの日をどう過ごそうか考えている。

その休日がやってくるかもわからないのに。

それなのに、

「急にもうすぐ寿命だと言われても。」

目の前の彼に言う。

「そうだよね。いきなりだし頭が追いつかないでしょ。」

その通り。

こくん、と頷く。

「でも、僕が出来る限り守る。君に助けてもらった恩を返す。」

彼は私を真っ直ぐ見て言う。

「…わかった。お願いします。」

正直、半信半疑ではあった。

全てが信じ難い話だったし、怪しさもあった。

しかし、幼い頃の記憶と彼は信じても良いかもしれないと感じたのだ。


それから数日間、事故に会いかけることが続いた。

上から物が落ちて来たり、階段で転びそうになったり。

その度に彼は現れ、助けてくれた。


ある日、私は彼に聞いてみた。

「何でいつもタイミング良く現れるの?」

すると、彼は迷ってから

「ずっとそばにいるだけ。」

と答えた。

つまり、ずっとストーキングされていたわけか。

私が引いていると感じたのか

「いつ何があるかわからないから見てないと。」

…まぁいい。

もう1つ気になっていたことを聞いてみる。

「私の本当の寿命っていつなの?」

ずっと頭の片隅にあったが、少し怖くて聞けていなかった。

「それは…。」

彼も言いにくそうにする。

「教えて?」

彼はもう誤魔化せないと感じたのかようやく口を開いた。

「…あと1年。」


彼が私から吸い取った寿命が1年分だったらしい。

彼がいなければ死んでいたであろう、トラックの事故が今の寿命と考えるともう1年もない事になる。

「………。」

考えていたよりも早かったので黙ってしまった。

そんな私を心配そうに見る彼。

「本当の寿命が来たらどうなるの?」

「…わからない。僕が守りきれる範囲であればいいけど……。」

彼もその問には答えにくいようだ。

でも、つまり、彼が守りきれない範囲であれば死ぬかもしれない。

例えば、病気とか。

例えば、彼ではどうにもできない事故とか。

「僕にできることは何でもする。君を守りきってみせる。」

そういう彼の目は、本当に命を懸けてでも守るという眼差しだった。

………しかし、

「もう、いいよ。」

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